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2022.12.26

【助産師に聞く】妊娠中にお腹をさすってはいけない理由!お腹の張り・胎児への影響は?

妊娠中に「大きくなったお腹をさすってはいけない」と聞いたり、指導を受けたことはありませんか?お腹が膨らむにつれ、赤ちゃんを想って、無意識にお腹に触れることが増えるかもしれません。しかしお腹をさする時には、少し注意が必要な場合もあります。今回は、「妊娠中お腹をさすってはいけない」という指導内容の真意を解説します。お腹をさするうえでの注意点も、助産師がお伝えしていきます。

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妊娠中「お腹をさすってはいけない」のは本当?

妊娠中はお腹をさすってはいけない

 

妊娠中にお腹をさすってはいけないと言われる理由は、子宮の収縮につながる可能性があるからです。子宮が収縮すると、出血、早産や流産などトラブルの原因になることがあります。

 

「お腹をさする」というと、どのようなイメージを持ちますか?優しく触れる程度でしょうか、それとも力を少し入れてこするような仕草でしょうか。「さする」といってもそれぞれの捉え方は違います。

お腹をさする行為によって、母体や胎児にどのような影響があるのか見ていきましょう。

 

「お腹をさする」のが優しく触れる程度ならOK

お腹をさする行為を、優しく触れる程度にイメージする妊婦さんが多いでしょう。10秒ほど優しくさする、触れる場合は特に問題ありません。赤ちゃんとのスキンシップにもなります。優しく話しかけ、コミュニケーションをとることは大切です。

 

妊娠5ヶ月くらいから赤ちゃんの聴覚が発達し、外の音が聞こえるようになります。ママの声、心臓の音、血流の音を聞いて安心し、すくすくと育っていきま。積極的に赤ちゃんに話しかけてあげましょう。

 

妊娠中やってはいけない!「お腹のさすり方」

よくやってしまいがちですが、以下のような力加減でお腹をさするのは良くありません。

×お腹がへこむ程度

×強く押す

×皮膚が上下に動く

 

もし妊娠中にお腹を触っていて、急にお腹が張る、痛みを感じる、違和感がある場合は触れるのをやめ、横になって休みましょう。このような症状は、赤ちゃんからの「これ以上触らないで!」のサインです。

妊娠週数が進み、お腹が大きくなるにつれて、生理的な子宮収縮の頻度は増えてきます。過度に触る行為は子宮を刺激し、子宮収縮の回数や強さに影響を与えるので注意が必要です。

 

切迫流産・切迫早産に注意!強くお腹をさすらないで

「切迫流産」「切迫早産」とは、流産や早産になりかけている状態を指します。子宮頸管が短くて切迫早産の診断を受けた妊婦さんは特に、強い力でお腹を触らないようにしましょう。子宮収縮が起きやすい状態で、それが妊娠継続に大きな影響をもたらす可能性があるため、注意が必要です。

また子宮口付近に胎盤がある「前置胎盤」の人も、お腹が張ると出血しやすくなります。強くお腹をさすらないように気を付けましょう。

 

 

妊娠中「お腹が張りやすい」人はお腹をさすってはいけない?

まずお腹が張るとは、どのような状態でしょうか。またお腹が張りやすい人には、どのような特徴があるのでしょうか。

 

「お腹が張る」とはどういうこと?

普段のお腹を思い浮かべてみましょう。お腹が張っていない時は、痛みがなくて柔らかくふわふわとしています。しかしお腹が張っていると、触ると硬く感じます。

「お腹にドッヂボールが入った感じ」「お腹がカチカチになる」「キューッと収縮している感じ」「生理痛のような鈍痛」など、感じ方は人それぞれ。時に息苦しさや、痛みを覚えることがあります。いつもとなんとなく違う感じがあれば、もしかしたらお腹が張っているかもしれません。

 

お腹が張りやすい人の特徴

お腹が張りやすい人の特徴は、以下のとおりです。

 

《お腹が張りやすい妊婦さんの特徴》

・身体が疲れている

・冷え性

・ストレスをためやすい

・仕事が忙しくて休む暇がない

・兄弟児がいてお世話が大変である

・便秘気味

 

ストレスや疲れは、お腹が張る原因となります。仕事があるとゆっくり休めないかもしれませんが、リラックスできる時間を見つけ、好きな事でリフレッシュするように心がけましょう。

ストレスはその原因をできる限り除去したり、可能な範囲でストレス源から遠ざかるといいでしょう。

 

また2人目以降の妊婦さんは、兄弟に抱っこをせがまれることもあるでしょう。お腹が張りやすい時は、座った姿勢で抱っこする、おんぶ紐を使う、添い寝で抱っこするなど、腹圧がかからないように気を付けてスキンシップをしましょう。

兄弟のお世話が忙しければ、ヘルパーやファミリーサポートなど、自治体の支援を活用してみましょう。すべて1人でやろうとせずに、色々な人を頼ることも大切です。

 

また、生活習慣にも注意が必要です。妊娠中は黄体ホルモンの影響で、腸の動きが低下しやすく、便秘になりがち。便が溜まっているとお腹が張りやすいため、水分や食物繊維を多めに摂取し、規則正しい生活にしましょう。必要であれば産科医より、緩下剤(ゆるやかに排便を促す下剤)を処方してもらうこともおすすめです。

 

関連ページ

妊娠中のお腹の張りとは?【助産師】妊娠期ごとの原因と確認方法

 

お腹が張った時にさするのはNG!正しい対処

妊娠中お腹が張る原因には、様々なものがあります。

お腹が張ったらまずはソファーにゆっくり腰かけるか、横になってリラックスしましょう。お腹に温かい湯たんぽを乗せたり、カイロを貼るなどして、お腹周りを温めるのもおすすめです。

また深呼吸をすると、副交感神経を刺激してリラックス効果が高まります。30分ほど休んでお腹の張りがおさまり、胎動がしっかりあれば、生理的な張りなので特に心配いりません。その際お腹を触れることはあっても、強くさすらないようにしましょう。

 

お腹の張りで受診する目安

お腹の張り具合では、受診しないといけない場合もあります。

 

・30分以上休んでもお腹の張りがおさまらない

・胎動がないまたは弱い

・少量または大量の出血がある

・腹痛がある

・破水した

 

このような場合は、早急にかかりつけの産科医に連絡して受診をしましょう。切迫早産のほか、常位胎盤早期剥離という緊急性の高い状況が起こる可能性もあります。すぐ受診して検査を行う必要があるでしょう。

 

お腹が張った時

 

《助産師が回答》ママのよくある疑問

Q. 無意識でついお腹をさすってしまうけど、どうしたらいい?

ついお腹をさすってしまう場面でよくあるのは、これらが多いようです。
 

・赤ちゃんに話しかけるとき

・赤ちゃんがあまり動かず胎動が感じられないとき

・赤ちゃんがよく動いて胎動で痛みがあるとき

・お腹が張っているとき

 

赤ちゃんに話しかけながら無意識に触っていると、なかなか止めるのが難しいでしょう。そのときは、以下の点に注意しましょう。
 

・お腹をさするときは、優しくさする

・お腹を長時間さすらない(1回に10秒程度)

・お腹の皮膚が動くほどさすらない

 

Q. お腹への圧迫を防ぐため「さする」以外で気を付けることは?

お腹の圧迫を防ぐために、以下の4つに気をつけましょう。
 

1. 衣服で締めつけない

過度の衣服の締めつけはお腹の張りの原因になることもあります。そのため、下着や衣類で締めつけられると感じた場合は、サイズを変更するなど、締めつけのない心地よく感じるものへ変更しましょう。

妊娠中期以降になると、バスト・お腹ともにサイズアップするため、特に下着はきついと感じることがあります。早めにサイズを見直し、ゆったりとしたものを着用しましょう。

 

2. お腹を圧迫する姿勢を避ける

お腹がどんどん大きくなると、これまでと同じような姿勢では、体へ負担がかかり、腰痛などマイナートラブルにつながる可能性があります。

横向きやシムスの姿勢で寝ることも増えますが、お腹を圧迫しないようにクッションなどで調整してくださいね。

 

3. 重い荷物を持たない、運ばない

重い荷物は腹圧がかかる原因になるので、避けましょう。また荷物を持ち上げたり、運んだりする姿勢はお腹を圧迫しやすいので、注意してください。

 

4. 性行為

性行為は、お腹を圧迫しやすいです。医師から何も言われていなければ、制限する必要はありませんが、お腹を圧迫するような姿勢は避けましょう。

また精子が子宮内に入ると、子宮が収縮する原因になることがあります。妊娠中の性行為は必ずコンドームを使用してください。

 

Q. 夫がよくお腹を撫でてくれるのもやめるべき?

お腹を撫でてくれると、夫婦とお腹の赤ちゃんのコミュニケーションになりますね。お腹を強く圧迫したり、長時間さすったりしなければ、無理にやめる必要はありません。気になる時は、短時間にしてもらうといいでしょう。
 
 

「お腹をさする」ほか妊娠中に気を付けること

その他にも、妊娠中に気を付けることはたくさんあります。食事面と生活面でそれぞれ紹介します。

 

妊娠中に気を付ける【食事】

妊娠中は、食べ物に気を配る必要があります。代表的なものはカフェインとアルコールです。

 

カフェイン

コーヒー、紅茶、緑茶などに含まれるカフェインは、ママが摂取すると、胎盤を通過して胎児にも届きます。カフェインが胎児に与える影響について、詳しくはまだよくわかっていません。しかし妊婦中の大量のカフェイン摂取は、不眠や頭痛の他、貧血を促したり、低出生体重児の原因となる可能性が指摘されています。

コーヒーは1日あたり1~2杯であれば問題ありませんが、大量のカフェイン摂取は控えましょう。

 

アルコール

また妊婦さんのアルコール摂取は、胎児アルコール症候群という精神発達遅滞や、先天異常の原因の一つとなります。ママが飲酒すると、アルコールは胃腸から吸収されて血液に入り、胎児まで到達します。妊娠中に飲んでも安全なアルコール量は、明らかになってはいません。そのため米国小児科学会は、妊娠中または妊娠希望の女性に対し、アルコールを断つように勧告しています。

 

その他にも農薬やアレルゲン物質、一部の魚など注意が必要なものもあります。

 

関連ページ

【妊娠中のカフェイン制限】飲み物別の摂取量を助産師が正しく解説!

【妊婦さんが注意したい食べ物まとめ】妊娠中に食べていいもの&良くないもの!

 

妊娠中に気を付ける【生活】

タバコ

妊娠中は喫煙にも気をつけましょう。妊婦さんは禁煙を心がけてください。タバコのニコチンは血管を収縮させ、早産や低出生体重児の可能性を高めます。副流煙にも同等の影響があるため、パートナーにも禁煙か分煙に協力してもらいましょう。

 

セックス

また妊娠中のセックスは、妊娠中期以降であれば問題ありません。ただし子宮収縮がなく、切迫流産・早産に兆候がないことを確認してからにしましょう。精液には子宮収縮を促す成分が入っています。感染予防の観点からも、必ずコンドームを使用しましょう。もし切迫流早産の兆候がある人は、挿入を伴うセックスはやめておきましょう。

 

関連ページ

妊娠中のセックスはどこまでOK?【医師が解説】おすすめ体位とは

 

ダイエット

さらに最近では、妊婦さんの痩せ志向が高まっています。妊娠中の過度なダイエットは、胎児の発育に影響し、赤ちゃんが大人になった時に生活習慣病にかかりやすくなることもわかっています。妊娠中は適正な体重増加を守り、ダイエットはやめましょう。

 

妊娠中の適正な体重増加量は、妊娠前のBMIから知ることができます。

BMI=体重(㎏)を身長(m)の2乗で割った数 

 

<適正な体重増加量> 

BMI 18.5未満

12~15㎏

BMI 18.5〜25.0未満

10~13㎏

 BMI 25.0~30.0未満

7~10㎏

BMI 30.0~

5㎏までを上限に個別対応

 

 

《まとめ》

 

妊娠中、お腹を優しく触れること自体は問題ありません。むしろ赤ちゃんとのスキンシップとしては有効です。しかしお腹を強く押す、上下に皮膚が揺れるくらいさする、力を加えると、子宮収縮を促し、切迫流産や早産の可能性を高めます。もしお腹が張る、痛みを感じるようなことがあれば、まずはゆっくり休みましょう。それでもお腹の張りがおさまらなければ、すぐにかかりつけの産科医に相談してください。

 

※写真提供:PIXTA

 

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ママのお悩みの声

妊婦がお腹を撫でるのは不妊の方にとって不快?

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1955年に日本助産師会東京都支部として、助産師相互の協力と助産専門職の水準の維持向上並びに利用者に対する質の保証を図り、母子保健事業を通じ、女性と子ども及び家族の健康・福祉の改善・向上に貢献することを目的として活動を開始。

2010年一般社団法人格を取得。

2014年公益法人となり、地域に根差した公共性の高い事業に取り組んでいる。

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