妊娠初期は流産しやすい?流産の原因はママの行動?

流産とは妊娠22週目よりも前に、妊娠が継続できず赤ちゃんが亡くなってしまうことをいいます。
日本産婦人科学会の調査によると、妊娠した女性の約4割が流産を経験しているという報告があります。意外に多くの女性が、流産を経験していることを示しています。さらに日本産婦人科学会の報告によると、流産全体の80%が妊娠初期である妊娠12週までに起きているそうです。
流産を経験すると多くの女性は、自分の行動が原因で赤ちゃんが亡くなったのではないかと思ってしまうでしょう。しかし実は妊娠12週までの流産の原因は、胎児側の原因が主で、染色体異常がほとんどであるとわかっています。つまり、妊婦さんの行動に原因があるわけではないということです。
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【流産しやすい妊娠初期】生活で避けるべき行動
妊娠初期の流産の原因は妊婦さん側にないとしても、リスク行動を知り回避できることはやっておきたいですよね。
妊娠初期に避ける行動1. カフェインを摂取する
カフェインの大量摂取は、流産のリスクを高めると言われています。WHOは2001年に「カフェインの胎児への影響についてはまだ確定していないが、妊婦はコーヒーの摂取量を一日3~4杯までにすべき」と示しています。
しかし、カフェインを摂取して良いかどうかについては、世界各国で指針が異なるもの。個人差が大きいとも言われているため、カフェインの摂取はなるべく控えた方がよいでしょう。
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妊娠初期に避ける行動2. たばこを吸う
たばこに含まれるニコチンは、血流を悪くすると言われています。血流の停滞により、胎児に十分な酸素が供給できず発育に問題が生じたり、子宮収縮が起こりやすくなります。こうして流産の原因となる可能性が高まります。
喫煙によるリスクは妊娠初期だけではなく、全期に渡って、安全な妊娠と健やかな胎児の成長を妨げてしまう因子になります。もし妊娠前から喫煙をしていたのであれば、すぐにでも禁煙をお願いしたいところ。もしやめられないようでしたら、医師に相談して治療を開始する場合もあります。
そして一番避けたいのは、内緒でたばこを吸い続けること。喫煙による母子の合併症リスクを予測したフォローができないため、異常時の介入に遅れが生じるためです。もし禁煙が難しく、医師に相談しにくいと感じた場合は、私たち助産師に声をかけてくださいね。一緒にいろいろと考えサポートしたいと思います。
また妊婦さん自身がたばこを吸わなくても、副流煙は主流煙より、たばこによる悪影響を受けると言われています。パートナーがたばこを吸う場合は、禁煙してもらうか、分煙してもらうよう話し合いをしてくださいね。
産後も赤ちゃんの突然死症候群や、乳幼児のたばこの誤飲事故など、リスクは続きます。パパ自身も、健康で子どもの成長を楽しみたいでしょう。ぜひこの機会に話し合って禁煙、必要あれば治療をお勧めします。
妊娠初期に避ける行動3. アルコールを摂取する
妊娠中にママがアルコールを摂取した場合、赤ちゃんも胎盤を通じて、アルコールを摂取することになります。このように言うと、妊娠が判明する前にアルコールを飲んでしまったと、心配になる人もいます。妊娠判明した時点で、禁酒を心がけましょう。
アルコールの摂取は、カフェイン摂取と同様、流産のリスクを急激に高めると言われています。どうしても飲みたくなる場合には、無糖の炭酸水やノンアルコール飲料にするなど、工夫しましょう。
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妊娠初期に避ける行動4. 過度にストレスを溜め込む
仕事をしている妊婦さんが増えています。仕事との両立で疲労やストレスを溜め込むことは、血圧の上昇へつながったり、ホルモンバランスを乱すことがあります。
日常生活で全てのストレスを取り除くことは、難しいかもしれません。ですがゆったりとした気持ちで、できる限りストレスを回避しましょう。
妊娠初期は、ママの身体が妊娠に適応していきます。外見からの変化はほぼありませんが、体調が変化しやすい時期。体の不調に関心を向けて、無理をしすぎないことが大切です。負荷がかかっているときは、立ち止まって休むことを心がけ、仕事を調整するなど工夫しましょう。また自分に合った、ストレス発散方法を見つけることもよいですね。
【流産しやすい妊娠初期】気をつけるポイント
ここからは流産の予防だけではなく、健やかな経過のために、妊娠初期の生活で気をつけることを解説していきます。
薬(市販薬)の服用はかかりつけ医に確認
妊娠初期のなかでも、特に妊娠4週目~7週目は、胎児の体の重要な部分がつくられる器官形成期。奇形を起こすかどうかという意味では、最も過敏性が高い時期と言われています。
それ以降の時期でも、薬による影響がないとは言い切れません。治療が必要な妊婦さんは医師と相談して、服薬する内容や容量を決めましょう。
もし薬の服用が必要な場合や、妊娠前から継続的に服用している薬がある場合には、かかりつけの産科医に確認してから服用しましょう。
薬だけではなく、サプリメントにも気を付けなければなりません。サプリメントだからと安易に自己判断はせず、医師や薬剤師にご相談ください。
服薬については、以下のサイトも参考にしてください。
※国立成育医療研究センター「妊娠中・授乳中のお薬Q&A」

葉酸を摂取する
「葉酸」は野菜や果物などに含まれる、ビタミンB群の栄養素です。妊娠前から初期にかけての葉酸の摂取は、二分脊椎症などの神経管閉鎖障害を減らすことができるとされています。また妊娠中に起こりやすい、貧血の予防にも効果があります。
妊娠初期はまだ、妊娠に気づきにくい時期でもあります。妊娠を考えている人であれば、妊娠前から日常的に葉酸の摂取を心がけることが大切です。
葉酸を多く含む食べ物は、焼海苔、納豆、ブロッコリー、ほうれん草、小松菜、枝豆、バナナ、豆乳などです。サプリメントで葉酸を補充することも可能ですが、できる限り食材から摂取できるとよいですね。
【流産しやすい妊娠初期~】控えたい食べ物&飲み物
妊娠初期に控えることが望ましい、食べ物・飲み物についてお話していきます。摂取を控えるべきものの他にも、摂取する量を制限すべきものがあります。それぞれ解説していきますね。
妊娠初期はつわりの症状が出る人もいます。ですが多少食べられなくても、胎児の成長で問題は起きません。心配せずに、食べられるものを少量ずつ召し上がってくださいね。
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妊娠初期から食べない方がいい物
ここではまず、妊娠中は摂取しないほうがよいものを説明していきます。
妊娠中に特定の感染症にかかることで、妊婦さん自身の問題はそんなに重大ではなくても、胎盤を介して感染した胎児が、先天的な問題を抱えてしまう場合があります。TORCH症候群という言葉をご存知でしょうか。
T:トキソプラズマ
O:Other(B型肝炎 パルボウィルス EBウィルス 水痘帯状疱疹ウィルス 梅毒など)
R:風疹
C:サイトメガロウィルス
H:単純ヘルペスウイルス
特に妊娠初期の妊婦さんが初感染することで、重篤な先天的疾患にかかってしまったり、胎内で死亡してしまうリスクがあがります。
特に風疹などは妊娠前に、十分な抗体があるか調べられ、予防接種で確実に予防できます。ぜひ夫婦で確認すると良いでしょう。中には、妊娠初期の血液検査で調べるものもあります。
■生肉
生肉で問題になるのは、付着している可能性がある寄生虫のトキソプラズマです。日本では、豚からの感染例が多く挙げられています。
妊娠中の女性がトキソプラズマに初感染すると、赤ちゃんの精神発達の遅れや視覚障害など、先天性障害を生じさせる可能性があります。トキソプラズマは加熱によって死滅します。肉を食べる時には、しっかりと焼くようにすれば安心です。
■生卵
生卵で問題になるのは、卵の殻に付着している可能性があるサルモネラ菌です。サルモネラ菌は激しい下痢を引き起こし、それが引き金となり子宮収縮が起こりやすくなります。子宮収縮が頻繁に起こることで、流産のリスクが上がります。卵はしっかりと加熱調理した後に、食べるようにしましょう。
■生の魚介類
お刺身やお寿司などの生魚は、新鮮なものであれば、食べてもかまいません。しかし初めて行くお店のものや、鮮度がわからないものは控えたほうが安心です。
妊娠中は免疫力が低下しています。普段なら平気なものでも、食中毒で嘔吐や下痢を引き起こす可能性がありますので、気をつけましょう。
■ナチュラルチーズ
加熱殺菌していないナチュラルチーズには、リステリアという菌が含まれています。妊婦さんは通常よりも、20倍もリステリアに感染する可能性があると言われています。妊婦さんがリステリア菌に感染すると、胎児も感染する可能性があり、新生児の髄膜炎や敗血症の原因になることがあります。
チーズを食べたい時は、加熱殺菌されているかどうか確認してください。

妊娠初期に「摂りすぎ」に注意する物
ここからは量に気をつけて摂りたい、食べ物・飲み物についてお話していきます。
■昆布
昆布にはヨウ素が含まれています。このヨウ素を過剰に摂り過ぎると、胎児の甲状腺機能低下を引き起こす可能性があります。昆布の摂り過ぎには注意しましょう。
■レバー・うなぎ
レバーには鉄分や葉酸などの栄養素が含まれていて、貧血予防にとても優れた食材です。しかしレバーには、ビタミンAも豊富。妊婦さんが過剰に摂取すると、胎児に奇形を起こす可能性があるとされています。
うなぎも同様に、ビタミンAが豊富な食材です。うなぎも過剰摂取にならないように、気をつけて食べるようにしましょう。
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【流産しやすい妊娠初期】「自宅安静」を指示されたら
妊娠初期においても、出血の症状などにより、医師から自宅安静を指示されることがあります。その場合、自宅での洗濯や掃除は最低限のみ行ない、食事の準備は家族に頼むかレトルトなどを活用するとよいでしょう。
仕事を休んだほうがよい場合には、医師から診断書を書いてもらい、職場へ提出するようにしてください。
もしも自宅の寝室がトイレと違う階にあれば、階段の昇降をしないよう、トイレから近い場所に居室を変更するのがおすすめです。自宅安静を指示された時はできる限り安静に、赤ちゃんとママの健康を最優先にしてくださいね。
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《まとめ》
妊娠初期の流産の多くは、妊婦さんの生活に原因があるわけではないです。胎児側に原因がある場合、妊婦さんの努力では避けられないことが理解いただけたかと思います。ただし流産以外にも合併症のリスクはあるため、それらを回避するための工夫は、知っておくと良いでしょう。つわりもある中で、細やかに気をつけながら生活することは大変かもしれません。ストレスになりすぎない程度に心にとめながら、妊娠中の生活を楽しんでくださいね。
※写真提供:PIXTA
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1955年に日本助産師会東京都支部として、助産師相互の協力と助産専門職の水準の維持向上並びに利用者に対する質の保証を図り、母子保健事業を通じ、女性と子ども及び家族の健康・福祉の改善・向上に貢献することを目的として活動を開始。
2010年一般社団法人格を取得。
2014年公益法人となり、地域に根差した公共性の高い事業に取り組んでいる。
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