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2022.03.21
陣痛ってどんな痛み?兆候は?【医師監修】お産の進み具合との関係
出産が近づくにつれて、「陣痛ってどんな痛みだろう?」と不安になる妊婦さんも多いのではないでしょうか。今回は、陣痛の痛みや出産の兆候について理解を深めていきましょう。お産がどのように進むのか、陣痛との関係性についても医師が解説していきます。
目次
陣痛には3種類ある
陣痛には、出産前に起こる「前駆陣痛」、お産の進行具合に直接影響する「本陣痛」、子宮復古を促す「後陣痛」の3種類があります。それぞれ詳しく見ていきましょう。
前駆陣痛
出産が近づくと、身体(子宮)は自然と赤ちゃんを産む準備に入ります。1ヶ月くらい前から頻繁に不規則なお腹の張りが続くようになり、これを「前駆陣痛」と言います。
妊娠後期に入るとお腹が張ることが多くなりますが、前駆陣痛はそれよりも強く、明らかに子宮収縮や痛みを感じます。
この前駆陣痛の感じ方は人それぞれです。痛みが強くて本陣痛と勘違いし、慌てて病院に連絡することもあるかもしれません。逆にあまり痛みを感じず、普段と変わらないという妊婦さんもいるでしょう。
前駆陣痛には、子宮収縮を起こすことで赤ちゃんの通り道である産道を柔らかくし(子宮頚管の熟化)、赤ちゃんが通りやすくする働きがあります。前駆陣痛がくれば、いよいよ出産が近いと思って間違いないでしょう。
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本陣痛
本陣痛は出産に直接関係してくるもので、「陣痛」とも言われます。ここから先は、本陣痛を陣痛として解説していきます。
正期産である妊娠37週を迎えると、いつ陣痛が来ても不思議ではありません。陣痛の始まり方は様々。前駆陣痛かと思えばそれが規則的になって陣痛が始まったり、前駆陣痛もない状態からいきなり規則的な陣痛が始まったりします。
陣痛とは、規則的な痛みのある子宮収縮で、痛みの間隔が短く強くなるという特徴があります。また痛みがあるとき(陣痛発作)とない時(陣痛間欠)があり、これを繰り返していきます。ずっと痛みが強い状態が続くわけではないので、間欠時にはリラックスしてゆっくりと身体を休めましょう。
後陣痛
赤ちゃんを出産後、大きくなった子宮は急速に元の大きさに戻ろうとします。その時に生じる陣痛のような痛みを「後陣痛」といいます。子宮復古の役目と、出産によって傷ついた血管を止血し回復させる役割があります。
後陣痛により子宮が収縮すると、卵膜のかけらなど胎盤と一緒に排出されなかったもの、いわゆる悪露(おろ)が排出。そして子宮復古を促進します。後陣痛によって子宮復古が促されるため、産後1~2日目が一番強く、1週間ほどで消失することがほとんどです。
また乳頭刺激と陣痛には、直接深い関係があります。授乳によって乳頭が刺激されると、子宮収縮が促され後陣痛が激しくなります。そしてその傾向は、経産婦の方が強いといわれています。
陣痛ってどんな痛み?
痛みの程度や感じ方は人それぞれですので一概には言えませんが、とにかく想像を絶する痛みであることは事実です。
前述したように、陣痛には「陣痛間欠」といってお休みの時間があります。またお産の進行具合によって痛みは強くなり、痛みを感じる部位も変化するという特徴があります。
前駆陣痛のような不規則でバラバラな時間間隔であったものが規則的になり、痛みの持続時間も長くなります。下腹部痛、軽い生理痛のような痛みから、腰が砕けるような痛みに変化してきます。
子宮の中でぷかぷか浮かんでいた赤ちゃんは、出産が近くなると位置が固定し、だんだんと下がってきます。そして陣痛が始まると、陣痛によって子宮口から押し出される赤ちゃんの位置によって、痛む場所も下の方へ変わっていきます。
骨盤に進入してくると、「腰が砕けそう」「腰が痛い」と表現する妊婦さんが多いです。その場合は腰をしっかりマッサージしてあげることで、痛みが和らぐこともあります。
子宮口のあたりまで赤ちゃんが下がってくると、肛門が痛くなり「便が出そう」「お尻を押さえてほしい」などと、痛みは最高潮になります。
陣痛は「怖い」「痛い」とマイナスな表現でとらえてしまいがちです。その気持ちはもちろん自然なもので仕方のないことです。
しかしあまりにも緊張していると、間欠期にもリラックスできず身体もこわばってしまうもの。陣痛が遠のいたり、お産の進行を妨げてしまうこともあります。陣痛中は一番辛い時ではありますが、かわいい赤ちゃんに会えるまでもう一息です。
赤ちゃんも、狭い産道を潜り抜けるために頑張っています。「もう少し、一緒に頑張ろう!」「いい陣痛が来ているな」と前向きにとらえるように心がけましょう。
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陣痛の兆候はあるの?
お産が近くなると、初産婦さんも経産婦さんも「いつ陣痛がくるのだろう」と緊張し不安になりますね。ここでは陣痛がくる兆候についてご説明します。
陣痛の兆候1. おしるし
おしるしは産徴ともいい、お産が近くなって赤ちゃんを包む卵膜が子宮壁からはがれるときに起こる、少量の出血のことです。おしるしには個人差があるので、おりものに少量混ざっていることもあれば、生理2~3日目程度の多量のこともあります。
色も赤色から茶褐色など、個人によって様々です。
もちろんおしるしがない妊婦さんもいます。おしるしがあるからといって、すぐに陣痛がくるわけではありません。ですが、身体がお産に向けて準備を始めている証拠。数日~1週間後には、陣痛が始まると考えていいでしょう。
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陣痛の兆候2. 破水
破水とは、赤ちゃんを包んでいる膜が破れて、羊水が外にでることを言います。本来ならば、破水が起こる時期は、陣痛が始まり子宮口が全開大した頃。これを「適時破水」と言います。
しかし何らかの理由により、陣痛が起こる前に破水することもあり、これを「前期破水」と呼びます。
前期破水がくると、その後すぐに陣痛が始まることもあります。ただし陣痛が起こらないと、点滴により人工的に陣痛を起こすこともあります。
前期破水の場合は、赤ちゃんを守っている膜が破れることになり、細菌感染の可能性が高くなります。そのため前期破水が起こればすぐに病院を受診し、赤ちゃんの感染を予防するための抗菌剤の投与が必要になってきます。
破水の感じ方も人それぞれ。ちょろちょろと少量の羊水が出る高位破水や、「バシャーン!」とほぼすべての羊水がでる完全破水があります。
完全破水なら、すぐに破水したとわかるでしょう。しかし高位破水の場合は、尿漏れと間違う可能性があり注意が必要です。もし尿漏れか破水かわからない場合は、自己判断せずにすぐに病院を受診しましょう。
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陣痛の兆候3. 前駆陣痛
先述したように、正期産に入って起こる前駆陣痛は、陣痛の予行練習のようなものです。
前駆陣痛の感じ方は人それぞれ。前駆陣痛の間隔はバラバラで、痛みも強くなったり弱くなったりして「いつの間にか寝てしまっていた」なんてこともあるかもしれません。前駆陣痛がくると、陣痛が近い証拠。陣痛が来るまでもう少しです。
お産の進み具合と陣痛の痛みの関係
お産の始まりは、規則的な10分ごとの陣痛です。「陣痛が来たな」と思ったら、時計で痛みの間隔をはかってみましょう。
陣痛間隔が10分ごとで規則的になれば、いよいよお産に向けて本格的な準備が始まります。初産婦さんは平均12~15時間、経産婦は6~7時間ほどかかります。あわてずに、痛みがないときは呼吸法をしっかり行い、リラックスするようにしましょう。
お産は分娩第1期、分娩第2期、分娩第3期に分けられます。それぞれどのような時期なのか、陣痛はどのように変化するのか解説していきます。
分娩第1期 |
お産の開始から子宮口全開大(10cm)まで |
分娩第2期 | 子宮口全開大から赤ちゃんを出産するまで |
分娩第3期 | 赤ちゃんの誕生から胎盤が出てくるまで |
お産の開始から子宮口全開大するまでの「分娩第1期」
分娩第1期は、お産の開始から子宮口全開大(10cm)するまでの時期のことを言います。
初産婦さんの場合、子宮口がゆっくりしか開かないことが多いため、時間がかかることもあり一番辛い時期だと言えます。
子宮口が10cm近くなると、自然にいきみたい感じが出てきます。しかしまだ全開大していないこの時期にいきんでしまうと、赤ちゃんに負担がかかったり、子宮口がむくんでしまうことも。こうして子宮口が開くのに時間がかかり、お産が停滞したり、出産後の出血が多くなったりする可能性もあります。
いきみたい感じが出てきても、呼吸法でしっかりといきみを逃がしましょう。医師や助産師がリードします。慌てずにパニックにならないように、心構えが必要です。
■子宮口の開き具合で陣痛が変化する
分娩第1期は、子宮口がどのくらい開いたかによって、陣痛の時間や強さ、長さが変化してきます。
子宮口の開き | 陣痛間隔 | 陣痛発作時間 |
0~3cm |
約10分 |
30~40秒 |
3~8cm | 5~6分 | 1分程度 |
8~10cm | 2~3分 | 約1分 |
◆子宮口0~3cmの時は、陣痛間隔が約10分で陣痛発作時間が30~40秒となります。最初は生理痛のような痛みだったものが、次第に子宮が押しつぶされるような痛みに変化してきます。
◆子宮口3~8cmの時は、陣痛間隔が5~6分で陣痛発作時間が1分程度続きます。この時期には赤ちゃんの位置により、子宮よりも腰の方に痛みを感じることが多くなります。
◆子宮口8~10㎝では、陣痛間隔が約2~3分で陣痛発作時間が約1分となります。腰よりも肛門圧迫感が強く、いきみたい感じも強くなってきます。
このように分娩が進行するにつれて、陣痛間隔は短くなり、発作時間は長く、陣痛の痛みも強くなってきます。
子宮口全開大から赤ちゃんを出産するまでの「分娩第2期」
分娩第2期は、子宮口全開大から赤ちゃんを出産するまでです。
子宮口が全開大すればいきんでも良いですが、もし赤ちゃんがまだ下がっていない場合は、時間がかかると考えた方がよいでしょう。赤ちゃんの下がり具合を考えながら、助産師が分娩の準備を進めていきます。タイミングを見計らっていきみの合図をかけますので、それに合わせていきみましょう。
この時には、陣痛間隔は約1~2分、陣痛発作は1~1分半となります。赤ちゃんが下がってくることで便をしたい感じが高まります。肛門の方に向かって本当に便をするようにいきむと、赤ちゃんが下がってきやすくなります。
赤ちゃんの頭が膣口から出たり入ったりすることを「排臨」、赤ちゃんの頭が常に出て戻らなくなった状態を「発露」といいます。これらを経て、助産師が陣痛といきみに合わせて赤ちゃんが出てくるお手伝いをしていきます。
赤ちゃんの誕生から胎盤が出てくるまでの「分娩第3期」
分娩第3期は、赤ちゃんの誕生から胎盤が出てくるまでです。
赤ちゃんが出てくると、子宮は急速に元の大きさに戻ろうとし、子宮収縮が起こります。その時に自然と、胎盤が子宮壁からはがれ排出されます。
その後は医師の診察で、卵膜遺残がないか、会陰裂傷や頸管裂傷がないかを確認。必要あれば、それに合わせた縫合などの処置を行います。
基本的には産後2時間は分娩室で様子を見て、出血量や子宮収縮の状態を確認します。状態がよければ初回授乳を行いますが、経産婦の場合は後陣痛が強くなる可能性があります。様子を見ながら開始しましょう。
《まとめ》
お産が近くなると、おしるしや前駆陣痛などの兆候が現れてきます。「いよいよか」と不安や緊張が増すかもしれません。お産の進行具合によって、陣痛の強さや時間は変化し、痛みの位置や感じ方も変わってきます。お産の流れを再確認し、痛みがないときは出来るだけリラックスできるように心がけましょう。
※写真提供:PIXTA
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1999年愛知医科大学卒業
その後大垣市民病院にて研修、勤務を経て安城更生病院へ赴任
2006年日本産婦人科学会産婦人科専門医取得
2008年やまだ産婦人科院長就任
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