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2021.07.19
【陣痛がこないとどうなる?】産科医が教える対処法とは
出産予定日が過ぎたのに陣痛が始まらないと、焦ったり不安になる妊婦さんもいますよね。陣痛がこない原因、陣痛がくるように自分でできる対処法、陣痛がこのままこなかったらどんな医療処置があるのかについて、詳しく解説していきます。
目次
出産予定日を過ぎて陣痛がこない原因
出産予定日を過ぎたのに、陣痛がこない原因は何でしょうか?予定日=出産の日と思っている妊婦さんが多いようですが、それは違います。
出産予定日で産まれるのは6%
陣痛がくる正常な期間は妊娠37週から42週未満で、正期産と呼ばれています。出産日が一番多いとされている時期は、妊娠39週〜41週未満です。出産予定日で産まれるのは全体の約6%。予定日に産まれないからといって焦ったり、不安になる必要はありません。
陣痛がくるタイミングには個人差
陣痛が起きる仕組みは未だに解明されていません。妊娠中は十分に赤ちゃんが育つまで陣痛がこないよう、子宮収縮を抑制するホルモンが働いています。
逆に、妊娠37週を過ぎて赤ちゃんが十分に成長すると子宮収縮ホルモンは減少し、陣痛を促すホルモンが優位になってきます。そして何らかのきっかけがあって、陣痛が起きるのです。陣痛がくるタイミングは人それぞれですから、出産に備えて準備をして、ゆったりリラックスして待ちましょう。
陣痛がこない原因は主に2つ
陣痛がこない原因として考えられるのは以下の2つです。
1. まだ子宮の準備ができていない
子宮は風船のような形をしています。空気を入れる部分が子宮の入り口で子宮口といい、細長い部分を子宮頸管といいます。
妊娠37週を過ぎるとこの子宮頸管は、最初は鼻の硬さほどだったのがマシュマロのように柔らかくなり、きゅっとしまっていた子宮の入り口は徐々に開いていきます。これを子宮の熟化といい、子宮が十分に準備できたところで陣痛が始まるとされています。
産科ではビショップスコアという基準で子宮頸管の成熟度を数値化し、分娩が近いかどうかを評価しています。
2. 赤ちゃんが準備できていない
赤ちゃんは出産か近づくと、あごをひいて、腕は胸の前でクロスするように、脚は体育座りのようにして小さくまるまって準備をします。この体勢で頭が下がり骨盤の中に入ることで、子宮の熟化が促されます。
エコーやお腹の触診、内診などで赤ちゃんの様子を評価し、羊水の中でぷかぷか浮いていたり、産まれる体勢をまだとっていなければ、分娩はまだ先と判断されます。
陣痛がこないときに自分でできる対処法
前述した通り、陣痛がくるためには子宮の入り口が柔らかくならなければなりません。子宮の熟化を促すため、自分でできる対処法について説明します。
適度な運動をする
子宮は筋肉でできており、筋肉は使うことでしなやかに柔くなります。子宮頸管を直接鍛えることはできませんが、子宮をハンモックのように支えている骨盤底筋群を意識的に動かすと良いと言われています。
子宮周りの筋肉や臓器の血流をよくすることで、子宮にも十分な血液が流れて子宮頸管が柔らかくなります。
陣痛がこない時の対処法として、30分程度のウォーキング、マタニティヨガやストレッチなどの運動を無理せず続けるとよいです。また四つん這いになって、床の雑巾掛けや家中の掃除をするのもおすすめです。自分が気持ちよいと感じるくらいの程よい運動量で、毎日コツコツと続けることが大切です。
体を温める
体の冷えは分娩を長引かせる、という研究結果があります。体を温めて骨盤周りの血流を促しましょう。緊張したりストレスがあると筋肉もこわばりますので、精神的なリラックスも大切ですね。入浴、足浴、お腹や腰を温めるなど、体が冷えないように気をつけましょう。また、鍼灸が役立つこともあります。
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陣痛がこなかったときの医療処置
陣痛がこない場合、基本的には妊娠41週に入った頃から、医療処置が必要かどうか判断する病院が多いです。妊娠42週を過ぎると過期産といい、胎盤が古くなることで赤ちゃんが苦しくなったり、死産の確率が上がります。
赤ちゃんが大きく育ちすぎることで、分娩時に娩出困難になったり、妊婦さんの出血が多くなるリスクもあります。そのため出産予定日を過ぎると、注意深く赤ちゃんの様子をみていき、場合によっては、医療処置をした方がよいことがあります。
子宮頸管を柔らかくする処置
内診の時に、卵膜剥離という処置をすることがあります。子宮の壁と卵膜の間に内診で指を入れて卵膜を剥がしていく処置で、人工的におしるしを起こしていきます。
子宮が十分に熟化していない場合には、子宮頸管を柔らかくするための処置をする場合もあります。水風船のようなものを子宮口に挿入して、子宮頸管を柔らかくし、人工的に開いていく方法です。どちらの処置も痛みを伴いますので、深呼吸とリラックスで下半身の力を抜きましょう。
陣痛促進剤を使う
子宮の熟化が進んでいれば、人工的に陣痛を引き起こす薬剤を投与していきます。オキシトシンという元々人の体にあるホルモンと同じなので、体に害のある薬剤ではありません。
点滴でごく少量からスタートして、徐々に量をアップしていきます。適切な陣痛間隔や強さとなるように、赤ちゃんの心拍やお腹の張りをモニタリングしながら進めます。過剰に投与されると過強陣痛、子宮破裂、胎児仮死などの危険があり、慎重に薬量を調整する必要があります。
《まとめ》
妊婦さんそれぞれで状態は異なりますので、あくまで一般論です。ご不明な点やご不安があれば、かかりつけの産科医に指示を仰いでください。出産予定日になっても陣痛がこないと焦ったり、心配する必要はありません。
陣痛のタイミングは人それぞれですが、子宮が熟化し赤ちゃんが骨盤の中に下がってくることで陣痛が始まりやすくなります。適度な運動や体を温めるなどして陣痛がくるのを待ちましょう。妊娠41週を過ぎても陣痛がこない場合は、子宮を熟化させたり陣痛を引き起こす医療処置が必要になります。
※写真提供:PIXTA
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ママのお悩みの声
1990年兵庫医科大学卒業
1993年名古屋大学医学部産婦人科教室所属
1998年近郊の産婦人科医院勤務、第二日赤病院NICU研修
国際認定ラクテーション・コンサルタント(IBCLC)取得
ロサンゼルスのラクテーション・インスティテュートにてSuck Intensive受講
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