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2024.03.04

【産科医】赤ちゃんがスムーズに降りてくる方法!陣痛を促し子宮口を開くには

臨月に入る頃には、妊婦健診で「赤ちゃんが降りてきているね」などと医師に言われることがありますね。初めてのママは、どういうことかわからないかもしれません。出産が近づくと、赤ちゃんが徐々に骨盤の方に下がってきます。それを「赤ちゃんが降りてくる」と表現します。お産には、赤ちゃんがスムーズに降りてくることが大切な要素です。そのためにママができることを紹介しましょう。

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陣痛が起きる・子宮口が開くとは?

陣痛が起きること

 

まずは陣痛が起き、子宮口が開くとはどういうことでしょうか。

 

重要な3つの要素

出産がスムーズに進むかどうかには、主に3つの要素が関わっています。

 

1. 娩出力

赤ちゃんを外に押し出そうとする力のことで、陣痛による子宮収縮と腹圧(いきみ)の2種類があります。

 

2. 産道

赤ちゃんの通り道のことで、以下の2つから成ります。

・骨盤とその関節を含む骨産道

・骨産道の内側のやわらかい部分である子宮や子宮頚管(子宮口)、および膣を含む軟産道

 

3. 娩出物

赤ちゃんと胎盤、卵膜、臍帯、羊水がこれに含まれます。赤ちゃんの体格、向きや姿勢が出産に大きな影響を与えます。

 

どのように陣痛が起きて、子宮口が開いていくのでしょうか?

 

陣痛が起きて子宮口が開く仕組み

まず、オキシトシンという子宮を収縮させる(陣痛を起こす)ホルモンが、ママの脳下垂体から分泌されます。オキシトシンによって刺激された胎盤が、ホルモンに似た働きをする物質(プロスタグランジン)を出し、子宮の収縮がさらに強まります。

プロスタグランジンには、子宮を収縮させる働きと、子宮口を柔らかくする働きもあります。

 

子宮収縮により、赤ちゃんは少しずつ骨盤内に降りていきます。赤ちゃんが降りることによってかかる圧力で、またオキシトシンの分泌が盛んになります。この相互作用により、子宮収縮(陣痛)が規則的になっていきます。

そして、規則的に起こる子宮収縮により、さらにオキシトシンが分泌され、陣痛の間隔が短くなっていきます。赤ちゃんはどんどん骨盤内を降りていき、産道が赤ちゃんの頭で押し広げられます。

 

このように、「娩出力(陣痛やいきみ)」、「産道(赤ちゃんが通る道)」、「娩出物(赤ちゃんと胎盤など)」という3つの要素は互いに関係しあっています。

 

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陣痛が起きるために必要なこと

陣痛が起きる仕組みは完全に解明されているわけではありませんが、ここまで説明したいくつかのホルモンが関わっていることはわかっています。

基本的には、陣痛はママが自分でコントロールすることはできません。しかし陣痛を起こす、あるいは促すためには、自分でもできるケアがたくさんあります。

 

具体的なセルフケアは後述しますが、ウォーキングやスクワット、階段の昇り降りやトイレ掃除、床拭き、骨盤のストレッチ、足の内くるぶしから指4本分上にある三陰交のツボ押しなどは、陣痛を起こしたり、促進したりするのに効果があります。

乳頭刺激や、クラリセージ・ラベンダー精油入りの足浴も、陣痛を促すオキシトシンの分泌に効果的だという研究結果があります。

 

医師が「ちょっと刺激しておくね」とか、「ちょっとグリグリするよ」などと言って、内診時に行う卵膜剥離も陣痛を促すためです。

陣痛が来ない場合や、早く陣痛を起こす必要がある場合は、オキシトシンやプロスタグランジンなどの薬を投与して、陣痛促進を医療的に行うこともあります。

 

 

子宮口が開くために必要なこと

ママが特に気になるのは、子宮口が順調に開くかどうかということかもしれません。順調に子宮口が開くために、必要なことをさらに詳しく解説します。

 

規則的で適度な陣痛

子宮口が開くために、大切な役割を果たす要素の1つは陣痛です。

10分以内で規則正しくお腹の張りが来たときを「陣痛発来」と言いますが、それよりも前に不規則な「前駆陣痛」があることが多いです。徐々に陣痛の間隔は短くなっていき、いざ出産というときには2~3分間隔で痛みが来るようになります。ママの感じるこの痛みは、子宮収縮による痛みです。

規則的かつ適度な強さの子宮収縮(陣痛)が来ることで、子宮口が開いてきます。陣痛が始まると分泌されるプロスタグランジンというホルモンは、子宮口を柔らかくしてくれます。

 

本格的な陣痛が来る前の不規則な前駆陣痛のほとんどが、子宮口が開くほどの強い子宮収縮ではありません。しかしこの子宮収縮により、赤ちゃんはゆっくりと骨盤の方に下がってきて、体がお産の準備をしていくことができます。

 

産道がやわらかいこと

産道は赤ちゃんの通り道です。特に子宮頚管や膣といった軟産道が硬く、伸びが悪いと、赤ちゃんが通過しにくく子宮口も開きにくいです。産道をやわらかくすることも、子宮口が開くために大切なことです。

 

赤ちゃんが降りてくること

子宮口が開くために大切な役割を果たす、もう1つの要素は赤ちゃんが降りてくる刺激です。

妊娠後期、赤ちゃんはたいていママの右か左を向いています。お産が近くなると、骨盤内にそのまま降りてきますが、実際に分娩が始まると、赤ちゃんは向きを変え始めママの背中のほうを向きます。これは、狭い骨盤を通るために必要な動きです。

 

ところが、横向きのまま降りてきてしまったり、ママのお腹のほうを向いてしまったりする回旋異常になるケースがあります。

また、骨盤に入るときには顎をきゅっと引かないといけないところを、顎が上がってしまったまま降りてきてしまう場合も回旋異常です。回旋異常があると、赤ちゃんは骨盤内をスムーズに降りてこられず、子宮口がなかなか開きません。

赤ちゃんがスムーズに降りてくるためにできることは、次の項で説明します。

 

 

赤ちゃんがスムーズに降りてくる方法5つ

赤ちゃんが降りてくるには

 

ここまでで、お産にはいくつもの要素が互いに関わり合っていることがわかりました。赤ちゃんがスムーズに降りてくることにも、色々な要素が関わっています。陣痛が規則正しく来ること、産道が柔らかいこと、赤ちゃんの向きや姿勢が正しいことなどです。

ここでは、赤ちゃんがスムーズに降りてくるために、ママ自身ができることを紹介します。

 

1. スクワットや雑巾がけ、トイレ掃除などの足を開く動作

産道が硬いと、赤ちゃんはなかなか降りてこられません。前述したように、産道には骨盤の骨の要素と、その中の筋肉などの組織の要素が関わっています。スクワットや雑巾がけ、トイレ掃除などの足を開く動作は、産道を開くのに効果的です。股関節も柔らかくなります。

スクワットでは、骨盤を最大限に開くことができるので、陣痛開始後の回旋異常(赤ちゃんの向きの異常)を直す効果も期待できます。

 

2. あぐらや四つん這い、骨盤周りのストレッチ

あぐらも筋肉を柔らかくし、産道が広がりやすくなります。ストレッチや四つん這いなどで、骨盤周りの血流をよくすることも大切です。四つん這いは陣痛が始まってから、赤ちゃんの向きが悪いときにも効果的です。

回旋異常(赤ちゃんの向きの異常)は、ママが姿勢や体の向きを変えてあげることで、直せることがあります。陣痛中に動くのは少し大変かもしれませんが、助産師の指示に従って姿勢を変えてみてください。

 

3. ウォーキングや階段昇降

前駆陣痛や陣痛により、赤ちゃんは骨盤内に降りてきます。

妊娠37週の正期産に入ったら、お腹が張っても心配することはありません。ウォーキングや階段昇降などでお腹周りや骨盤周りの筋肉に刺激を与え、子宮収縮を促しましょう。

 

本格的な陣痛が始まってからも、ウォーキングや階段昇降をすると、重力を有効利用して赤ちゃんが降りやすくなります。歩けないくらいしんどくなったとしても、仰向けよりは座った姿勢や立った姿勢のほうが、赤ちゃんの進みたい方向と重力が一致するので、赤ちゃんは降りてきやすいです。

 

4. 乳頭刺激、乳輪マッサージ

出産後の授乳の準備を兼ねて乳頭刺激、乳輪マッサージも念入りにしましょう。乳頭刺激によりオキシトシンが分泌され、子宮収縮が促されます。子宮収縮によって、赤ちゃんは骨盤内に降りていきます。

 

5. 足浴や入浴

足浴や入浴で体を温めると、骨盤周りの血行がよくなります。さらにクラリセージ、ラベンダーの精油を使うと、子宮収縮を促すオキシトシンの分泌を増加させる効果もあるようです。子宮収縮を促し、産道を緩め、赤ちゃんがスムーズに降りやすくなります。

 

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「赤ちゃんが降りてくる」ことへの疑問

赤ちゃんが降りてくるとは

 

赤ちゃんが降りてくることに関して、よくある疑問にお答えします。

 

Q. 赤ちゃんが降りてくる感覚はある?

お産が近づいてくると、赤ちゃんの頭が骨盤に入り、赤ちゃんの位置が下がるため、お腹が下がったと感じる人がいます。

見た目の変化や感じ方は人それぞれ。お腹が重たく、下に下がっている感じがするという人、膀胱や尿道の圧迫を感じる人、胃の圧迫感がなくなったと感じる人、また胎動の位置が下がったという人もいます。また、お腹のふくらみが下がっているのがわかったという人もいます。

 

もちろん、まったく変化に気づかないママもいますので、お腹が下がった感じがなくても、心配はいりません。実際に陣痛が来て、分娩が近づいてくると、赤ちゃんがさらに出口に近づいてきます。おしりの痛みやいきみたい感じ、便をしたい感じがするでしょう。

 

Q. 赤ちゃんが降りてきやすい座り方や姿勢は?

椅子やアクティブチェアに座る、ベッドの上ならばあぐらをかく、スクワットや床拭きがおすすめです。骨盤が開く姿勢は、赤ちゃんが降りてきやすくなります。

病院に行ってからも、ずっとベッドに横になっているよりも、立ち姿勢や座り姿勢のほうが、重力を有効に使えます。回旋異常(赤ちゃんの向きの異常)があるときは、四つん這いも効果的です。

 

Q. 子宮口はいつから柔らかくなる?硬いときはどうする?

妊娠37週に入ると正期産となり、いつ赤ちゃんが生まれてもよい状態です。それよりも前に子宮口が柔らかくなってしまうと、早産の危険があります。

正期産に入ってからの子宮口の状態は、人それぞれです。ゆっくり日数をかけて柔らかくなることもあれば、お産が近づいて柔らかくなることもあります。なかには、陣痛が始まってからようやく柔らかくなる場合も。そのため「子宮口が硬いね」と言われても、さほど心配はありません。

 

 

ただし、予定日を過ぎてもまったく子宮口が柔らかくならない、開いてこないという場合には、何らかの処置をすることもあります。オキシトシンやプロスタグランジンなどの薬を投与して、陣痛促進を医療的に行うこともあるでしょう。

 

 

《まとめ》

 

赤ちゃんがスムーズに降りてくるための要素について解説しました。生活の中に取り入れられることや、産院に行ってからできることもありますので、参考にしてみてくださいね。お産はただ早ければよいというものでもありません。ママと赤ちゃんの2人のペースで、焦らずにリラックスしてお産に臨みましょう。

 

※写真提供:PIXTA

 

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1999年愛知医科大学卒業
その後大垣市民病院にて研修、勤務を経て安城更生病院へ赴任
2006年日本産婦人科学会産婦人科専門医取得
2008年やまだ産婦人科院長就任

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