赤ちゃんのエコー(超音波)写真でわかること

妊婦健診では必ず、お腹の赤ちゃんの様子をエコーで観察します。エコーによって赤ちゃんだけではなく、羊水量や臍帯・胎盤の位置や状態、子宮や他の臓器なども確認できます。
エコーには、2D・3D・4Dがあり、それぞれ特徴があります。
2Dエコー
妊婦健診でほとんどの妊婦さんがもらう白黒写真は、「2Dエコー」です。2Dエコーでは、赤ちゃんの身体の断面が映し出されるので、内臓や骨などもしっかり観察できます。
超音波の反射により、色が黒と白に分かれます。黒い部分は反射がないため液体、つまり羊水や血液です。白い反射のある部分は、骨や筋肉など赤ちゃん自身を指します。
3Dエコー
「3Dエコー」は、2Dに映し出される各断面をつなぎ合わせたもの。より立体的に赤ちゃんを見ることができます。赤ちゃんの顔のほか、臍の緒を持ったり、あくびをする行動も立体的に映し出されます。
4Dエコー
「4Dエコー」は、3Dをリアルタイムの動画で見たものです。妊娠14週から20週あたりは、赤ちゃん全身をエコーで見られる時期。この頃の3D・4Dエコーは貴重で、とてもおすすめです。
妊娠中期~後期では、赤ちゃんの立体的な顔を映し出されます。「ママに似ているね」「上の子にそっくりだね」などという会話も出るかもしれませんね。
エコー(超音波)写真の用語解説
エコー写真には、様々な用語が記載されています。それぞれの意味は、以下の表を参照してください。
用語
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意味
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GS:gestation sac
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胎嚢
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CRL:crown rump length
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頭殿長(頭からおしりまでの長さ)
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AC:abdominal circumference
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体幹周囲長/腹部周囲長(赤ちゃんのお腹周りの大きさ)
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AFI:amniotic fluid index
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羊水指標/羊水インデックス(羊水の量を示す指標)
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BPD:biparietal diameter
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大横径(児頭の横の直径)
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FL:femur length
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赤ちゃんの大腿骨の長さ
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EFW:estimated fetal weight
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赤ちゃんの推定体重でBPD・AC・FLなどから算出される |
EDD:estimated due date
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出産予定日 |
SD
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標準偏差で、赤ちゃんの大きさが標準と比べてどのくらいかというのを記す
標準ピッタリの場合は「0.0SD」
大きい場合は「+〇〇SD」
小さい場合は「―〇〇SD」となる
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用語や数値を知ると、エコー写真を見る視点も変わり、おもしろくなりますね。
【妊娠期別】エコー(超音波)写真の見方

妊娠初期・中期・後期それぞれにおいて、エコー写真から何がわかるか詳しく解説します。
【妊娠初期】のエコー写真
妊娠初期にはどのようなことが確認できるか、見ていきましょう。
■胎嚢の確認
妊娠初期にまず行うことは、GS(胎嚢)の確認です。妊娠5週~6週頃、子宮内に小さな黒い丸のようなものが確認できれば、まず子宮内妊娠で間違いありません。
妊娠検査薬で陽性反応が出たにも関わらず、この時期に胎嚢が確認できない場合は、排卵がずれているか子宮外妊娠が考えられます。
■卵黄嚢・胎芽の確認
妊娠4週~6週目あたりで、胎嚢の中に白いリングが確認できます。これが「卵黄嚢」で、赤ちゃんの栄養成分となります。さらに週数がすすむと、胎児になる前の「胎芽」がすぐ近くに確認できるようになります。
■心拍・CRLの確認
心拍は妊娠6週頃から確認されます。一番流産しやすいといわれる妊娠初期に、心拍が確認できると、流産率はぐっと減ってきます。
妊娠8週頃からは、赤ちゃんの身体全体がピーナッツのように現れて、キューピー人形のように見えてきます。この時期しかない貴重な形です。CRLの確認もこの頃に行い、妊娠9週~10週で平均20~30㎜、ちょうど小さめのイチゴ1個分くらいです。
【妊娠中期・後期】のエコー写真
妊娠中期・後期に確認できることを見ていきましょう。
■胎盤完成
妊娠16週頃には胎盤が完成し、胎盤を通じてママから栄養をもらうようになります。胎盤の位置や大きさも、エコーで確認できます。もし胎盤が子宮口付近にある「前置胎盤」気味であっても、妊娠後期には上の方へずれてくることも考えられるので、毎回チェックが必要です。
■推定体重
BPD・FL・ACなどの計測によって、赤ちゃんの推定体重を求めます。そしてその体重が発育曲線のどの辺りにあるのか、妊娠中期から後期の妊婦健診で確認します。
体重の増加率も必ずチェックしていきます。もしも成長が止まっていれば、子宮内胎児発育遅延が疑われ、早めの娩出が必要な場合もあります。
■性別確認
男の子の場合で外陰部がしっかり観察できれば、妊娠16週頃には性別がわかります。
女の子のケースでわかるのは、早くても妊娠17週~18週でしょう。体勢によっては外性器を隠していて、出産まで不明な場合もあります。
■赤ちゃんの向き
赤ちゃんがどのような体勢で子宮内にいるのか、確認する必要があります。逆子や横向きだとしても、妊娠中期であれば戻る可能性が高いでしょう。もし後期になっても戻らない場合は、帝王切開になることがほとんどです。
■羊水量
羊水量は妊娠7ヶ月~8ヶ月でピークに達し、その後次第に減少していきます。
「羊水過多」や「羊水過少」など、何かしらの原因で羊水量が正常ではないケースもあります。その時は原因究明に努め、必要時には胎内での治療を行ったり、早めに娩出することもあります。
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エコー写真で赤ちゃんのダウン症はわかる?
ダウン症とは「21トリソミー」といって、21番目の染色体が1本多くなることでわかる、染色体異常の事です。我が国で最も多い染色体異常で、扁平な後頭部、広くのっぺりとした顔面、吊り上がった目尻と低い鼻等が特徴です。
ダウン症が疑われる所見
ダウン症が疑われる所見としては、NT(Nuchal Translucency)という首の後ろのむくみが挙げられます。CRLが45㎜を超える妊娠11週頃から、観察が可能となります。
その他、以下の状態が見られます。
・手足が異常に短い
・頭が大きい
・心疾患
・特徴的な顔貌
ここで注意なのは、エコーではダウン症が疑われる所見がわかるのみだということ。決して確定診断には至らないのです。エコーでダウン症が疑われたら、確定診断のためにNIPT(新型出生前診断)、もしくは羊水検査を受けることをおすすめします。
《まとめ》
妊婦健診のエコー検査では、妊娠週数によって様々なことがわかります。医師や技師は赤ちゃんの顔・性別以外にも、あらゆる異常の有無を観察しています。妊婦さんが思っている以上にとても大切な検査です。エコー写真に記載されている情報で、もし気になることがあれば主治医に確認してみてくださいね。
※写真提供:PIXTA
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1999年愛知医科大学卒業
その後大垣市民病院にて研修、勤務を経て安城更生病院へ赴任
2006年日本産婦人科学会産婦人科専門医取得
2008年やまだ産婦人科院長就任
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