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2023.02.13
子宮頚管の長さや平均値【助産師】短い場合の早産リスク
妊婦健診にて産科医から、「子宮頸管が短い」言われたことはありませんか?子宮頸管とは妊娠中の経過を知るための、非常に重要な指標です。今回は子宮頸管と早産の関係について、学んでいきましょう。子宮頸管とは何か、平均値や測り方も含めて助産師が解説します。
目次
【子宮頸管とは】短いと早産のリスクが高くなる?
「子宮頸管(しきゅうけいかん)」とは、子宮と膣を結んでいる筒状の部分を言います。妊娠継続において非常に重要な役割を果たしており、妊婦健診では必ず確認しなければいけないものです。
子宮頸管の役割とは
子宮頸管には以下のような役割があります。それぞれ見ていきましょう。
役割(1) 細菌の侵入を防ぐ
子宮頸管は直接外部とつながっています。そのためどの臓器よりも細菌が侵入しやすく、感染を引き起こしやすい状態。子宮頸管の中を酸性に保つことで、細菌の侵入を防ぎ、感染を予防する働きがあります。
役割(2) 精子を子宮内に招き入れる
子宮頸管は通常、細菌の感染を防ぐために酸性に保たれています。しかし排卵の時期になるとアルカリ性に傾きます。性交渉によって放たれた精子を子宮内に招き入れる働きをして、受精を助けるのです。
役割(3) 赤ちゃんを子宮外から支える
子宮頸管は子宮下部にある筒状の部分。赤ちゃんが出てこないように、通常はしっかりと硬く閉ざされています。赤ちゃんが成長するまで、子宮の外側から支える役割を果たしています。
役割(4) 出産時には産道となる
分厚く硬い子宮頸管は、出産が近づくとホルモンの影響で次第に柔らかく、薄くなっていきます。赤ちゃんが生まれやすい環境に変化するのです。赤ちゃんが通る産道となり、出産時に重要な役割を担います。
【子宮頸管が短い】とどうなる?
子宮頸管の長さは通常35㎜~40㎜程度ですが、細菌感染を引き起こすとその長さは短縮します。子宮頸管には本来、赤ちゃんを守る役割があります。しかし短くなれば子宮を支えることができずに、早産を引き起こす可能性が高まります。
子宮頸管が短くなる原因
次に、子宮頸管が短くなってしまう原因を述べていきます。
原因(1) 子宮頸管炎
子宮頸管に細菌感染が広がり、頸管粘液が炎症を起こすと「子宮頸管炎」となります。
原因(2) 絨毛膜羊膜炎
子宮頸管炎がさらに進行すると「絨毛膜羊膜炎(じゅうもうまくようまくえん)」といって、卵膜に炎症をきたします。すると卵膜が脆弱化して破水を引き起こすこともあります。子宮頸管が短くなって赤ちゃんを支える力が弱まり、早産の可能性が高まります。
原因(3) 子宮頸管無力症
「子宮頸管無力症」とは、子宮頸管がほぼない状態です。流産・早産の可能性が高いと診断され、同時に子宮頸管の長さが25㎜に満たない場合がその目安となります。
ほとんどの場合は無自覚・無症状。本来は閉じていなければいけない子宮頸管が、何の前触れもなく突然開いてしまう病気です。場合によっては子宮頸管を縛る手術を行い、妊娠継続を維持します。
子宮頸管が短いと起こる「切迫早産・切迫流産」
子宮頸管が短くなると、早産・流産を引き起こす可能性が高まります。
妊娠22週未満に、子宮収縮や出血などの症状が見られると「切迫流産」となります。妊娠22週以降36週未満の場合は、「切迫早産」です。今の医学では、流産域(妊娠22週未満)での赤ちゃんを確実に助けることはできません。
早産域(妊娠22週0日~妊娠36週6日まで)でも、妊娠週数が短いほど、赤ちゃんに障がいが残ったり合併症を起こす可能性が高くなります。
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【子宮頸管の長さ】測り方と平均値・正常値
子宮頸管の長さは、どの時期にどうやって測定するのでしょうか。
子宮頸管の長さを測定するのはいつ?
妊娠中期以降の妊婦健診では適宜、子宮頸管を測定します。切迫早産の既往がある、また正常範囲内であっても子宮頸管が短めの妊婦さんは、経過観察のために毎回測定するケースがあります。
子宮頸管はどうやって測定する?
子宮頸管は、内診と超音波検査によって測定します。尿が溜まっていると正しく測定できないため、必ず診察前にトイレを済ませておきましょう。
まず内診によって、子宮頸管がしっかり硬く閉じているのか確認します。薄くて柔らかい場合、そして指が内子宮口に入る場合は非常に注意が必要です。また超音波検査では子宮頸管の内側と外側、つまり内子宮口と外子宮口の長さを測定します。その値が週数相当のものなのか、正常値と比較しながら状況を把握していきます。
子宮頸管の長さ(平均値・正常値)
妊娠中の子宮頸管の長さは、以下を指標とします。
時期 |
子宮頸管の長さ |
妊娠初期~中期(妊娠16週~27週) |
約40㎜ |
妊娠7ヶ月(妊娠24週の平均) |
約35㎜ |
妊娠9ヶ月(妊娠32週以降) |
約25~30㎜に短縮 |
妊娠継続のために長くて硬い子宮頸管は、出産が近づくにつれて次第に短縮します。早産のリスクに関しては、妊娠24週がひとつの目安となります。
妊娠24週において、「子宮頸管が25㎜未満だと、早産リスクが約6倍」「子宮頸管が13㎜以下は、早産リスクが約14倍」という研究結果も出ています。十分な注意が必要となります。
子宮頸管が短いと自宅安静?入院?
子宮頸管が短いと診断されたら、自宅安静と入院安静の2つの選択肢があります。
妊娠24週未満で子宮頸管が30㎜以下の場合、それは要注意と判断されます。つまり入院するまではなくても、これから入院が必要となる可能性が十分にあり、自宅安静が必要です。状況によっては、子宮収縮抑制薬を4~6時間おきに内服することがあります。
子宮頸管が25㎜よりも短いと入院治療を必要とし、子宮収縮抑制剤を点滴しなければなりません。ただ子宮頸管の長さだけで判断せず、出血の有無・子宮収縮の程度・切迫早産の既往など総合的に見て、治療方法を検討していきます。
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「子宮頸管無力症」と診断されたら
「子宮頸管無力症」とは、何の前触れもなくいきなり子宮口が開き始めること。多くのケースで出血や子宮収縮は認めません。
子宮頸管無力症には安静が一番です。しかし上の子のお世話で休めないなど、事情により自宅では安静が保てない人もいます。その場合は、積極的に入院治療を勧められるでしょう。また明らかに入院治療が必要な時は、子宮収縮抑制薬の点滴を行う可能性もあります。
子宮頸管無力症を経験すると、次回の妊娠時も同様に、子宮頸管無力症となるケースが多いです。そのため子宮頸管を縛る、「シロッカー術」や「マクドナルド術」が行われることがほとんど。このような手術により、正期産まで妊娠を継続することが可能です。
「子宮頸管ポリープ」にも注意
「子宮頸管ポリープ」は、子宮頸管の粘膜からできた小さな腫瘍を指します。良性がほとんどですが、切迫流産・切迫早産の可能性が高まるため、安易に切除しないように注意しましょう。自然とポリープが取れることもあります。
《まとめ》
子宮頸管は、赤ちゃんの成熟を助ける役割を果たすもの。赤ちゃんを守るために、長く硬く閉じられています。しかし細菌感染によって炎症を起こすと、子宮頸管が短くなり、切迫早産や流産の可能性が高まるので注意しましょう。もしも妊婦健診で子宮頸管が短いと言われたら、絶対に無理をせず、まずは安静を心がけましょう。
※写真提供:PIXTA
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監修者
1955年に助産師独自の職能団体として社団法人として創立。
全国都道府県助産師会の会員にて組織されている。
2012年10月1日から公益法人制度改革により公益法人認定法に基づいて公益性を認定され、公益社団法人として新たにスタート。
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