新生児の赤ちゃんはなぜ「うなる」?

「うなる」というのは、色々な状態を指していると思われますが、医学的には赤ちゃんの「うなり」は正確には「呻吟(しんぎん)」とよばれます。これは呼吸が上手に出来ていない、危険な状態を指します。逆に言えば、この「呻吟」以外の「うなり」は病的ではなく、あまり心配しなくても良い状態(生理的範囲)であると考えられます。
まずは、病的な「呻吟」について説明します。またうなりに似た状態で、「喘鳴(ぜんめい)」という状態もあるので合わせて説明します。
新生児は病気が理由でうなることがある
赤ちゃんが肺炎や気管支炎などの呼吸器の病気になると、第一段階として「発熱、咳、鼻水」などの症状がみられます。しかし、病状が進んで呼吸の状態が悪くなると、「呻吟」や「喘鳴」という重大なサインがみられる場合があります。このような場合は急いで小児科を受診することをお勧めします。
新生児の病的なうなり1. 「呻吟」
病的にうなる「呻吟」とは、あまりに呼吸が苦しいために、赤ちゃんが自ら気管に圧力をかけて呼吸の状態を少しでも良くしようとしている時に聞かれる呼吸音です。呻吟の特徴は以下の通りです。
・「あ~」「う~」ではなく「ぎ~」「じ~」というような音
・息を吐くときに聞こえる音
・呼吸の度に毎回聞こえる「じ~~~、ぎ~~~」という呼吸音
・呼吸の回数自体が普段よりも多い
新生児の病的なうなり2. 「喘鳴」
「喘鳴」は、気管支や喉(のど)など空気の通り道である、「気道」が狭くなっているときに聞こえる呼吸音です。
■息を吐くときの「ゼーゼー」「ヒューヒュー」という呼吸音
この時は「ゲホゲホ」「ゴホゴホ」というような湿った咳を伴う
■息を吸うときの「ボー」「オー」という呼吸音(オットセイの鳴き声に例えられたりします)
この時は「ケンケン」「コンコン」というような乾いた咳を伴う
病的なうなり1.「呻吟」も2.「喘鳴」も、赤ちゃんにとっては病院を受診した方が良い状態です。もしもさらに下記のような状態が見られる場合は、急いで小児科や救急センターを受診することをお勧めします。
・胸やお腹がベコベコと凹んだり戻ったりしている(陥没呼吸)
・顔色が悪く、ぐったりしている
・ミルクやおっぱいを飲まない
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新生児の赤ちゃんがうなる理由5つ
新生児の赤ちゃんの、病的ではないと思われる「うなり」には下記のような状態が考えられます。
新生児がうなる理由1. レム睡眠時の発声
赤ちゃんの睡眠リズムは、1歳頃にかけて徐々に成長していきます。産まれたばかりの新生児期は1日の半分以上眠っています。「昼間は起きて、夜眠る」という眠りのリズムもありませんので、1~2時間毎に「起きる」「眠る」を繰り返します。このような睡眠を多相性睡眠と呼びます。
また眠っている時は、夢を見ている「レム睡眠」と、レム睡眠ではない「ノンレム睡眠」が周期的に繰り返されます。赤ちゃんは「レム睡眠」の割合が多いといわれています。きっと楽しい夢をみていることが多いのでしょうが、眠りが浅くなって覚醒が近づいたときやウトウトして寝ぼけているときには、寝言のような発声をすることがあります。これが、うなっているように聞こえる場合があります。
新生児がうなる理由2. ミルクや母乳の飲みすぎ
新生児はミルクや母乳を飲みすぎてしまうことも。ミルクや母乳の飲み過ぎで、お腹が苦しいときにも新生児はうなる可能性があります。
新生児がうなる理由3. ゲップを出したい
ミルクや母乳を飲んだあとに、ゲップがたまっているとうなるような声を出す場合があります。ゲップを出してほしいと、まわりにサインを出しているのかもしれませんね。
新生児がうなる理由4. うんちをうまく排泄できない
うんちが溜まっていきんでいるときや、うんちが硬くてうまく排泄できない場合にも新生児はうなることがあります。お腹にガスが溜まっていて苦しいときにも、おならを出したくて、いきんでいる可能性があります。
新生児がうなる理由5. 発声して楽しい
体を動かしたりした時に偶然声が出て、自分の声に興味を持つことがあります。発声するのが楽しくて、うなるような声を出している場合があります。
苦しそう!新生児の赤ちゃんがうなるときの対処法
それでは新生児期の赤ちゃんがうなっているとき、まわりはどのような行動をとればよいのでしょうか。赤ちゃんがうなっているときの対処法について、原因別に解説していきます。
病的なうなりの場合
上記に述べたように、病的なうなりの場合は、小児科や救急センターなどの医療機関を受診しましょう。
ゲップを出したくてうなるとき
赤ちゃんを膝の上に座らせて、前かがみにして背中を軽く叩いてあげましょう。また赤ちゃんの顎を肩に乗せるように抱っこして、背中を軽く叩いてあげるのもおすすめです。
背中を軽く叩く以外にも、背中を下から上へゆっくりと優しくさすることでゲップが出る場合があります。ミルクや母乳の直後にゲップが出た場合でも、時間が経ってからまた空気がたまることもありますので、苦しそうな場合にはもう一度ゲップを出してあげましょう。
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飲みすぎでうなるとき
前述したように、新生児はまだ消化器系の機能が整っていないです。母乳やミルクを飲みすぎてしまうのは、赤ちゃんにはよくあることです。
新生児期の哺乳量は
1日当たり:体重(kg)×200ml
までにするのが一つの目安になっています。
(例)体重3kgであれば、3kg×200ml=1日トータルで600mlまで
1日の哺乳量を哺乳回数で割ると、1回当たりの哺乳量の目安が分かります。
(例)体重3kgで8回哺乳であれば、600ml÷8回=1回哺乳量は75ml
赤ちゃんの1回の哺乳量がわからずに心配な場合には、かかりつけの小児科医や保健センターで哺乳量を測ってもらうことをおすすめします。
希望する場合には、哺乳量の測定が可能かどうか、かかりつけの小児科医や保健センターに連絡してみましょう。また、新生児用の体重計を借りられるレンタル会社もありますので、そちらを利用することも可能です。その場合には、授乳前と授乳後の赤ちゃんの体重を測り、引き算をして哺乳量を出しましょう。2回の体重測定の間におむつ交換や着替えをしてしまうと、正確な哺乳量がわかりません。おむつ交換や着替えはしないように気をつけてくださいね。
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うんちが溜まってうなるとき
赤ちゃんの排便の回数には個人差があります。新生児は生まれてから徐々にうんちをまとめて排泄できるようになってくるので、うんちの回数は減ってくるのが一般的です。2~3日に1回しかうんちが出ていなくても、うんちの量があって機嫌がよく、うんちが柔らかければ問題ありません。
便秘しがちな場合には、赤ちゃん用の綿棒を、綿棒の綿球が隠れるぐらいまで肛門へ綿棒を挿入して刺激してみましょう。綿棒を深くまで挿入してしまうと、肛門内を傷つけてしまう可能性がありますので、必ず綿球が隠れる程度まで挿入するようにしてください。
また十分に水分を摂ることも大切なので、ミルクや母乳をしっかりとあげましょう。
もしもうんちに血が混じる場合、点状の赤い血なら様子を見ます。そしてそれが続くようなら受診しましょう。うんち全体がイチゴジャムのように赤かったり、赤黒かったりする場合は、腸重積という病気の場合があります。緊急疾患の一つですので、うんちのついたオムツを持参して、直ちに医療機関を受診して下さい。
その他には、お腹のマッサージもおすすめ。おへその周りを時計回りに優しくさすってあげると、腸の動きがよくなり、おならやうんちが出やすくなると言われています。肛門の刺激やお腹のマッサージをしても排便が全く出ず、食欲不振や嘔吐などの他の症状が伴う場合には、かかりつけの小児科医に相談してみましょう。
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発熱でぐったりしてうなるとき
発熱でぐったりしている場合や、ミルクや母乳を飲めない場合にも、速やかにかかりつけの小児科医を受診しましょう。新生児~生後3ヶ月までの赤ちゃんは、ママのお腹の中にいたときに蓄えた免疫力に守られているため、普通は発熱しません。
逆に言うと、生後3ヶ月以内の赤ちゃんが発熱した場合は、医療機関を受診する必要がある状態と言えます。生後3ヶ月を過ぎてくると、ママからもらった免疫力もパワーが落ちてくるので、風邪などの発熱をするようになります。
赤ちゃんが水分を摂れて元気であれば、経口補水液の投与やクーリング(背中や脇の下などを冷却まくらなどで冷やす)しながら様子を見てもらっても良いです。ただし月齢が小さいほど脱水症状になりやすいので、注意が必要です。
また発熱ばかりではなく呼吸が苦しそう、どこかが痛そう、などの症状が重なるときも受診の目安と言えます。また、日本人は熱性痙攣も多いです。白目が上を向いて、両手、両脚がガクガクと痙攣するような場合も、落ち着いてよく様子を観察してください。そして最寄りの医療機関や救急センター、#8000番などに連絡して、受診や救急要請の必要性やその後の対応を確認しましょう。

いつもと様子が違うとき
文章では説明しにくいのですが、毎日赤ちゃんを見ているママだからこそ、いつもと様子が違う、いつもとうなり方が違うなどと感じる場合があります。いつもと違って、なんとなくおかしいと感じた場合には受診を検討してみましょう。
《まとめ》
新生児の赤ちゃんがうなるような声を出す、はっきりとした原因はまだわかっていません。もしかすると赤ちゃんのうなりは、周りの人に何か気づいてほしいというサインなのかも。赤ちゃんがうなるような声を出しているときには、どんなことに気がついてほしいと思っているのか、しっかりと観察してあげてくださいね。
※写真提供:PIXTA
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資格
医学博士
日本睡眠学会専門医
日本アレルギー学会指導医、専門医
日本小児科学会指導医、専門医
略歴
1991年 静岡県立沼津東高校卒業
1998年 山梨医科大学(現山梨大学)医学部医学科卒業 同大学小児科入局
以後、山梨大学医学部救急部、山梨県立中央病院新生児科などの勤務を経て
2009年 小児科学講座助教
2014年 小児科講座学部内講師
2017年 杏嶺会一宮西病院 小児科部長
2023年 尾張こどもの睡眠・呼吸・アレルギークリニック開院・院長
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