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2022.05.30

産後の悪露とはいつまで?【産科医】産褥期の症状&過ごし方

産褥期とは、妊娠や出産で酷使した身体と心を休め、回復させるための期間。産後6~8週までをさします。産後の悪露はこの時期に排出され、身体が元の状態に戻るために、とても重要な役割を果たしています。今回は、産後の悪露の変化と終わる時期、注意すべき症状について、子宮の状態と合わせて理解を深めていきましょう。産褥期はどのようなことに気を付けるべきか、産褥期の過ごし方についても紹介します。

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悪露(おろ)とは産後の出血のこと

産後の悪露とは

 

悪露(おろ)とは、出産後に子宮内に残った胎盤の一部や、内膜、卵膜などの組織が血液と混ざった分泌物のこと。生理時の出血と似ています。

 

産後の悪露が排出される理由

妊娠して10ヶ月もの間、胎児を育てた子宮は、出産後に急速に元の状態に戻ろうとします。これを子宮復古といい、子宮内にたまっていた悪露を、子宮収縮により押し出そうとします。その時の陣痛のような子宮収縮の痛みは、後陣痛と呼ばれています。

この後陣痛は、悪露の排出を手助けします。さらに子宮内の傷ついた血管を修復し、止血する役割もあるのです。また後陣痛は、乳頭刺激によって促されるため、授乳後に痛みが強くなります。経産婦さんは子宮が伸びてしまっているため、元の状態に戻ろうとする力がさらに強くなったりします。

 

この悪露が何らかの原因で排出されずにいると、子宮内に溜まってしまい、そこから子宮内感染を起こしかねません。悪露が排出されているのは、順調に子宮復古が行われているということです。悪露の状態を知ることは、子宮復古及び、身体の状態を知ることにつながります。入院中に助産師が、悪露の量や色、子宮に触れて復古の状態を確認するのはこのためです。

 

 

産後の悪露とはいつまで続く?量や色の変化・おりものとの違い

産後の子宮復古にかかる期間は、おおよそ6~8週間と言われています。

その時期に、悪露の量や色は様々な変化を遂げて、やがて排出されなくなります。悪露が終わる時期は、基本的には産後1ヶ月後程度。ただし平均的な期間で終わる人もいれば、産後2ヶ月程度かかる人もいるため、個人差が大きいです。

では具体的に、産褥期における悪露の変化を見ていきましょう。

 

産後2~3日目の悪露

出産時に10cm開いた子宮口は、産後しばらくは閉じ切っていないため、多量に悪露が排出されます。組織の他に血液を多く含むので、色は赤色です。生臭い、鉄のような独特のにおいがし、形状はどろどろしていて、塊が出ることもあります。

 

産後5~8日目の悪露

産後5日目ごろから悪露の量は少しずつ減っていき、中等量程度になります。血液の中のヘモグロビンが変色し、茶色っぽい色になってきます。白血球が多く混ざっており、さらさらとした形状に変化していきます。

 

産後9~14日目の悪露

産後9日を過ぎると、子宮内膜がほぼ排出されて、出血も止まっていきます。黄色っぽいおりもののような状態に変化し、量もごくわずかとなります。

 

産後4週間頃の悪露

産後4週間ほど経つと、さらさらした白っぽいおりものに変化していきます。ごく少量で、そのまま悪露の排出は終了します。

 

 

産後の悪露で受診すべき症状!腹痛・赤い出血が減らないとき

受診すべき悪露

 

悪露は、産後の身体の状態を整える子宮復古のバロメーターです。産褥期は赤ちゃんのお世話で、自分のことまで手が回らないかもしれませんが、何よりママの身体を休めるべき時期です。もし血の塊が出たり、出血が大量だと心配になりますよね。以下のような場合は、すぐにかかりつけの産科医を受診しましょう。

 

受診すべき産後の悪露1. 悪臭がある

悪臭といっても色々ありますが、魚が腐ったような生臭い匂いと思ってもらえたらよいでしょう。そのような悪露が出た場合は、細菌感染を起こしている可能性があります。すぐに受診してください。膿のような悪露が出ることもあります。

 

受診すべき産後の悪露2. 腹痛や発熱がある

腹痛や発熱がある時は、子宮内感染を起こしている状態が考えられます。2日以上にわたり38度の発熱が続いた場合は、すぐに受診してください。

 

受診すべき産後の悪露3. 赤色の悪露が1~2週間以上続く

悪露の色は基本的に、子宮復古の状態によって、赤色→茶褐色→黄色→白色と変化していきます。

子宮復古には止血の役割もあります。そのため1~2週間も赤色の悪露が続いている場合は、子宮復古が順調に進んでいない可能性があります。子宮内の遺残物や子宮筋腫などが原因で、うまく子宮収縮が行われていないことが考えられます。

 

受診すべき産後の悪露4. 悪露が出ない

悪露が出ない場合は、子宮内に悪露が停滞している可能性があります。そのままだと子宮内感染の原因になるので、早めに悪露を排出する必要があります。かかりつけの産科医を受診して、すぐに確認してもらいましょう。

 

 

悪露のほかにも!産褥期に起こりやすい症状

産褥期は、身体が急速に非妊娠時の状態に戻ろうとする時期です。悪露以外の症状と、身体の変化を見ていきましょう。またこの時期に起こりやすい、マイナートラブルも紹介します。

 

後陣痛

先述したように、後陣痛と子宮復古、悪露は切っても切り離せない存在です。後陣痛は子宮復古を促すための痛み。初産婦さんよりも経産婦さん、単体妊娠よりも多胎妊娠のほうが、痛みが強い傾向にあります。

後陣痛は、授乳による刺激で強くなります。我慢できないときは、鎮痛剤を使用するとよいでしょう。少し落ち着くまでは、授乳をお休みする必要もあるかもしれません。

 

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乳汁分泌

出産を終えると、急速にホルモンバランスが変化。「プロラクチン」という乳汁産生のホルモンや、「オキシトシン」という射乳反射のホルモンが、分泌され始めます。それに伴い乳汁分泌が行われ、同時に乳頭刺激をすることで、さらに射乳反射を促します。

 

また出産後に乳頭を刺激すると、黄色いねばねばした乳汁が見られます。これは初乳と呼ばれ、タンパク質や免疫成分が多量に含まれており、生まれたての赤ちゃんにはぜひあげてほしいです。産後1週間程度で、成乳となります。

 

産褥初発排卵

産後の生理の開始には、個人差があります。はっきりとは言えませんがその時期は、完全ミルクの場合は産後約2ヶ月、母乳育児は産後半年から1年と言われています。

生理の前には排卵があり、産後初めての排卵を「産褥初発排卵」と呼びます。産後に生理を見ないまま次の妊娠をしてしまうことがあるのは、この産褥初発排卵のためです。

 

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便秘

産後に一番起こりやすいマイナートラブルといえば、便秘です。会陰切開の痛みによっていきむのが怖くなったり、授乳によってトイレに行くタイミングを失ったり、授乳によって身体の水分が失われたりするのも、便秘の原因となります。こまめな水分摂取を心がけ、食物繊維、乳酸菌の多い食事を意識的にとるようにしましょう。

 

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腰痛

出産時に赤ちゃんが骨盤内を通ることで、骨盤が歪んでしまうことがあります。また授乳の体勢で前かがみになるのも、腰痛を引き起こしてしまう原因。骨盤ベルトをして骨盤を支えると、痛みが楽になることがあります。

 

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マタニティブルー

産後3日目から10日頃に起こる、一過性の気分変調のことを「マタニティブルー」といいます。理由もなく涙が出てしまったり、落ち込んだり、急に不安になる状態で、産後の急なホルモンの変動が原因といわれています。症状が2週間以上続く場合は、「産後うつ」になる可能性があります。心療内科やかかりつけの産科医に相談しましょう。

 

 

大切な産褥期!回復を早める産後の過ごし方

先述したとおり、産後6~8週間は産褥期です。この期間をどのように過ごしたかによって、その後の疲労の程度が変わってきます。ここでは時期に応じた産褥期の過ごし方や、注意点について説明します。

 

産後2週間までの過ごし方

出産を終えた後、自然分娩の場合は5~6日、帝王切開の場合は6~10日程度は入院。身体を休める必要があります。この入院期間に、授乳指導や育児技術の習得、産後の処置や新生児のケアなどがあり、異常がないことを確認してから退院となります。

退院後も2週間程度は、基本的に寝たり起きたりの生活を心がけましょう。赤ちゃんのお世話と自分の体調を整えることを、第一に考えてください。

 

初産婦さんの場合は、慣れない育児で戸惑いを覚えることが多いもの。経産婦さんは、上の子のお世話もあります。体力的にも精神的にも、この産後2週間が一番辛いかもしれません。

なるべく赤ちゃんと一緒に、休むようにしてください。パパやお互いの両親の協力、そして社会資源を最大限に活用しましょう。まだ悪露が多く、産後のダメージが残っています。重いものを持ったり、動き回らないようにしましょう。

 

産後2~4週間の過ごし方

少しずつ赤ちゃんがいる生活に慣れてきて、体力も回復し始める時期でしょう。しかし無理は禁物です。簡単な料理や洗濯など、少しずつ増やしていきましょう。

 

息切れや疲労を感じたら、こまめに休憩したり、横になったりしてください。車の運転は、1ヶ月健診が終わるまでは避けましょう。昼夜問わず育児をしているので、ふとした気のゆるみが事故につながる可能性があります。健診などで出かけるときは、家族による運転もしくはタクシーを利用しましょう。

 

産褥期の過ごし方

産後5~8週間程度の過ごし方

1ヶ月健診で問題がなければ、元の生活に戻っても問題ありません。ただし、育児が本格的に始まっていくので、無理はしないように。気分転換に外出したり、暖かければ一緒にベビーカーで短時間のお散歩もいいですね。自分の体調と相談しながら、周囲のサポートも利用し、できることから始めましょう。

 

またこの頃、落ち着いていた悪露が再開することがあります。2~3日でおさまるようであれば、問題はありません。もし腹痛がある場合は、念のため病院で受診しましょう。

大量に出血したり、出血が長く持続する場合は、胎盤遺残の可能性も考えられます。必ず産婦人科を受診して確認してください。生理が再開している可能性もあります。

 

 

《まとめ》

 

悪露とは、産後の身体を知るためのとても重要なもの。その量や色などを、しっかりと観察するようにしましょう。産褥期は、妊娠・出産で疲労した身体を元に戻すための、重要な時期です。無理をせず家族のサポートを得ながら、ゆっくりと身体を休めましょう。

 

※写真提供:PIXTA

 

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1999年愛知医科大学卒業
その後大垣市民病院にて研修、勤務を経て安城更生病院へ赴任
2006年日本産婦人科学会産婦人科専門医取得
2008年やまだ産婦人科院長就任

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