臨月の「吐き気・気持ち悪い」原因3つ
臨月に感じる吐き気や気持ち悪さの原因は、妊娠の影響によるものが多く、正常であることがほとんどです。吐き気を感じる主な原因を3つ紹介します。
臨月の吐き気の原因1. 前駆陣痛
臨月に入ると本陣痛がくる前に、出産の準備として前駆陣痛が起こることがあります。前駆陣痛は不規則な子宮収縮であり、規則的で痛みのある本陣痛とは明らかに違います。時間や間隔もバラバラで、これは本陣痛の前の練習ととらえると想像しやすいかもしれません。この前駆陣痛によって、軽い腹痛の他に腰痛や胃痛・脚の付け根の痛み・吐き気・嘔吐を伴うことがあります。
臨月の吐き気の原因2. 胃腸の圧迫
妊娠後期になって、大きくなった子宮は胃腸を圧迫します。それにより胃腸の調子が悪くなるため、食欲不振・消化不良などを起こして吐き気を催したり、実際に嘔吐したりする妊婦さんもいます。出産が近くなって胎児が下がってくると、子宮による胃腸への圧迫が少なくなり、逆に胃腸がすっきりして食欲が増す妊婦さんが多いです。
臨月の吐き気の原因3. ホルモンの影響
胎盤が完成すると、胎盤から妊娠を継続させるための黄体ホルモンの分泌が次第に多くなっていきます。この黄体ホルモンは別名プロゲステロンといい、子宮が大きくなるのを助けるために、胃腸などの消化器系の作用を緩める働きがあります。結果として胃腸の運動も弱まって、胃酸や胃内容物の逆流が起こり、吐き気や嘔吐をもたらす原因となってしまうのです。
吐き気・気持ち悪さが「陣痛の兆候」である可能性は?
臨月における吐き気や気持ち悪さが、陣痛の兆候である可能性はゼロではありません。前駆陣痛が起こると、痛みによって交感神経が緊張し、カテコラミンという神経伝達物質が増えます。カテコラミンが胃や腸などの消化管の反射性痙攣を引き起こし、吐き気や気持ち悪さが生じることがあります。
妊娠中に吐き気や気持ち悪さの症状が出た時は、下腹部の痛みの有無を観察してください。周期的な痛みが繰り返される場合は、前駆陣痛や本陣痛かもしれません。ただし、胃やみぞおちの強い痛みがずっと続くような場合は、重大な疾患も疑われるため、すぐにかかりつけの病院に連絡してください。
吐き気や気持ち悪さは、陣痛の兆候として多いものではありません。陣痛が起きる前の自覚症状として、主なものは下記のとおりです。
【陣痛が起きる前の自覚症状】
赤ちゃんが降りてきた感じがする
前駆陣痛
産徴(おしるし)がある
頻尿になる
胎動が減少する
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臨月の「吐き気・気持ち悪さ」で注意する病気
臨月の吐き気は妊娠によるものがほとんどで、特に問題ないものが多いですが、まれに妊娠による合併症が隠れていることがあります。注意すべき症状や受診の目安を紹介します。
逆流性食道炎(吐き気や胸やけ)
黄体ホルモンであるプロゲステロンの影響で、吐き気が起こりやすいことは先述しました。これは下部食道括約筋の緩みによりますが、胃酸が食道へ逆流する「逆流性食道炎」を引き起こすことがあります。
・吐き気
・胸やけ
・喉やけ
・口やのどまで酸っぱい液がこみあげてくる呑酸(どんさん)
このような症状が見られたら、早めにかかりつけの産科医を受診しましょう。
妊娠高血圧症候群(吐き気や頭痛)
「妊娠高血圧症候群」は、妊娠合併症の中で特に注意しなければいけない病気の一つです。妊娠後期になると血圧が急に高くなることがあり、その症状として吐き気や嘔吐、頭痛などが生じます。
妊娠高血圧症候群には2種類あります。妊娠中に血圧が高くなる「妊娠高血圧症」、高血圧・蛋白尿・腎障害・赤ちゃんの発育遅延などが起こる「妊娠高血圧腎症」です。妊婦健診で血圧の高さが指摘されたら、これらの症状に注意しましょう。
HELLP症候群(吐き気・胃痛)
血液中の赤血球が破壊され肝機能異常をきたし、血小板減少を伴う病気で、その英語の頭文字をとって「HELLP(ヘルプ)症候群」といわれています。妊娠高血圧症候群と関連があるともいわれていますが、詳しい原因はわかっていません。吐き気や嘔吐、胃痛やみぞおちの痛みを訴えることが多いです。母子共に命に関わる病気なので、これらの症状があればすぐにかかりつけの産科医を受診してください。
ウイルス性腸炎(吐き気・下痢)
妊娠中は免疫力が低下し、感染症にかかりやすい状態です。流行性のものや、子どもからうつされたりするものも少なからずあります。嘔吐や吐き気、下痢など消化器系の症状が現れたら早めに受診しましょう。
吐き気に加えて鋭い痛みの胃痛や頭痛がある、寒気や冷や汗などが現れたら、できるだけ早くかかりつけの産科医を受診するようにしてください。また呼吸困難感・顔面蒼白・胎動が少なくなる症状などが伴うようであれば、救急車を手配することも検討しましょう。
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臨月の吐き気を解消する方法
妊娠の経過による吐き気は出産に備えて起こるものなので、すべてを取り除くのは難しいですが、軽減することはできます。
臨月の吐き気の解消法1. 自律神経を整える
自律神経が整っていないと、消化器系にも大きな影響を与えます。臨月になると寝返りをうつのも大変です。特に上にお子さんがいる場合は、体力や気力が休まるときもなく、大変な日々を過ごすかもしれません。
自律神経を整えるには良質な睡眠をとることが一番ですので、睡眠がよく取れるように工夫をしましょう。テレビや携帯などから一時期離れ、好きな音楽を聴いたり、趣味を楽しんだりして気持ちを落ち着かせ、夜は早めに休むようにしましょう。アロマをたいたり、寝るときの体勢を考えたりして工夫するのもいいですね。
「無事に赤ちゃんを産めるかな?」とそわそわする気持ちもわかりますが、出産は必ず迎えますので、気持ちをゆったりもってのんびり過ごしましょう。
臨月の吐き気の解消法2. 食後はすぐ横にならない
吐き気があるとすぐに横になりたくなるかもしれません。しかし食後にすぐに横になると重力によって胃が圧迫され、胃酸が逆流してくることもあり、逆流性食道炎の原因になります。2時間ほどは上半身を起こしておき、できるだけ横にならないようにしましょう。また就寝中は消化が進まないため、就寝3時間前はできるだけ食べないようにしてください。
臨月の吐き気の解消法3. 身体を締め付けない
ワイヤーの入ったブラジャーなどのきつすぎる下着は、リラックスできずに吐き気や嘔吐を増幅させる原因になってしまいます。臨月になると胸のサイズもアップし、お腹も大きくなります。今一度、自分の服装がリラックスできるようなものか見直してみるのもいいですね。
臨月の吐き気の解消法4. 食事に気を付ける
食事について気を配ることで吐き気を予防したり、軽くしたりすることが可能です。自分がどの食べ物を食べたときに吐き気が起こりやすいか、どのような状況で吐き気が強くなるか考えてみましょう。
臨月の吐き気の解消法5. 適度な水分摂取
嘔吐が続いている時は、脱水予防のために適度な水分補給が重要です。吐き気がひどく水分をとるのが難しい場合は、氷を口に含めておくのも有効です。
臨月に「吐き気・気持ち悪い」ときは食べ物に注意
前述したように臨月で吐き気がある場合、食事の工夫で症状が軽減することがあります。避けた方がいい食べ物や、食事の摂り方を紹介します。
甘い・脂っこいものを避けよう
・甘いもの
・脂っこいもの
これらは胃酸を増やすので、避けた方がいいでしょう。匂いの強いものも吐き気を増幅させます。また炭酸飲料は逆流を起こしやすいので、吐き気が起こりやすい後期は避けましょう。冷たい飲み物、食べ物は胃に負担がかかり、胃痛を引きおこす原因となるので注意が必要です。
こまめに少量ずつ食べよう
吐き気や胸やけを抑えるためには、1回の食事量を少量ずつにし、よく噛んで食べ、その分回数を増やすことをおすすめします。一度に大量の食べ物を食べてしまうと、胃酸がたくさん出てしまい、胃を刺激し吐き気、嘔吐の原因になります。
空腹になりすぎると胃に負担がかかるので、食事は5~6回程度こまめに少量ずつ摂取するとよいでしょう。食前30分と食後3時間は、嘔吐の原因になるので、大量の水分はとらないように気を付けてください。だらだら食べも胃に負担をかけるため、できるだけ避けましょう。
臨月のママからよくある質問
臨月の吐き気や嘔吐について、よくある質問に回答していきます。
Q. つわりは終わったはずなのに、妊娠後期からずっと気持ち悪いのはなぜ?
-
- 子宮が胃腸を圧迫すること、胃腸の運動が弱まることが原因と考えられます。
- 妊娠後期からずっと続く気持ち悪さは、ほとんどが妊娠の影響によるものです。妊娠の維持に必要なホルモンは、胃腸の動きを弱めてしまい、胃酸や胃内容物の逆流が起こり、吐き気や嘔吐をもたらす原因となります。また妊娠後期に子宮が大きくなると、胃腸が圧迫されて胃腸の調子が悪くなりやすいです。出産の準備が始まり、赤ちゃんの位置が下がってくると、圧迫が弱まりスッキリしてくる妊婦さんも多いです。
Q. 陣痛が来た日はどんな前兆がある?
-
- 前駆陣痛やおしるしがあります。
- 本陣痛が来る直前に自覚しやすい兆候は、前駆陣痛やおしるしです。他には赤ちゃんが下がり胃がスッキリして呼吸しやすくなる感覚や、腰痛の出現、胎動の減少を感じることがあります。
《まとめ》
臨月の吐き気は妊娠によるものが多く、前駆陣痛の可能性もあります。食事や生活習慣を工夫することで、吐き気は軽減することが多いです。ただし大きな病気が隠れていることもありますので、気になることがあればかかりつけの産科医を受診するようにしてください。
※写真提供:PIXTA
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ママのお悩みの声
逆流性食道炎?後期つわり?胸やけがとまらない
臨月に吐き気とゲップが頻繁に出てつらい
1999年愛知医科大学卒業
その後大垣市民病院にて研修、勤務を経て安城更生病院へ赴任
2006年日本産婦人科学会産婦人科専門医取得
2008年やまだ産婦人科院長就任
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