母乳育児のメリットとは?
「母乳が良いとは聞いてはいるけれど、何がどう良いのかわからない」というママは多いのではないでしょうか。母乳育児は、赤ちゃんにとってはもちろん、ママにもメリットがたくさんあります。
母乳は血液からできている
母乳は、全身を流れている血液から作られています。赤い血液が、様々なホルモンが複雑に作用することによって、乳白色の母乳に変化します。母乳のおよそ80%が水分、10%が乳糖、5%が脂肪、残り5%がオリゴ糖とタンパク質でできています。
ママが食べた食事がそのまま赤ちゃんに行くわけではありませんが、ママの血液は食べ物をもとに作られます。血液をドロドロにしてしまう砂糖や脂肪は控えて、水分をたっぷり摂り、タンパク質を多く含む魚や肉や豆、ビタミンやミネラルの豊富な野菜やナッツなど、健康的なものを摂取するよう心がけたいですね。
【母乳育児のメリット】1. 母乳の成分は赤ちゃんに合わせたオーダーメイド
母乳の優れているところは、生まれた赤ちゃんの状況に合わせて母乳の成分が変化することです。予定よりも早く生まれた赤ちゃんのママの母乳は、正常な時期に生まれた赤ちゃんのママの母乳に比べて、タンパク質や抗体の割合が高いことがわかっています。
また、赤ちゃんの成長に合わせて、脂肪やタンパク質の割合が変化していきます。その子に一番適した母乳成分となるよう、自動的に計算されているなんてすごいことですよね。常に一定成分のミルクとの大きな違いです。
【母乳育児のメリット】2. 赤ちゃんの病気リスクを下げる
現在、赤ちゃんにとって母乳は本当にたくさんのメリットがあると医学的に証明されています。
・SIDS(新生児突然死症候群)のリスク:36%低下
・胃腸炎のリスク:39~65%低下
・小児肥満のリスク:36%低下
・アトピー性皮膚炎、喘息、アレルギー性鼻炎のリスク:26~32%低下
・認知能力、IQが、母乳で育つ期間が長いほど高くなる
母乳育児は、成人してからの血圧コントロール、肥満や糖尿病予防の効果があるという研究結果もあるほどです。
【母乳育児のメリット】3. ママの産後の回復を促進
母乳育児はママにとってもたくさんのメリットがあります。
・産後の出血を少なくする
・子宮の戻りを良くし、体重を減らす
・月経再開の時期が遅れる
・粉ミルクの購入代が削減できる
・産後うつ、2型糖尿病、高血圧、心疾患、高脂血症、閉経前乳がん、卵巣癌、子宮体癌、骨粗しょう症、アルツハイマー病などのリスク低下
授乳中だけではなく、その後のママの健康にも良いといわれています。
母乳育児の準備!妊娠中からのマッサージ&おっぱいケア
母乳育児が最高のスタートをきれるよう、妊娠中に準備できると良いですね。
乳頭のケア
現在、妊娠中の乳房マッサージはしない方が良いと言われています。ただ、乳頭の形によっては妊娠中にケアしておいた方が良い場合があります。
どんな乳頭でも母乳育児は可能
扁平乳頭といって乳頭の高さがない場合や、陥没乳頭といって乳頭が内側に入り込んでいる場合、母乳をあげられないのではないかと心配するかもしれません。
しかし、どんな乳頭でも母乳育児は可能です。ママが授乳のコツを覚えて練習することで、大抵の赤ちゃんは上手に吸ってくれるようになります。
妊娠中、乳頭を柔らかくして引き出すマッサージをしたり、専用の器具を使うと良いでしょう。マッサージの方法は乳頭の形によっても違いますので、助産師に教えてもらいましょう。
「ブレストシェル」というドーム型の器具は、自然な陰圧で乳頭を引き出してくれるのでおすすめです。乳頭をマッサージすることでお腹が張ってしまうことがあるので、やり過ぎは禁物です。赤ちゃんが生まれても問題ないとされている、妊娠37週以降から始めると安心です。
固執しないで!無理をしない母乳育児
母乳育児は1~2時間おきに授乳があり、24時間態勢での育児ですから大変だと感じるのも事実です。それでも赤ちゃんのために母乳で育てたい!と決意して頑張るママ、本当に素晴らしいです。ただ、母乳育児にこだわりすぎて、辛い育児になってしまったら悲しいですね。
あれを食べてはダメ、これをしてはダメ、ミルクは絶対にダメ、というように、自分や赤ちゃんをルールでがんじがらめにしてしまうママや、赤ちゃんの体重がなかなか増えなくて母乳が出ない自分を責めるママもいます。
「母乳育児ができない私は母親失格」、そんな風に思わないでください。一滴でも母乳をあげられたら、それは母乳育児です。授乳に疲れたら、ちょっとおやすみしてミルクでもいい、たまには美味しいスイーツを思いっきり食べて自分にご褒美をあげてもいいのです。
ママが笑顔で毎日楽しく育児できることが、赤ちゃんにとって何より大切なこと。自分らしくマイペースにできることを続けるのが母乳育児を成功させるコツです。
《まとめ》
赤ちゃんにもママにも、たくさんのメリットがある母乳育児。助産師に相談しながら、妊娠中からできるケアで準備をしておきましょう。母乳育児は少し大変なこともありますが、授乳の時間は何より愛おしい幸せな時間です。母乳だけに固執することなく、無理せず自分のペースで楽しんで続けられると良いですね。
※写真提供:PIXTA
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1999年愛知医科大学卒業
その後大垣市民病院にて研修、勤務を経て安城更生病院へ赴任
2006年日本産婦人科学会産婦人科専門医取得
2008年やまだ産婦人科院長就任
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