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2022.09.02
妊婦に湿布は大丈夫?使える湿布とダメな成分とは【助産師】
妊娠中の腰痛や肩こりは、とてもつらいですよね。ホルモンバランスの変化や、大きなお腹による重心の変化から、腰痛や肩こりが出やすい状況にあります。普段なら湿布を使うこともあるでしょうが、妊娠中は湿布を使っていいのか不安に思いますね。ここでは助産師が、妊娠中の湿布は大丈夫なのか、使える湿布とダメな湿布の成分について、解説していきます。また湿布以外でできる、腰痛・肩こり対策も紹介します。
目次
妊婦さんは湿布を使っても大丈夫?胎児への影響は?
妊娠の影響から、腰痛や肩こりが起きやすい状態です。非妊時であれば気軽に使用できる湿布ですが、妊娠中は注意が必要です。
妊娠中の湿布による胎児への影響
湿布には、肌を通して薬剤が吸収され、効果を発揮する作用をもっています。
湿布に含まれる成分の中では、お腹の赤ちゃんの健康に影響を及ぼしてしまうものも。解熱・鎮痛・消炎成分として使用される、「非ステロイド抗炎症剤(NSAIDs)」を含むものは注意が必要です。
妊婦さんの肌を通してNSAIDsが体内に入ると、胎盤を通して赤ちゃんに送られます。この成分は赤ちゃんの動脈管を収縮させ(動脈管早期収縮といいます)、腎機能低下、それによる羊水過少を引き起こす可能性があります。そのため妊娠中の使用は禁忌となっています。
湿布が必要な時は必ずかかりつけの産科医に相談し、妊婦さんに安全なものを処方してもらってください。
湿布以外のテープや軟膏、クリームなども、まずは使用前に相談するのがいいでしょう。特に妊娠中期~後期における使用は、赤ちゃんに影響を与えやすいといわれています。
妊娠中に腰痛・肩こりになりやすい原因とは
妊娠中は、「リラキシン」という関節を柔らかくするホルモンが分泌されます。またお腹は大きくなって、重心が前方に変化することで、身体全体に負荷がかかっている状態です。さらに妊娠後期になると、出産準備として骨盤も緩んできます。これらから、妊婦さんは腰痛に悩まされることが多くなるのです。
それから妊娠中は、お腹が大きくなることで腰が反りやすくなります。身体のバランスを保つために肩が内側に入り、首が前に出るようになってストレートネックを引き起こすことも要因です。
本来なら頸椎は緩やかにカーブしているのですが、ストレートネックによってまっすぐになってしまいます。そして首が痛くなったり、肩こりが生じやすくなります。妊娠中に胸が大きくなっていくことも原因の一つです。
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妊婦さんが湿布を使用する時の注意点
妊婦さんが自己判断で湿布薬を使用するのは、絶対に避けてください。妊娠中の腰痛・肩こりに使用する湿布の処方に関しては、整形外科ではなく、かかりつけの産科医に必ず相談しましょう。
要注意!湿布の成分「NSAIDs(非ステロイド性抗炎症剤)」
「NSAIDs(エヌセイズ)」は「非ステロイド性抗炎症剤」の総称で、湿布に含まれていることがあります。痛みや炎症を鎮めてくれる、非常に効果的な薬ですが、妊婦さんが使用すると胎児に影響を及ぼす可能性があります。特に、妊娠中期~後期はさらに注意が必要です。
たとえば先述した、胎児の動脈管早期収縮は最も注意すべき副作用です。妊娠中の場合、赤ちゃんは肺を経由せず、動脈管を通して全身に血液を送ります。
通常は出生後にこの動脈管が閉じて、肺を経由するようになります。しかしNSAIDsの影響を受けた場合、出生前に閉じてしまうことがあるのです。すると肺への血液の流入が始まり、肺や心臓への負担が大きくなって、赤ちゃんの命に関わる危険もあり得ます。
NSAIDsには、「ロキソプロフェン」「ケトプロフェン」「インドメタシン」「フェルビナク」「ジクロフェナク」などがあります。もし手持ちの湿布や軟膏があれば、これらの成分が含まれていないかを確認しておきましょう。
またNSAIDs以外にも、様々な成分が赤ちゃんに影響を及ぼすことがわかっています。安易な湿布の使用は避けなければいけません。
妊婦さんOK!妊娠中も使用できる湿布
安易な湿布の使用は避けるべきですが、なかには妊娠中に使用できる湿布もあります。比較的安全な成分は、「アセトアミノフェン」「サリチル酸メチル」です。市販薬としても購入可能ですが、必ず薬剤師に確認を取りましょう。
なお、薬剤成分の含まれていない冷湿布や温湿布は、日常的に使用しても問題ありません。
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妊娠中「うっかり湿布を使ってしまった」時の対処法
前述したように、妊娠中期~後期における湿布の使用は、赤ちゃんに重大な影響を及ぼす可能性があります。しかしそれを知らずに、うっかり湿布を貼ってしまうこともあるかもしれません。
もし妊娠に気づいていたら、すぐに湿布の使用を中止し、貼った湿布の成分を必ず確認してください。NSAIDsが含まれている場合は、かかりつけの産科医に相談しましょう。妊娠前から日常的にNSAIDsを含む湿布を使用していて、その後妊娠に気づいた場合も同様です。
そして非妊時に使用していた湿布の残りは、間違って使用しないように破棄しましょう。
湿布以外で!妊婦さんが腰痛・肩こりを緩和させる方法
妊娠中の腰痛や肩こりについて、湿布以外で対処するセルフケア方法を紹介します。
腰痛・肩こりのケア1. ホットタオル&カイロ
肩こりや腰痛の原因は、血流の悪さにあります。濡らしたタオルをレンジで温めて肩にあてると、じんわり温かさが広がり、とてもリラックスできますよ。血流もよくなるので、こりも和らぎます。
腰痛には貼るカイロもおすすめです。ただし熱さを我慢して使用していると、低温火傷の危険がありますので、長時間の使用は避けましょう。
腰痛・肩こりのケア2. ストレッチ&マタニティヨガ
筋肉をほぐすストレッチやマタニティヨガは、肩こりや腰痛・恥骨痛にも効果的です。妊娠中期になり体調が安定したら、ぜひストレッチやマタニティヨガを取り入れてみましょう。身体を動かすことで気分もすっきり、リフレッシュの効果もあります。
ただし、切迫流産・切迫早産の診断を受けている場合は禁忌です。
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腰痛・肩こりのケア3. 意識的に身体を動かす
妊娠中はマイナートラブルで身体は思うように動かず、気分がふさぎこみがち。SNSの普及により、スマートフォンやパソコンを長時間使用することもあるでしょう。
身体を動かさなければ、肩こりや腰痛も悪化し、悪循環に陥りがちです。体調がよければ散歩など、日常的に身体を動かしてみましょう。血流もよくなって、痛みが軽減することもありますよ。
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《まとめ》
妊娠の影響で腰痛や肩こりが出現し、辛い妊婦さんも少なくありません。湿布薬の成分には、赤ちゃんによくない影響を及ぼす可能性があります。湿布など外用薬、内服薬の使用については、自己判断はせずに、かかりつけの産科医に相談しましょう。すぐにでも使用したい場合は、赤ちゃんに影響の少ない湿布について、薬局の薬剤師に確認してくださいね。
※写真提供:PIXTA
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監修者
1955年に日本助産師会東京都支部として、助産師相互の協力と助産専門職の水準の維持向上並びに利用者に対する質の保証を図り、母子保健事業を通じ、女性と子ども及び家族の健康・福祉の改善・向上に貢献することを目的として活動を開始。
2010年一般社団法人格を取得。
2014年公益法人となり、地域に根差した公共性の高い事業に取り組んでいる。
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