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2021.07.23

湿布は使ってOK?【産科医が解説】妊婦さんの腰痛の原因・対処法

妊娠中期のマイナートラブルで一番よく聞くのは腰痛です。妊婦さんの腰痛の原因とその対処法について説明します。また腰痛に湿布を使ってもよいのか、NGな湿布と使用可能な湿布の成分についてまとめました。

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妊婦さんの腰痛の原因

妊婦の湿布

 

妊婦さんの腰痛は、お腹が大きくなる妊娠中期頃から現れてくることが多いです。腰痛の主な原因は以下の通りです。

 

腰痛の原因1. 妊娠中に分泌されるホルモン

妊娠中は女性ホルモンであるエストロゲン、プロゲステロン、リラキシンの分泌が増加していきます。これらのホルモンは骨盤の関節や靭帯を緩め、赤ちゃんが通りやすくする準備をするためのもの。

骨盤の繋ぎ目の関節で仙腸関節というお尻に近い部分がありますが、その関節が緩んで大きくなった子宮に押されることで腰痛が引き起こされます。

 

腰痛の原因2. 重たいお腹で反り腰姿勢

妊婦さんは子宮が大きくなることで、筋肉やそれを包む筋膜が伸び、体幹を支える力が弱くなります。また、体全体のバランスを取るため背骨を必要以上に反らす姿勢になりやすいため、筋肉に負荷がかかり腰痛を引き起こすのです。

 

腰痛の原因3. 血流が滞る

妊娠中に分泌されるリラキシンというホルモンは、骨盤の関節を緩める作用以外にも骨盤内に血液を溜める作用もあります。そのため血液の流れが滞りやすく、腰が重く感じる人もいます。

 

また妊婦さんは子宮が大きくなることで、下大静脈という太い血管を圧迫しやすくなります。そのため下半身への血流が滞りやすく、冷えにもつながります。下半身が冷えることでより血流が悪化し、骨盤周りに血液がうっ滞することで腰痛が引き起こされるのです。

 

妊婦さんにとって危険な腰痛もある

上記の理由からくる腰痛であれば対処法で楽になりますが、それ以外のことが原因で腰痛を引き起こしている場合もあるので注意が必要です。

 

切迫早産

 

なんらかの原因で子宮収縮が促され、正常な出産時期よりも前に赤ちゃんが産まれてしまいそうになることを切迫早産と言います。

この切迫早産の症状の一つに腰痛があります。お腹が硬くなるのと同時に腰痛が何度か出現し、数分間隔で痛みが現れたり消えたりするときはかかりつけの病院に相談しましょう。

 

常位胎盤早期剥離

 

出産前に胎盤が剥がれてしまい、赤ちゃんや妊婦さんの命が危険にさらされる病気が常位胎盤早期剥離です。この症状の一つに腰痛があります。息ができないくらいの痛みの場合はすぐにかかりつけの病院を受診しましょう。

 

腎盂腎炎

 

子宮が大きくなることで尿管が圧迫され、尿の流れが悪くなり腎臓が炎症を起こしてしまう病気が腎盂腎炎(じんうじんえん)です。この場合は、左か右どちらかに偏った痛みがあります。

またゲンコツでお尻の上あたり左右どちらかを叩くと、響くような強い痛みが走ります。腎盂腎炎は妊娠中に何度か繰り返す人が多い病気ですから、注意しましょう。

 

 

普段からできる妊婦さんの腰痛対処法

腰痛を少しでも軽減するため、妊婦さんが普段の生活の中でできることをまとめました。

 

骨盤高位体操と骨盤ベルト

妊婦さんの子宮の重みが腰痛を引き起こしている場合は、体操で子宮を正しい位置に持ち上げ骨盤ベルトで支えるのが効果的です。

 

【骨盤体操の基本】

 

骨盤体操 

・足を肩幅くらいに開いて、膝を立てて仰向けになる。

・10cmくらいの厚さのクッションやバスタオルを丸めたものを、お尻の下に敷く。

・足の裏が床から離れないように気を付けて、膝を左右に5〜10分くらいゆっくり揺らす。

 

【骨盤ベルトは正しい位置につける】

 骨盤ベルト

 

・骨盤体操をした後にお尻の下のクッションを外し、腰を浮かせた状態でベルトを装着する。

・恥骨結合(アンダーヘアが隠れるくらいの場所)にベルトをかける。

・ウエスト側面からまっすぐ手を下ろしていくと、大転子という足の付け根の骨に触れるので、そこにベルトがかかるようにする。

実際に助産師さんなどに付け方を教えてもらいましょう。

 

正しい立位を保つ

腰をそらさないように、下腹部に力を入れてまっすぐ立つようにしましょう。壁に背をむけて両肩、お尻、かかとをつけて立ってみると、正しい立位がわかります。また、ダイエットスリッパ(かかとがないスリッパ)や3cmくらいのヒールのある靴を履くと、簡単に正しい立位が保てます。

 

左右どちらかにお尻を傾けて座る横座りや、スマホ首といって頭を前屈させた姿勢は腰痛を悪化させる原因なのでやめましょう。床に座るのであれば、正座かあぐらがおすすめです。スマホを見る時間を制限したり、首が前屈しないような持ち方ができるとよいですね。

 

入浴で全身の血流を良くする

全身の血流を促すために、シャワーではなく湯船に浸かりましょう。湯船に浸かって腰の痛い部分の周りをマッサージするとより効果的です。

 

 

妊婦さんは腰痛での「湿布」には注意

湿布は痛み止めの成分が入っている貼り薬です。内服の薬と同じように、妊婦さんが自己判断で使用するのは危険が伴います。

 

湿布は赤ちゃんの心臓に影響するリスク

湿布の種類によっては妊娠中に使用すると、特に妊娠後期で赤ちゃんの心臓の動脈管収縮、羊水減少を起こすことがあります。

 

妊娠中に使用してはいけない湿布の成分

 

・ロキソプロフェン

・ケトプロフェン

・インドメタシン

・ジクロフェナクナトリウム

・ニプロパッチ

 

妊娠中に使える湿布の成分

 

・アセトアミノフェン

・サリチル酸メチル

 

湿布も薬の一種です。市販・処方されたものに関わらず、必ず医師や薬剤師に相談してから使用しましょう。

 

 

《まとめ》

 

妊婦さんの腰痛の原因はホルモンの影響で骨盤の関節が緩むことと、子宮の重みで体のバランスが崩れ腰に負担がかかること、下半身の血流が滞ることの3つがあります。それぞれの対処法を知って、生活習慣を見直しましょう。また湿布を使用する時には、赤ちゃんに影響があるものもあるため、必ず医師や薬剤師に確認しましょう。

 

※写真提供:PIXTA

 

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1990年兵庫医科大学卒業
1993年名古屋大学医学部産婦人科教室所属
1998年近郊の産婦人科医院勤務、第二日赤病院NICU研修
国際認定ラクテーション・コンサルタント(IBCLC)取得
ロサンゼルスのラクテーション・インスティテュートにてSuck Intensive受講

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