母乳が出なくなった!考えられる原因7つ
まずは母乳が出なくなる原因を考えてみましょう。原因を探ることで、それに合った対処ができます。
1. 母乳を出していない・出せていない
母乳が出なくなる主な原因は、母乳を出していない、もしくは出せていないことです。
母乳の分泌には、いくつかのホルモンが関わっていますが、特に母乳を作るという点で重要な働きをするのはプロラクチンです。プロラクチンは、赤ちゃんが乳頭を吸う刺激によって分泌されます。
そのため赤ちゃんがしっかり吸えず、乳頭に刺激がいかないと、母乳に関わるホルモンの分泌が減り、母乳量が減ってしまいます。
さらに大切な要素は、母乳は乳房から出た母乳の量だけ、また作られる仕組みです。つまり、赤ちゃんが1回で飲める量をママの体が感じ取り、それに合わせて供給量を変化させているということです。
乳房から出ていく母乳の量が少ないと、体が「母乳を必要以上に作りすぎてしまっている」と判断し、母乳量が減ってしまいます。
では、母乳をしっかり出せないのはどうしてでしょうか。
・浅飲みになっている
赤ちゃんが口を大きく開けていない場合や、授乳姿勢(ポジショニング)が合っていない場合、吸着(ラッチオン)がうまくできず、浅飲みになってしまうことがあります。そうすると、しっかりと乳頭に刺激がいかず、十分に母乳を吸い取ることも難しくなります。
さらに、浅飲みは乳管の詰まりの原因にもなり、これも母乳を出づらくする原因の一つです。
・授乳間隔があきすぎている
ママの体調や用事が理由で、授乳間隔があくことがあるでしょう。授乳回数が1日5回以下、もしくは授乳の間隔が5時間以上あくことが続くと、乳頭への刺激と母乳排出が減るので、母乳の量が減ってしまう可能性があります。
母乳が足りないと感じてミルクを足すことで授乳間隔があき、さらに母乳量が減少する悪循環に陥ることもあるので要注意です。
また、最後の授乳から72時間が経つと、母乳を作っていた乳腺細胞が減ってきます。事情があって長時間授乳できない場合には、母乳分泌量維持に加えて乳腺炎予防の意味も含めて、搾乳やマッサージなどの対策をしっかりとしましょう。
2. 水分不足
母乳の9割近くは水分です。母乳として出す分の水分を、普段の水分量に加えて摂取する必要があります。ママが水分不足になると、十分に母乳を作ることができなくなります。
3. カロリー不足
母乳を作るためには、一日あたり成人女性の必要カロリー+350kcalのエネルギー摂取がすすめられています。産後ママのエネルギー摂取量が1500kcal以下になると、母乳の分泌量が減ってしまいます。
また、鉄は母乳に移行します。授乳中は鉄不足で、貧血になりやすいことも覚えておきましょう。
4. 冷えや血行不良
体の冷えは、血液の流れを悪くします。血液の流れが悪くなると、母乳の分泌にも影響を与えてしまいます。
また、肩こりによる血行不良により乳房が張りやすくなることがあります。定期的に肩まわし等のストレッチを行い、上半身の循環をスムーズにしておきましょう。
5. ストレス
精神的、心理的ストレスは、母乳量や母乳成分に影響を与えることが分かっています。
実際に、災害などで強いストレスを受けると、母乳分泌が止まることがあります。こうした一時的な強いストレスによって母乳が止まるのは、ストレスが射乳反射を促すホルモンであるオキシトシンに影響を与えるためと言われています。
しかし、母乳を作り出すホルモンであるプロラクチンは、その影響を受けません。一時的に母乳が止まったように思えても、安全が確保できてから赤ちゃんが頻繁に吸うことで、再び母乳の量は増えていきます。
6. 卒乳が近い
赤ちゃんが離乳食をしっかり食べられるようになり、母乳を飲む量や頻度が減ってくると、母乳の分泌量も減っていきます。そのまま自然な流れで、卒乳ということになるかもしれません。
7. 母乳が出ていないという思い込み
実際には十分な量の母乳が出ていても、母乳不足を心配するママは意外と多いです。
授乳した後にまだ赤ちゃんが泣いていると、「お腹が空いているのでは?」と思うかもしれませんが、赤ちゃんが泣くのは空腹だからとは限りません。
また、おっぱいが張らなくなり「母乳が出なくなった?」と不安になる人もいます。しかし授乳が軌道に乗ったことで、おっぱいが張らなくても母乳が出るようになっただけかもしれません。
母乳が足りているのに心配になってミルクを追加すると、授乳の間隔があき、母乳分泌が減ってしまうことにつながります。赤ちゃんの体重増加や排せつ状況などから、母乳が本当に足りていないのか、総合的に判断しましょう。
母乳が出なくなった時の復活方法
母乳が出なくなった原因に合った対策で、母乳を再び分泌させることができます。
赤ちゃんがしっかりと母乳を吸えるようにする
吸着(ラッチオン)と、授乳姿勢(ポジショニング)を見直してみましょう。
ママの乳輪が赤ちゃんの口の中にしっかり入るくらいに、深くくわえさせてください。ママの姿勢は、軽く後ろにもたれかかりながら胸を張ります。足台や授乳クッションを使って、赤ちゃんの口がおっぱいの位置になる高さに調整します。
よくわからないときや難しいときには、助産師等の専門家にアドバイスを求めることをおすすめします。授乳時に痛みがあるときや、授乳後に乳房の張りが軽くならないときは、うまくできていないのかもしれません。
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授乳間隔を短くする
前述したように、母乳は排出した分だけ作られます。また乳頭への刺激で、母乳に関係したホルモンが分泌されます。そのため、授乳間隔があきすぎていると、母乳が止まる原因になります。
授乳回数を増やして、赤ちゃんにしっかり吸ってもらうことが大切です。ミルクを足しすぎていると、赤ちゃんが吸ってくれなかったり、授乳間隔があいてしまったりするので、要注意です。赤ちゃんが吸えないときには、搾乳をしっかりとします。
少なくとも、1日に8回以上の授乳か搾乳をしましょう。1回の授乳・搾乳で、20~30分くらい乳頭が刺激されると、ホルモンがよく分泌されます。夜間には授乳ホルモンがよく分泌されるので、夜の授乳・搾乳も大切です。
水分・栄養補給
妊娠前よりも、多めに水分補給をしましょう。いつも手元に飲料を置いておくのがおすすめです。温かいスープや白湯は体を温め、血行もよくしてくれます。カフェインや糖分の摂りすぎには気を付けてくださいね。
授乳期にはタンパク質、鉄分、カルシウムなどの栄養素を意識的に摂りましょう。カロリー摂取量が少ない人は、ご飯などの炭水化物も摂るようにしましょう。バランスのよい食事を心がけてください。
血行・詰まりの改善
冷たいものを摂りすぎないようにして、冷えに注意してください。適度な運動で血行をよくしましょう。
乳管の詰まりや血行の改善には、乳房マッサージが効果的です。母乳外来等で、専門家にやり方を教えてもらうと良いでしょう。
心身ともにリラックス
育児や家事のすべてを自分でやろうとせず、周りの助けを借りて、リラックスタイムを作りましょう。睡眠時間も確保してください。
赤ちゃんとの肌の触れ合いには、オキシトシンという射乳ホルモンを分泌するというメリットもあります。オキシトシンやプロラクチンといったホルモンは、ママをリラックスさせ、また幸せな気持ちにさせるなど、精神的にもよい影響があります。
頑張りすぎずおおらかな気持ちで、赤ちゃんとの時間を楽しんでみてくださいね。
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母乳が出なくなった!復活できる時期はいつまで?
授乳をやめて何年か経った後ですら、再び母乳を出せると言われます。とはいえ、母乳が出なくなってから再開までの期間が短いほど、早く分泌量が回復します。
一度止まった、あるいは減ってしまった母乳の分泌は、元の量に戻るのに数日から数週間かかります。母乳を復活させたいときは焦らず、またあきらめずに、ケアをしていきましょう。
《まとめ》
母乳が出なくなってしまう原因と、復活のための方法について解説しました。母乳量が減ってしまったときや、出なくなってしまったときには、何よりもまず、正しい授乳姿勢で赤ちゃんにしっかり何度も吸ってもらうことが大切です。ほとんどの場合、止まってしまった母乳は再開可能です。困ったときには専門家に相談しながら、対処してみてくださいね。
※写真提供:PIXTA
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ママのお悩みの声
産後半年で母乳が出なくなり子供に申し訳ない
2人目の出産だと母乳って出やすい?
1955年に日本助産師会東京都支部として、助産師相互の協力と助産専門職の水準の維持向上並びに利用者に対する質の保証を図り、母子保健事業を通じ、女性と子ども及び家族の健康・福祉の改善・向上に貢献することを目的として活動を開始。
2010年一般社団法人格を取得。
2014年公益法人となり、地域に根差した公共性の高い事業に取り組んでいる。
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