妊婦の恥骨痛の原因
妊婦さんはなぜ恥骨が痛くなるのでしょうか?その原因は主に2つあると言われています。
1. 妊娠中に出るホルモンの影響
2. 大きくなった赤ちゃんの影響
妊婦の恥骨痛の原因「妊娠中に出るホルモン」
妊娠中はリラキシンというホルモンが分泌されます。このリラキシンというホルモンは、骨盤をゆるめる作用があります。それにより出産時に骨盤の可動域が広がり、赤ちゃんが通りやすくなります。
しかし骨盤内の靭帯や筋肉がゆるむことで歪みが生じることがあり、その影響で恥骨に痛みが出てくると言われています。
妊婦の恥骨痛の原因「大きくなった赤ちゃん」
妊娠中のママのお腹で、赤ちゃんはどんどん成長し大きくなっていきます。赤ちゃんは出産時には約3キロ程度になります。大きくなった赤ちゃんの重みによる骨盤への負担が恥骨にかかり、痛みが生じる場合があります。
妊婦が自分でできる恥骨痛の対策
妊婦さんは恥骨に痛みが出る原因はわかりましたが、痛みが出ないようにするにはどうしたらいいのでしょうか。また痛みを和らげるにはどのような方法があるのでしょうか。ここからは、自分でできる恥骨痛の対策方法をお伝えします。
●骨盤ベルトを使用する
●姿勢を正す
●体を冷やさないように温める
●ストレッチをする
どれもすぐに取り入れられる方法ですので、できるものから実施してみてください。
恥骨痛の対策1. 骨盤ベルトを使用する
骨盤ベルトを使用することで、恥骨への負担が軽減します。骨盤ベルトは正しい位置に装着することが大切。骨盤ベルトの正しい着け方をご説明します。
(1)仰向けになり膝を立てます。
(2)おしりの高さが20cmくらいになるように、おしりの下にバスタオルもしくは小さめのクッションを敷きます。(骨盤の位置が高くなる「骨盤高位」の姿勢にします。)
(3)おしりの真ん中にある仙骨を通るように骨盤ベルトを置きます。
(4)大転子(足の付け根)と恥骨を通るようにベルトを巻きます。
(5)きつすぎると痛みが悪化したり、血流が悪くなる原因にもなるので、指がすっと入る程度ぐらいのきつさで巻きましょう。お腹の丸みの部分にベルトがかかる場合は、丸みに沿わせて当て、締め付けないようにしてください。
骨盤ベルトにも様々な種類・サイズがあるので、自分の使用用途にあったものを選んでくださいね。
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恥骨痛の対策2. 姿勢を正す
大きくなったお腹を支えるために、妊娠中はお腹を突き出した姿勢になりがちです。お腹を突き出した姿勢になると反り腰になり、腰や恥骨に負荷がかかり、痛みが生じることがあります。そのため歩くときや座るときなどは、腰をそらさないような姿勢を意識することが大切です。
壁に背中を付けて顎を引いて立ちます。後頭部、肩甲骨、おしり、かかとを壁につけ、腰と壁の隙間に手を入れた時に手のひらがギリギリ入るくらいの姿勢が理想です。手がすっぽり入るなら反り腰の状態です。
イスに座るときは背もたれに寄りかからないように、骨盤を立てるイメージで座ります。また、デスクワークやスマートフォンを触っている姿勢は猫背になりがちです。姿勢が悪くなると恥骨痛だけでなく、腰痛の原因にもなるため、立ち姿勢や座る姿勢に注意しましょう。
恥骨痛の対策3. 体を温める
体をあたため血流が改善すると、痛みがやわらぐことがあります。湯船に浸かったり、下半身を温めたりしてください。ただしカイロやホットパックを使用する場合は、皮膚に直接貼らず、ショーツや腹巻きの上に貼り、低温やけどに注意してください。
恥骨痛の対策4. ストレッチをする
ストレッチをすることも効果的です。先ほどもご説明したとおり、恥骨痛は骨盤まわりの筋肉や靭帯がゆるむことで起こります。同じ姿勢のまま長時間過ごす、姿勢が悪いまま過ごすことにより、同じ場所に負担がかかってしまいます。ストレッチで骨盤まわりの筋肉を鍛えたり、ほぐしたりすることでズレや歪みの対策をしましょう。
妊婦の恥骨痛に効果的なストレッチ
妊婦さんの恥骨痛対策で効果的なストレッチとは、具体的にどのようなものがあるでしょうか?ここからは、妊娠中にできるストレッチ方法をご紹介します。どの方法も体調に合わせて無理のない範囲でしましょう。
またストレッチをすることでお腹が張るようであれば、すぐに中止してください。
ストレッチ方法1. ヒップローリング
まずはヒップローリングです。
足を肩幅に開いて立ち、腰を左右10回ずつ回します。手は腰にあててもいいですし、机や壁に手をついて前かがみの姿勢になってするのもOKです。10回ずつを1セットで1日に2〜3回できるといいでしょう。
この方法は出産時にもできるストレッチの一つです。1人でするだけでなく、パートナーや家族の肩につかまって腰を回すこともできるので、自分のやりやすい方法を試してください。
ストレッチ方法2. ヨガの猫のポーズ
次にご紹介する方法は、ヨガの猫のポーズです。その名のとおり、猫が伸びをしているようなイメージで行います。このストレッチは腰痛のある方にもおすすめなので、ぜひ覚えてください。
(1)肩の下に手、足の付け根の下に膝がくるように四つん這いになります。
(2)息を吐きながら腰、背中、頭の順におへそを見るように丸くなります。
(3)息を吸いながら腰、背中、頭の順に反らしていき、目線は斜め上を見るようにしましょう。呼吸を意識しながら、この動作を5回ずつ行います。
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ストレッチ方法3. 骨盤底筋群を鍛える
骨盤を支える骨盤底筋群を鍛える、ストレッチをご紹介します。このストレッチは立ち姿勢、椅子に座って、横になっても出来ます。
(1)肛門や膣をきゅっと締めるように、おしりから会陰部あたりに力を入れます。
(2)このまま数秒間キープします。
(3)力を抜き、リラックスします。
これを10回程度しましょう。
この方法は、出産後にもできるストレッチの1つです。出産後は特に骨盤底筋群がゆるみやすく、尿漏れが起こりやすくなります。尿漏れ対策にも効果的なので、妊娠中からぜひ実施してみてください。
ストレッチ方法4. 合せきのポーズ
股関節の柔軟性を高めるためのストレッチです。
(1)床に座り、足の小指が床につくように足の裏を合わせます。
(2)可能な範囲で足を体に引き寄せましょう。
(3)足を押さえて背筋をしっかり伸ばします。
(4)膝を上下に揺らして股関節をゆるめます。
(5)膝の動きを止めて息を吸いながら背筋を伸ばします。
(6)息を吐きながら可能な範囲で、背筋を伸ばしたまま前かがみになります。
この動きを数回繰り返します。お腹が大きくなってくると前かがみになるのは難しいので、可能な範囲で行いましょう。また、お腹が張ったらその時点でやめてください。
《まとめ》
妊娠中は生理的に恥骨痛が生じやすくなりますが、ストレッチや姿勢を意識するなど、自分で対策することができます。毎日少しずつ継続することで、妊娠後期に入った時に体への負担が変わってくるので、できるだけ日頃から意識して過ごしましょう。また、自分でできる対策には限りがあります。なかなか改善しなければ、かかりつけの産科で相談するようにしてください。
※写真提供:PIXTA
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国立福山病院附属看護学校卒業後、看護師として勤務。
第二子出産後、岡山大学医療技術短期大学部専攻科助産学特別専攻に進学し、助産師免許取得。
大学の非常勤講師、産婦人科病院、不妊治療専門クリニックなどで勤務。
現在は助産院勤務しながら、自身の出張・オンライン専門のすまいる助産院を開業中。産前産後の身体と心をサポートしてます。
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