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2022.01.07
陥没乳頭の授乳のコツ【助産師監修】スムーズな母乳育児を目指して
産後は毎日8回以上も授乳することになります。授乳とはなるべく楽で、痛みや負担が最小限の状況でできることが、ママと赤ちゃんにとって重要。赤ちゃんにスムーズに母乳を飲んでもらうためには、授乳のタイミングの他にこの3つが大切です。
1. 抱き方、支え方(ポジショニング)
2. 含ませ方(ラッチオン)
3. 乳輪や乳頭の条件
今回は3.「乳頭や乳輪の条件」の中で、しばしば授乳が難しいと言われている「陥没乳頭」という乳頭をテーマに、解説していきます。陥没乳頭についての知識や、妊娠中や産後にできるケア、授乳をスムーズに行える工夫をお伝えしたいと思います。
目次
「陥没乳頭」とは?授乳できる?
「陥没乳頭」とは、乳頭が乳輪より奥へ入り込んで出てこない状態を言います。見た目は陥没していますが、指で刺激すると出てくるものを「仮性陥没」と言います。指で圧迫すると引っ込んでしまう乳頭を、「真性陥没」と言います。
陥没乳頭で授乳できるかどうか
仮性陥没より真性陥没の方が、授乳が難しい場合が多いです。そもそも乳頭や乳輪は、伸展性(伸びの状態)が赤ちゃんの吸着にとって大切。しかし初産婦さんの10~35%は十分に伸展しないと言われています。乳頭や乳輪がどんな形状でも、初産婦さんがある程度授乳を軌道に乗せるまでは、時間が必要ということですね。
陥没乳頭での授乳が難しい理由
陥没乳頭での授乳の場合は、赤ちゃんの吸着がスムーズにいかないことがあります。ここでは、その理由について解説していきます。
陥没乳頭の授乳の難しさ1. 赤ちゃんがうまく吸い付けない
授乳の際には、乳輪全体を赤ちゃんの口に含ませます。赤ちゃんが滑らずに飲むため、乳頭には必要な長さと伸展性の良さが大切です。乳頭が赤ちゃんの口の奥までしっかりと入ることで、赤ちゃんが吸い付くことが出来ます。
しかし陥没乳頭は、乳頭が突出していません。乳頭が口の奥まで入りにくくなり、乳房に溜まった母乳を上手に飲み取ることが出来ない場合があります。
陥没乳頭の授乳の難しさ2. 母乳が吸われず乳腺炎になりやすい
陥没乳頭で赤ちゃんがうまく母乳を飲むことが出来ないと、赤ちゃんに十分な母乳量が行かなくなります。そして体重増加がスムーズではなかったり、飲み取られないことで必要な分泌量の母乳が作られなくなってしまいます。乳房の張りが改善せず悪化すると、乳腺炎になることもあります。
陥没乳頭の授乳の難しさ3. 乳頭のトラブルが起きやすい
吸着できたとしても浅い吸着によって、乳頭の一部に過度に圧力がかかってしまうことがあります。そうすると乳頭が傷つきやすく、乳頭痛で授乳することが難しくなってしまう可能性があります。
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陥没乳頭でもスムーズに授乳するコツ
妊娠中から産後にもホルモンの影響で、自然と伸展性が良くなるとは言われています。ですが妊娠中に自身の乳頭や乳輪で気になることがあれば、ぜひ妊婦健診の際に助産師に声を掛けてくださいね。陥没乳頭などのおっぱいの場合は、妊娠中にケアし条件を整えておくことによって、産後授乳がスムーズにできることを助けます。
ただし妊娠中のケアは、場合によってはお腹が張ってしまうことがあります。産院の助産師にその必要性や時期について、具体的に助言してもらってくださいね。
陥没乳頭の授乳のコツ1. 乳輪全体を口に入れるように
これはすべてのママに共通することですが、乳輪全体が赤ちゃんの口に入るように吸わせることで、赤ちゃんがしっかりと乳頭をつかみ母乳を飲むことができます。
陥没乳頭のママはそうでない場合に比べて、より深く乳頭を赤ちゃんの口の奥まで届かせるイメージで授乳するとよいでしょう。赤ちゃんが大きく口を開けたタイミングに合わせて、できる限り深くまで赤ちゃんが乳頭をくわえられるように気をつけましょう。
陥没乳頭の授乳のコツ2. 乳輪を柔らかくしておく
乳輪部分が柔らかく伸展性が良いと、より赤ちゃんがしっかりと吸い付きやすくなります。
妊娠中から産後のホルモンの影響で、自然とその柔らかさは増すと言われていて、以前よりは積極的なケアをしなければならない風潮ではありません。しかし特に陥没乳頭のママは、乳輪を柔らかくするためにマッサージをしましょう。妊娠37週頃からオイルなどを使って、柔らかくなるようにマッサージしていくのがおすすめです。
乳輪マッサージは、乳頭が刺激されることによって子宮収縮を促す場合があります。必ずかかりつけの産科医に相談してから、開始するようにしてくださいね。お腹が張りやすい場合は、乳輪にオイルを塗って、ラップなどを使ってパックをするのがおすすめです。乳輪がしっとりとして、徐々に柔らかくなってきますよ。
また母乳がたくさん作られるようになると、乳輪付近が浮腫んでしまい硬くなることがあります。その場合には、授乳前に少し搾乳して乳輪付近を柔らかくしてから、授乳すると良いでしょう。
陥没乳頭の授乳のコツ3. 乳頭を引っ張る
乳頭刺激のみで乳頭が突出しない場合には、陥没乳頭用の吸引器や搾乳機を使ってみる方法もあります。乳頭を陰圧で引っ張ることで、乳頭が突出する場合があります。あまり強く吸引すると皮膚が損傷してしまうので、産院の助産師と相談しながら吸引の程度を確認して試してみてください。
陥没乳頭の授乳のコツ4. 乳頭保護器を使う
乳頭乳輪部をカバーするように使う、「乳頭保護器」というものが販売されています。乳頭保護器は、陥没乳頭や扁平乳頭で授乳しにくい場合に、助産師と相談したうえで使用することがあります。
乳頭保護器を使って授乳することで、陰圧が上手にかかり乳頭が徐々に突出して、陥没乳頭が改善され直接授乳ができるようになる場合もあります。
一方で、乳頭保護器の使用には少し気を付けるべきこともあります。装着の適応や装着する時期については、助産師と相談しながら見極めるのが大切です。母乳を作るためには、赤ちゃんへ授乳するときの乳頭と乳輪への刺激が必要です。しかしニップルシールドを使うとその刺激が少なくなってしまい、母乳産生量が減少してしまうことがあります。
また乳頭保護器は、カンジダや細菌の温床となってしまう場合があります。毎回清潔に洗いましょう。保護器のサイズも検討が必要です。合わないサイズを使用することで、乳頭の皮膚が痛んでしまう場合もあります。
《まとめ》
陥没乳頭の人でも、妊娠中から助産師と相談し必要なケアを行いながら準備しておくことで、赤ちゃんがとても上手に飲め、困らない場合もあります。また妊娠中から自身の乳頭や乳輪の形状についての個性を理解すること、関心をもつことで母乳育児について考えるきっかけになるかと思います。産科の健診の際に助産師に相談したり、妊娠中から地域の助産師と繋がっていくことも、また母乳育児がスムーズにいくコツかと思います。
※写真提供:PIXTA
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監修者
1955年に日本助産師会東京都支部として、助産師相互の協力と助産専門職の水準の維持向上並びに利用者に対する質の保証を図り、母子保健事業を通じ、女性と子ども及び家族の健康・福祉の改善・向上に貢献することを目的として活動を開始。
2010年一般社団法人格を取得。
2014年公益法人となり、地域に根差した公共性の高い事業に取り組んでいる。
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