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2021.11.22
妊娠32週の壁とは?早産の原因は?胎児の大きさやママの体の変化
妊娠32週は、妊娠9ヶ月の1週目になります。ここでは、妊娠32週の胎児の大きさや成長状態とともに、妊婦さんの身体の変化や意識したいことなどを、わかりやすくご紹介します。
目次
「妊娠32週の壁」とは
妊娠32週は「妊娠32週の壁」ともいわれ、万が一妊娠32週の時点で出産した場合は「早産」になります。医療の発達により助けられる赤ちゃんが増えてきましたが、ママのお腹の中でいる期間が少なく早産で生まれた赤ちゃんは、成長に時間がかかってしまいます。
正期産といわれる、妊娠37週0日~41週6日の期間に生まれた赤ちゃんの発達と比較すると、1歳の時点で同様に成長する確率は、32週未満の早産では21%、32週~37週未満では69%といわれています。
誕生後の発育状態を考えると、同じ早産でも32週が1つの区切りとなっていることから、「妊娠32週の壁」ともいわれています。
早産になる原因は?
早産になるいくつかの原因を詳しくみてみましょう。
■絨毛膜羊膜炎(じゅうもうまくようまくえん)
早産の原因で最も多いのは、「絨毛膜羊膜炎」といわれる妊婦さんの感染症です。妊婦さんの膣で細菌感染が起こり、細菌性膣炎になり、その炎症が子宮頸管まで到達すると頸管炎になります。
胎児を包んでいる羊膜や絨毛膜まで炎症が達すると「絨毛膜羊膜炎」となり、前期破水やお腹の張りの原因となり、おりものの変化がみられるようになってきます。さらに進行すると羊水や胎児にも感染することがあるため、早期発見・早期治療が大切です。
■子宮頸管無力症(しきゅうけいかんむりょくしょう)
子宮の出口となる「子宮頸管」が、子宮が収縮していないのにも関わらず短くなり、子宮口が柔らかくなり開いていきます。自覚症状は伴いません。
子宮頸管は通常閉じており、出産が近づくにつれて開いていきます。子宮頸管が閉じている部分(頸管長)は、妊娠20週~24週では35~45mm程度あるのが一般的です。25mm未満の場合では、早産になるリスクが通常の6倍以上、20mm未満では75%といわれています。
妊婦健診時にエコーで確認するので、短めといわれた場合は、かかりつけの産科医の指示に従い安静に過ごしましょう。
■妊娠高血圧症候群
妊娠20週以降に高血圧や尿たんぱくの数値が高くなると、胎盤の機能が低下する可能性があり、約20人に1人の割合で早産になるといわれています。
入院して治療が必要になります。もし症状が改善しない場合は、妊婦さんの体と胎児の安全のためにも、帝王切開にて妊娠を終了させる(早産にする)場合もあります。
■その他早産になるリスク因子
【妊婦さん側や胎盤が原因のリスク因子】
高齢妊娠、若年妊娠、円錐切除後妊娠、子宮筋腫合併、子宮奇形、前置胎盤、常位胎盤早期剥離、飲酒、喫煙などがあります。
【胎児側が原因のリスク因子】
多胎、羊水過多・過小、胎児機能不全、子宮内胎児発育遅延、胎児奇形(胎児形態異常)などがあります。
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妊娠32週の胎児の大きさと成長
妊娠32週の胎児の大きさや、成長状態はどうなっているでしょうか。妊娠32週の胎児の身長は平均40~45cm、体重は平均1,700~2,400gとなります。胎児の成長状態について詳しくみてみましょう。
羊水の量がピークに
胎児を守っている羊水の量がピークになり、1,000mlまでにもなります。この羊水の量は妊娠36週頃まで維持され、その後出産に向けて少しずつ減少していきます。
■羊水の役割
・胎児の成熟を助ける
羊水には水分の他にも、胎児の成長を助ける成分(電解質・アミノ酸・脂質など)を含んでいます。胎児は羊水を飲んで、これらの成分を吸収し、尿として排泄しています。
・胎児の体や臍帯を守る
胎児は羊水の中で浮いている状態になりますので、体を傷つけることなく動き回ることができています。臍帯もこすれて傷つかないのは、羊水があるからです。
・外からの圧迫から守る
妊婦さんのお腹が万が一押された時も、羊水があるので胎児が直接圧迫されないように守ってくれます。羊水がクッションの役目を果たすのです。
肺の働きが成熟
妊娠26週頃に胎児の肺の構造がほぼ完成し、妊娠28週になると肺を膨らませる物質(肺サーファクタント)の産生が始まります。妊娠32週頃の胎児の肺の中では、肺サーファクタントも増加し呼吸の練習の最終段階に入ります。妊娠34週頃には、肺呼吸に必要な肺サーファクタントが十分な量になります。
皮下脂肪がつき始める
妊娠32週になるとしわがなくなり、ふっくらとした体つきになってきます。髪の毛や爪も伸びてくるので、ほとんど新生児と見た目は変わらなくなってきます。
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妊娠32週ころの妊婦さんに多い身体の変化
妊娠32週に入り安心する一方で、お腹がますます大きくなりマイナートラブルに見舞われることも多くなってきます。この頃の妊婦さんに多い身体の変化を詳しくみていきましょう。
子宮の圧迫によりマイナートラブルが多くなる
子宮の大きさを表す子宮底長は28~31cmとなり、子宮がみぞおちのあたりまで上昇してきます。子宮が肺や心臓や胃を圧迫してくるため、動機や息切れ、胃もたれなどの症状が強くなってきます。一度にたくさん食べるのではなく、1回の食事量を減らし、こまめに摂取するようにしましょう。
初乳がでることも
この時期、乳頭から分泌液がにじみ出ることがあります。妊婦さんの体は出産、授乳に向けて着々と準備を進めています。
腰痛や足がつることも
大きくなった子宮を支えるために腰への負担が増え、腰痛がひどくなることがあります。また、子宮が足のつけ根にあるじん帯を引っ張るため、痛みが出たり足がつることもあります。内ももの筋肉を伸ばすようにストレッチをすることで、少し楽になるでしょう。
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✔妊婦の足がつる原因は?【助産師おすすめ】こむら返りの予防法
足のむくみが強くなる
子宮が大きくなることで、足への血流やリンパの流れが滞り、足のむくみが目立つようになります。血液の循環を良くするためにゆったり入浴し、ふくらはぎを下から上に向ってマッサージをしてみましょう。
頻尿になる
子宮が膀胱を圧迫するので、頻尿になりやすいです。尿意を我慢していると膀胱炎になりやすいため、我慢しないようにしましょう。
尿漏れが気になる
くしゃみ・咳をした時に下腹部に力が入り、尿が漏れることがあります。大きくなった子宮に圧迫され、ホルモンの影響で、内臓を支えている骨盤の底にある筋肉(骨盤底筋群)が緩むためといわれています。尿漏れパッドを使用したり、下着をこまめに替えるようにしましょう。
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シミ・そばかすが増える
妊娠中はホルモンの影響で、乳頭や外陰部などに色素沈着がみられます。また額や頬、鼻や唇などに、シミやそばかすがみられることも。出産後に薄くなって消えることが多いので、心配はいりません。
妊娠32週ころの生活で意識したいこと
妊娠32週頃の妊婦さんの生活で、意識したいことを詳しくみていきましょう。
■胎動をチェックしましょう
胎動は、胎児がママへ伝えている元気信号です。お腹がポコッと一部盛り上がったり、波打ったりすることもあるかもしれません。これは胎児の手や足、肘など胎動によるものなのでビックリしないでくださいね。
■里帰り出産の場合は妊娠34週までに帰郷を
里帰り出産を考えている妊婦さんも多いかもしれません。妊娠9ヶ月中、遅くても妊娠34週までには帰省するようにしましょう。お産する予定の病院で妊婦健診を受け、妊娠経過をしっかり把握してもらい、安全・安心なお産につなげましょう。
■早め早めの準備を
予定日まで1ヶ月以上とのんびりしていると、思いがけず出産が始まることもあります。入院時や退院時に必要なものなどを、準備しておきましょう。普段の健診時に必要な、母子健康手帳や健康保険証・診察券は小さめのバックに、入院時に必要なものは別のバッグに、準備しておくと便利です。病院によって必要なものが異なってくるため、かかりつけの産科医に確認してリストを作成しておきましょう。
《まとめ》
妊娠32週に入り、臨月まであと1ヵ月となると、ほっと一安心もつかの間。お腹が大きくなることで見舞われるマイナートラブルも出てくるため、気が抜けません。そんな時は、大きくなったお腹をゆっくり眺めてみてください。様々な壁を乗り越えて成長してきた赤ちゃんと、対面できる日も間近に迫っています。赤ちゃんとの新しい生活の準備をしつつ、バースプランを考えながら、残りの少ないマタニティライフを満喫してくださいね。
※写真提供:PIXTA
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1999年愛知医科大学卒業
その後大垣市民病院にて研修、勤務を経て安城更生病院へ赴任
2006年日本産婦人科学会産婦人科専門医取得
2008年やまだ産婦人科院長就任
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