臨月におりものの量・見た目が変化するのはなぜ?
妊娠すると、妊娠を継続させるためにエストロゲン(卵胞ホルモン)とプロゲステロン(黄体ホルモン)の分泌が増えていきます。エストロゲンは女性の身体が妊娠に適応できるように、産後の授乳に備えて乳房を大きくしたり、子宮を大きくしたりします。そしてエストロゲンの影響でおりものの性状も変化し、量も増えていきます。
おりものは外界からの菌が入らないようにするという、自浄作用の役割を担っています。子宮とその中にいる赤ちゃんを守っているのですね。
エストロゲンは妊娠期間を経てさらに量が増えますので、おりものの量も正比例して増加していきます。臨月にはさらに増加し、今度は出産に備えて、赤ちゃんが産道を通りやすくする潤滑剤としての役割を果たしてくれるのです。
また、おりものは妊娠後期になるとプロゲステロンの影響で、透明な色から色が濃くなり、黄色~茶色に変化していきます。においもきつくなり、生臭かったり甘酸っぱかったり、感じ方は様々です。
このように、臨月になるとおりものはホルモンの影響で変化していき、出産に向けての身体づくりを始めていくのです。かゆみや痛みなど症状が特に見られなければ、正常なおりものの状態ですので問題はありません。量や色味、性状が正常なのか判断に迷うときは、健診の際などに相談してみると良いでしょう。
臨月のおりもの変化【 スライム状・茶色・大量】
臨月になるとエストロゲンとプロゲステロンの影響で、おりものの量や見た目は変化していきます。具体的にどのように変化していくかご紹介します。
スライム状のおりもの
臨月に入ると、おりものはどろっとしたスライム状に変化することがあります。たまごの白身と表現をする妊婦さんも多いです。これは粘液栓と言われ、子宮内の赤ちゃんを細菌から守るために蓋をしていたものですが、出産が近づくにつれて溶け出していきます。
粘液栓が見られると、身体の準備が出産に向けて整っているサインでもあるのです。前駆陣痛でお腹が頻繁に張るようになると、「おしるし」という血液の混じったどろっとしたものが出ることもあります。お産が近いことを知らせるサインの一つと言われています。
茶色のおりもの
出産予定日近くになると、茶色っぽい出血が混じったようなおりものが見られることがあります。プロゲステロンの影響も考えられますが、おしるしの可能性もあります。
大量のおりもの
エストロゲンの影響で、臨月にはおりものがかなり増加します。水っぽいものもあれば、粘り気のあるおりものが大量に出ることがあります。おりものシートがかなり濡れてしまい、破水や尿漏れと間違えてしまうこともしばしばです。
臨月のおりもの「黄緑色」は要注意?受診が必要な場合
臨月のおりものは、基本的には正常なものがほとんどですが、まれに受診が必要な場合もあります。注意すべきおりものの特徴について解説します。
注意したい臨月のおりもの1. 黄緑色
黄緑色のおりものは、トリコモナス膣炎の可能性があります。泡立っているようなおりものが特徴で、これらは性行為や共同のトイレ、お風呂などで感染をおこします。トリコモナス原虫が原因で、免疫力が落ちている妊婦さんは特に感染しやすいといわれています。
その他の症状としては、強い掻痒感、熱感、排尿時痛が見られます。産道感染を起こす危険があるので、早期の治療が必要です。
注意したい臨月のおりもの2. ポロポロ状
ポロポロ状のカッテージチーズのようなおりものは、カンジダ膣炎が疑われます。強いかゆみや腫れ、熱感を伴うことが多いです。出産の際は産道感染を起こす可能性があり、出産するまでに治療が必要となります。
注意したい臨月のおりもの3. 灰色
サラサラの灰色のおりものが出る場合は、細菌性膣症を疑います。軽いかゆみや腫れがあるのが特徴です。
赤ちゃんを包む膜まで感染を起こすと前期破水の可能性があり、早産や低出生体重児出産につながり、赤ちゃんへの影響が大きい感染症です。さらには産道感染を起こし、肺炎や髄膜炎などの合併症の危険性があり早期に治療が必要です。
注意したい臨月のおりもの4. 出血が多く痛みを伴う
さらさらした出血が大量で、下腹部痛を伴う場合は異常出血である可能性があります。一番心配なのは、常位胎盤早期剥離の可能性です。常位胎盤早期剥離は胎盤がはがれてしまう病気で、母子ともに命に関わります。すぐに病院を受診するか、痛みを伴って動けない場合は、必要に応じて救急車を呼ぶことも検討しなければいけません。
また、健診で医師から前置胎盤と言われている方は、警告出血の可能性もあります。前置胎盤は子宮口に胎盤がかかっている状態で、基本的には帝王切開となります。予定よりも早期に出血してしまった場合は警告出血といい、緊急に帝王切開をする必要があるので注意が必要です。
妊娠経過の中で前置胎盤と言われた妊婦さんは、警告出血の有無をしっかり確認しましょう。
臨月「おりもの」「破水」「おしるし」はどう違う?
臨月にみられるおりもの、破水、おしるしは、それぞれに特徴があります。あらかじめ知っておくことで、簡易的に判断することが可能になります。
臨月の「おりもの」と「破水」の違い
臨月のおりものは量が多くなるため、破水と見間違えることがあります。おりものと破水の違いをご紹介します。
■出方に違いがある
破水は自分の力では止めることが出来ず、ちょろちょろと持続的に出てくることがあります。これは高位破水といい、赤ちゃんを包んでいる膜の上の方が破れることで持続的に出るのです。また、破水は赤ちゃんを包んでいる膜がパンっと割れて、ドバっと羊水が出ることがあり、明らかに破水とわかります。
■破水はサラサラしている
おりものは粘り気があるものが多く、破水の場合は水っぽくサラサラしています。色も透明から若干白っぽい、時には出血が混じってピンク色になることもあります。また、大量の出血とともに破水してしまうと、さらさらした血液が沢山でてきます。
びっくりしてしまうかもしれませんが、強い下腹部痛を伴わなければ破水の可能性が高いので、一度かかりつけの産科医に連絡してみましょう。自己判断は危険ですので、臨月で大量の水っぽいおりものがでるようであれば、破水との鑑別のために、一度かかりつけの産科医を受診するとよいでしょう。
■破水は子宮収縮、出血を伴うこともある
破水の場合は、同時に子宮収縮を伴うことが多いです。軽いこともありますし、本陣痛中に破水することもあります。子宮口が開いている可能性があるので、血液も一緒に出ることもあります。
臨月の「おりもの」と「おしるし」の違い
プロゲステロンの影響で、おりものが茶色っぽくなることがあります。おしるしはおりものの一種ですが、どのような違いがあるのかご紹介します。
■色の違い
おしるしは少しずつ子宮口が開き、赤ちゃんを包んでいる膜がはがれて、その際に出る少量の血液とおりものが混じったものです。茶色のこともありますが、赤茶やピンク色のこともあります。
■量の違い
おしるしは個人差があり、出る人もいれば出ない人もいます。粘り気のあるおりものに少量の出血が混じっていることもあれば、生理2日目くらいの量のこともあります。さらさらした血液が大量に出るときは、別の合併症の可能性があるため注意が必要です。
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《まとめ》
臨月には、ホルモンの影響でおりものの量が増加したり、色が変化したりします。大量のおりものは破水との鑑別が難しいことがあります。そのためもし判断に迷った場合は、かかりつけの産科医を早めに受診することをおすすめいたします。
※写真提供:PIXTA
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ママのお悩みの声
妊娠7ヶ月目で急におりものが水っぽくなりました。
臨月のデリケートゾーンのかゆみが気になります。
1955年に日本助産師会東京都支部として、助産師相互の協力と助産専門職の水準の維持向上並びに利用者に対する質の保証を図り、母子保健事業を通じ、女性と子ども及び家族の健康・福祉の改善・向上に貢献することを目的として活動を開始。
2010年一般社団法人格を取得。
2014年公益法人となり、地域に根差した公共性の高い事業に取り組んでいる。
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