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2020.12.21
妊娠中の旅行の危険性!【医師からの注意点】準備で気を付けること
近年では、妊娠中ママが出産までにしておきたいことNO.1のマタニティ旅行。しかし妊娠中の旅行にはリスクが伴うことを知っていますか?妊婦さんがやむを得ず旅行をしなければならない場合に備え、旅行によるリスクを正しく理解しましょう。そして赤ちゃんを守るために知っておくべきことを、産科医師が解説します。
目次
妊娠中の旅行で考えられるリスクとは
ここ最近、妊婦さん向けの旅行が人気です。これだけ妊娠中の「マタ旅(=マタニティ旅)」が定着してくると、安定期に入れば旅行も大丈夫、となんとなく簡単に考えてしまいますよね。
しかし、妊娠中の旅行はどんなリスクがあるのか十分に理解した上で、本当に旅行をする必要があるのか、冷静に考える必要があります。
妊娠中の旅行リスク1. 切迫流産・早産や破水
妊娠していなくても、旅行は普段の生活と比べて身体的負担が大きくなり、疲れやすいですよね。妊娠中は特に体調の変化が著しく、より負担が大きくなります。お腹も張りやすくなりますので、切迫流産や切迫早産を引き起こす場合があります。それに伴って、破水のリスクも高くなります。
もしも妊婦さんが旅先で破水すると、生まれる予定日よりも早く、しかも旅行先での病院で出産になってしまうことも。さらには感染を起こして、胎児の状態が危険にさらされる場合もあります。
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妊娠中の旅行リスク2. エコノミークラス症候群
妊娠中は出産時の出血に備えて、血液は普段よりも固まりやすい成分が多くなっています。飛行機や車などでは、長時間同じ体勢でいることで血流が滞って血栓(血の塊)ができ、血流に乗って肺の血管に詰まります。
エコノミークラス症候群の主な症状としては、背中や胸の痛み、呼吸が苦しくなるなどがあります。悪化すればママや赤ちゃんの命に関わります。
妊娠中の旅行リスク3. 万が一の事故
もしも衝突事故でお腹を強くぶつけたり、転倒したりなど、お腹に衝撃を受けると胎盤が子宮から剥がれてしまうことがあります。
これを常位胎盤早期剥離(じょういたいばんそうきはくり)と言い、赤ちゃんに必要な酸素や栄養がいかなくなり、赤ちゃんが非常に危険な状態になります。また大出血を起こしたりすると、ママの命も危険にさらされます。
万が一旅行中にこのような状況に陥っても、近くに緊急対応できる医療機関がない場合は、スムーズに治療が受けられるとは限らないのです。治療が遅れれば、ママも赤ちゃんも命を落としてしまうことがあります。
妊娠中のこんな症状は要注意!旅行をやめる判断基準
基本的に妊娠中の旅行は全て自己責任ですから、医療者の立場としては旅行して良いともダメとも言うことはありません。しかし安易に決めた旅行がママと赤ちゃんの生死を分ける、ということにもなるので、それなりの覚悟が必要です。
次のような症状がある人は、特に慎重に旅行について考える必要があります。
前置胎盤
子宮の入り口を塞ぐような形で胎盤がついている場合、赤ちゃんと子宮が大きくなるにつれて突然の出血が起きる場合があります。大出血すると、ママと赤ちゃんの命が危険にさらされることになります。妊婦健診で胎盤が低い位置にあると医師から言われている場合は、旅行に対して慎重になった方が良いでしょう。
切迫流産・切迫早産
普通は閉じている子宮の入り口が子宮の収縮によって広がり、赤ちゃんが予定日よりも早く生まれてくる可能性がある状態です。
妊娠22週未満が切迫流産、妊娠22週0日から妊娠36週6日は切迫早産といいます。妊娠週数によっては赤ちゃんが生まれても生きられない場合や、命をとりとめても障害が残る場合があります。
子宮の入り口の長さが短めといわれているママ、子宮の張りを抑える薬を飲んでいるママは、なるべく安静にしておいた方が良いので、旅行は我慢することをお勧めします。
妊娠高血圧症候群の悪化
ママの血圧が上がることで重篤な合併症が発症し、赤ちゃんの命にも関わる病気が「妊娠高血圧症候群」です。旅行中は外食がメインで、塩分が多い食事が続きます。また普段の生活と違う環境でストレスとなり、血圧を上昇させる原因になります。元々血圧が高めのママ、高齢出産といわれているママ、前回のお産で血圧が上昇したママ、体重増加が著しいママは要注意です。
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やむをえず妊娠中に旅行するなら
親族の不幸があったなどの理由で、妊娠中やむをえず遠出しなければならないときがあるかもしれません。旅行先で気をつけるべきこと、必要な準備について解説します。
妊娠中の旅行で必ず携帯するもの
妊娠中の旅行で必ず携帯すべきものはこの通りです。
・母子手帳
・保険証
・ナプキンや尿もれパッド
旅行中、何かあったときに妊娠経過がすぐにわかるものは母子手帳です。緊急の連絡先の欄もしっかり記録しておきましょう。また血液型や血液検査などの結果は、母子手帳に挟んでおくとよいです。ナプキンは破水や出血した時に便利です。
妊娠中の旅行の注意点「旅行先の病院探し」
■旅行先の病院を探しておく
もし何かあった時に落ち着いて連絡できるよう、旅行先の救急病院、産婦人科を探しておきましょう。しかし残念ながら、遠方の妊婦は受け入れてもらえないことも多いです。
海外であれば尚更、保険が使えない場合もあり、1000万円以上の負担になることもあります。このように、体調の変化以外にも旅行のリスクはあります。
妊娠中の旅行の注意点「事前の健康チェック」
■かかりつけ医師に健康チェックしてもらう
どうしても旅行しなければならなくなった場合、早めにかかりつけの医師に伝えてください。健康チェックをしてもらい、旅行できる状態か確認してもらいましょう。
妊娠中の旅行の注意点「休憩場所の確保」
■旅行中は休憩できる環境を確保する
長時間同じ体勢で居続けることがなく、いつでも休憩が取れるような交通手段を選びましょう。不意にぶつかったり、転んだりする可能性があるので、人混みは避けた方が良いです。長時間歩いたり立っていることのないようにして、お腹が張ったり、具合が悪くなったらすぐに安静にして横になりましょう。
妊娠中の旅行の注意点「エコノミークラス症候群の予防」
■エコノミークラス症候群の予防
移動中にじっと座っていなくてはならない時は、足首を回したり、足を伸ばしたり曲げたりして、下肢の血流がよどまないようにしましょう。
動けるスペースがあれば、立ち上がってストレッチをするのもお勧めです。また水分補給はこまめにして、トイレも我慢せずに行くことが大切です。
《まとめ》
妊娠中の旅行「マタ旅」はリスクが高いということを、しっかり自覚しておくことが大切です。そして、ママと赤ちゃんの命を危険にさらしてまで旅行をする必要があるのか、よく考えましょう。それでも旅行しなくてはならない場合には、必要な準備と予防策を十分に整え、なるべく体に負担がかからないよう計画しましょう。
※写真提供:PIXTA
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1999年愛知医科大学卒業
その後大垣市民病院にて研修、勤務を経て安城更生病院へ赴任
2006年日本産婦人科学会産婦人科専門医取得
2008年やまだ産婦人科院長就任
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