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2021.02.26
妊娠高血圧症候群とは?赤ちゃんへの影響と予防策【産科医が解説】
妊婦健診では必ず血圧をチェックし記録していますよね。これは「妊娠高血圧症候群」などの病気を早期発見するのが目的のひとつ。
ここでは妊娠中にかかりやすい疾患である「妊娠高血圧症候群」について、理解を深めましょう。どのような人がなりやすいのか、また予防のための生活習慣についてアドバイスを紹介します。
妊娠高血圧症候群とは
妊娠高血圧症候群は妊婦さんの約20人に1人の割合で発症しますので、比較的身近な病気です。(昔は妊娠中毒症と呼ばれていました。)
しかし重症化してしまうとママと赤ちゃんの命に関わる大変危険な状況になるので注意が必要です。
■妊娠高血圧症と妊娠高血圧腎症
妊娠高血圧症候群は、「妊娠高血圧症」と「妊娠高血圧腎症」に分けられます。
妊娠20週以降に高血圧のみ認められた場合を妊娠高血圧症といいます。それ以前に高血圧だった場合は高血圧合併妊娠といいます。
上が140mmHg(重症:160mmHg)以上、下が90mmHg(重症:110mmHg)以上で高血圧となります。
これと合わせて、1日0.3g(重症:2g)以上の蛋白尿が出た場合、妊娠高血圧腎症といいます。最近では蛋白尿が出なくても、肝機能障害、腎機能障害、神経障害、赤ちゃんの発育不良があれば腎症に分類されるようになりました。
妊娠高血圧症候群が赤ちゃんとママに及ぼす影響
早発型と呼ばれる妊娠34週以前で発症した場合は重症化しやすく注意が必要です。
■ママへの影響
・血圧上昇、蛋白尿
・子癇発作(全身のけいれん)
・脳出血
・肝臓や腎臓の機能障害
・HELLP症候群(肝機能障害に溶血と血小板減少)
■赤ちゃんへの影響
・胎児発育不全(赤ちゃんの発育が悪くなる)
・常位胎盤早期剥離(出産前に胎盤が子宮壁から剥がれて赤ちゃんに酸素がいかなくなる)
・胎児機能不全(赤ちゃんの健康状態が悪化する)
・胎児死亡
おすすめ情報
どんな人がなりやすい?ならないための生活習慣
日本産婦人科学会では、以下のような人は妊娠高血圧症候群のリスクが上がるため注意が必要とされています。
・妊娠前から糖尿病・高血圧・腎臓の病気がある
・肥満
・母体の年齢が高い(40歳以上)
・家族に高血圧の人がいる
・双子などの多胎妊娠である
・高齢初産婦
・過去の妊娠時に妊娠高血圧症候群になったことがある
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原因はまだ明らかになっていない
妊娠高血圧症候群の原因を探る研究は多くありますが、まだはっきりと結論が出ていません。
最近の研究では、胎盤の機能が正常に働かず、胎盤の中で様々な物質が異常に作られることでママの全身の血管にそれが作用してしまい、妊娠高血圧症候群となるのではないかといわれています。
■治療は安静と入院が基本
妊娠高血圧症候群になった場合の治療は安静と入院が基本です。ママの血流を安定させ、胎盤に十分な血流量を確保し、赤ちゃんに栄養と酸素を与えるためです。時には降圧剤を投与する場合もあります。
また、この病気になると子癇(しかん)発作といって全身の痙攣が起きる場合があります。その予防のために硫酸マグネシウムという薬を投与することもあります。
最終的に妊娠継続そのものが赤ちゃんとママを危険にさらしていると判断された場合、妊娠週数が満期に達していなくても誘発分娩や緊急帝王切開ですぐに出産となる場合があります。
また、妊娠週数が早い時期(妊娠22週未満)では、残念ながら妊娠を諦めなければならないときもあります。
■予防法は確立されていないが、急激な体重増加に注意
妊娠高血圧症候群にならないための予防法はないのでしょうか。残念ながら現在、これといった予防法が確立されていないのが現状です。
しかし、妊娠中に限らず、一般的に血圧が上がる原因と言われていることは避けたほうが良いでしょう。塩分の摂りすぎや急激な体重増加は血圧を上げる要因となりますので注意してください。
【適切な体重管理】
妊娠前の体格によって、妊娠中の体重増加量の目安が違います。標準体重のママは7〜12kg、やせ型のママは9〜12kg、肥満の場合は医師と要相談といわれています。バランスの良い食事と適度な運動をしながら体重管理をしましょう。
【塩分の摂りすぎに注意する】
一般的にも、1日の塩分量は10g以下が推奨されています。
むくみや蛋白尿が出てきたら、塩分を摂りすぎている可能性がありますので食事に気をつけましょう。カップラーメンやインスタントラーメン、パンは塩分やカロリーが高いので控えめにしてください。料理には減塩を使うのも良いですが、精製塩を天然塩に変えるだけでも違います。
ただ、妊婦さんにとって過度の塩分制限は有効とはいえないと最近はされていますので、塩分量に関しては医師に確認しましょう。
【疲れないように気をつける】
寝不足やストレスでも血圧は上がります。動きすぎたり、疲れたと感じたら横になり安静にしましょう。血流が腎臓や胎盤に届き、血圧が安定します。
長時間のスマホ操作も疲れを増長しますので、寝る2時間前にはやめて静かに過ごしましょう。
《まとめ》
妊娠高血圧症候群はママの血圧が上昇し、重症化するとママと赤ちゃんの命に危険が及ぶため注意が必要な病気です。
塩分の摂りすぎや急激な体重増加に気をつけ、無理をせずに妊娠期を過ごしましょう。
※写真提供:PIXTA
1999年愛知医科大学卒業
その後大垣市民病院にて研修、勤務を経て安城更生病院へ赴任
2006年日本産婦人科学会産婦人科専門医取得
2008年やまだ産婦人科院長就任
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