母乳が出るしくみとは?母乳はどうやって作られる?
母乳とはどのように作られ、分泌されるのでしょうか。
母乳は血液で作られる
はじめに、母乳は血液で作られていることを理解しましょう。乳房の乳腺にある「乳腺葉」という部分が、母乳をつくる工場です。ここに血液が運ばれ、白く変化して母乳となります。その母乳が乳管を通り、乳頭に流れていきます。
この時とても重要なのが、「プロラクチン」と「オキシトシン」というホルモン。これらのホルモンは、母乳が出る仕組みと切っても切り離せない関係にあります。
赤ちゃんが乳首を吸うことで、プロラクチンは母乳の分泌を維持します。そしてオキシトシンが乳腺の周りの筋肉を収縮させ、射乳反射を引き起こします。
またオキシトシンは、「幸せホルモン」や「愛情ホルモン」とも呼ばれ、ママと赤ちゃんを癒して笑顔にする働きもあります。つまり、おっぱいを吸わせれば吸わせるほど、母乳の分泌がよくなるということ。すると赤ちゃんもよく飲んでくれ、ママと赤ちゃんに幸福感をもたらすというわけです。
母乳を出すためには赤ちゃんにたくさん吸わせる
多くの初産婦さんは、産後すぐ母乳がたくさん出て、同時に赤ちゃんも吸い始めるものだと思っているようです。しかし実際、出産当日から3日目までは、にじむ程度の母乳しか出ないことがほとんど。初めての経験だと戸惑うかもしれません。
赤ちゃんもママも初めての授乳です。まずは「赤ちゃんが泣いたら吸わせる」ようにしましょう。しっかりと練習すればお互いコツをつかみ、上手に飲めるでしょう。すると母乳の分泌は安定し、母乳育児が軌道に乗ってくるはずです。
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母乳が出ないのはなぜ?原因とは
母乳が出ない原因に遺伝が関係しているのは、おおよそ2~3%です。乳腺発育不全といって、乳腺が発育しない病気の場合、おっぱいが思春期に大きくなることはほとんどありません。逆に言えばこの病気でなければ、産後の行動次第で、母乳育児が成功する可能性が高いということです。
乳頭刺激が少ないと母乳が出にくい傾向
生後数日の母乳は、まだにじむ程度。生後9日目を過ぎる頃から、母乳の分泌が一定になり始めます。この9日目までの間でいかに母乳量を増やすかが、母乳育児を成功させる鍵となります。
また産後1週間は、先述したオキシトシン・プロラクチンの分泌量と母乳量は、比例関係にあります。産後できるだけ早期に授乳を開始し、ホルモンの分泌を促しましょう。
母乳が出ないと悩むママは、産褥早期に乳頭刺激が少ないと考えられます。具体的には以下のような要因が挙げられます。
・母乳育児に対してあまり積極的でない
・入院中に母子別室で、赤ちゃんと接する機会が少ない
・授乳の際に、正しい抱き方・飲ませ方ができていない
・赤ちゃんがNICUに入っており、直接吸ってもらうことが出来ない
・授乳回数が8回以下、または間隔が4時間以上あく
そのほか、母乳の材料となる水分や栄養素が足りなければ、いくらホルモンが母乳を分泌させようしても増えません。身体が冷えて血行が悪い人も、母乳がなかなか出ないことがあり注意が必要です。
母乳が出ない時にやるべきこと
母乳がたくさん出る人は、前述した要素をクリアし、かつ上手にリラックスできる特徴があります。すぐに母乳を増やすのは難しくても、少しずつ軌道に乗せることはできます。母乳が出ない時は、以下の方法を試してみましょう。
1. 授乳方法を確認する
いくら赤ちゃんが頑張っておっぱいを吸おうとしても、正しい抱き方と吸い付き方でなければ、上手く母乳を吸い取れません。飲み残しは母乳分泌がストップする原因にもなるため、授乳方法をしっかり確認しましょう。
授乳の時は、赤ちゃんとママの身体をしっかりと密着させます。ママのお臍と赤ちゃんのお臍が向き合うようにし、赤ちゃんの身体がねじれていないか確認してください。乳頭をくわえさせる時は、赤ちゃんの唇がしっかりと外側に開いているかどうかも見てみましょう。吸いながら「ちゅっちゅっ」と音がしている時は、浅く吸っているサインです。
抱き方、吸わせ方はとても重要です。正しくできているか、助産師にチェックしてもらうことをおすすめします。
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2. 赤ちゃんが欲しがる時に欲しいだけ飲ませる
母乳は「1日8回以上で、4時間以上の間隔があかないように」と指導を受けるでしょうが、これはあくまでも目安です。回数にとらわれることなく、あくまでも赤ちゃんのペースを大切にしましょう。赤ちゃんが欲しがる時に、欲しいだけ飲ませるように心がけましょう。
3. ミルクをあげすぎない
ミルクをあげすぎると、赤ちゃんがお腹いっぱいになり、母乳を飲まなくなってしまいます。もし混合にする場合は、ミルクの量に注意しましょう。体重測定、哺乳量測定をうまく活用するといいですね。
4. 乳頭混乱に気を付ける
新生児期から長期間、おしゃぶりや哺乳瓶の乳首を使用すると、乳頭混乱を起こしおっぱいを嫌がるケースがあります。ミルクを与える時は、哺乳瓶が必要なので仕方ありません。母乳育児を希望する場合、新生児の頃からのおしゃぶりは使用しないようにしましょう。
5. 飲み残しは搾乳する
飲み残しをそのままにしておくと、母乳の分泌低下につながります。もし赤ちゃんがしっかり飲んでくれず残る時は、搾乳をしてすっきりさせましょう。搾乳には手でする方法と、搾乳器で行う方法があります。自分に合った方法を選択しましょう。
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6. 水分摂取・食事に気を付ける
ママが食べたものが、そのまま母乳になるわけではありません。しかし良質な母乳を作るためには、やはり適切な栄養素をしっかり取り入れることが大切。特に、水分はそのまま血液から母乳となるため、最低でも1日2リットルは摂りましょう。
7. 助産師に相談する
自分で頑張っても改善しない時は、助産師に相談するといいでしょう。おっぱいマッサージをしたり、体質改善の相談に乗ったり、助産師はきっと母乳で悩むママの力になってくれるはずです。
かかりつけの産院の母乳外来や、近くの助産院でもいいので、相談に乗ってもらいましょう。
母乳が出ないことで悩みすぎないで!
「赤ちゃんのために母乳育児を頑張りたい!」と努力しているママほど、母乳が出ない時は焦りやイライラ、焦燥感が募ります。最初からうまくいく人はいません。母乳をあげるのも赤ちゃんが上手く飲むのも、少しコツがいるだけです。
大切なのは「母乳をあげる」ことではなく、ママが楽しく育児をすること。頑張りすぎて授乳が楽しくなくなったら、今までの努力を認め、混合や完全ミルク育児に切り替えてもいいでしょう。母乳をあげないと母親失格、などということは一切ありません。
《まとめ》
母乳の分泌には、プロラクチンとオキシトシンというホルモンが関係します。このホルモンと母乳量には比例関係があり、産褥早期にしっかりと正しい方法で授乳する必要があります。もし授乳が辛くなってしまったら、頑張ってきた自分を認めて、混合や完全ミルクに切り替えるという方法もあります。このように理解しておくと、少し気持ちが楽になるのではないでしょうか。
※写真提供:PIXTA
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1999年愛知医科大学卒業
その後大垣市民病院にて研修、勤務を経て安城更生病院へ赴任
2006年日本産婦人科学会産婦人科専門医取得
2008年やまだ産婦人科院長就任
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