妊娠9週の壁・魔の9週とは?

「妊娠9週の壁」「魔の9週」は医学的な用語や概念はありません。妊娠5週〜7週では超音波で心拍が確認できたのに、妊娠9週前後の検査では心拍が確認できなくなる、といったことがいつしか妊婦さんたちの間で「妊娠9週の壁」・「魔の9週」と言われるようになったようです。
日本の医療・不妊治療から生まれた言葉
「妊娠9週の壁」・「魔の9週」という言葉が生まれた背景には、現代の日本の医療事情と不妊治療が関係しています。
昔は月経予定日を1ヶ月以上過ぎてからの妊娠判定で妊娠8週〜9週あたりが初診でしたが、現在は市販の妊娠検査薬や超音波検査の性能が高くなり、妊娠6週〜7週あたりで受診し、心拍を確認できるようになりました。最初の心拍を確認してから次の受診はちょうど2~3週間後の妊娠9週前後となります。
また、不妊治療のクリニックに通っている方は、妊娠判定後、妊娠6週~7週で心拍を確認し、妊娠9週で赤ちゃんの成長が確認できて、不妊治療が卒業となります。
妊娠7週〜9週は流産率がもっとも高い時期と言われています。逆に、そこを超えると流産率がかなり低下するため、妊娠を継続できるかどうかの第一関門とも言えます。
妊娠9週はつわりがピーク
つわりは妊娠5週頃から始まり、1ヶ月くらい続くと言われています。妊娠9週あたりがちょうどピークとなり、吐き気や眠気、イライラ、頭痛などの症状で妊婦さんのメンタルはどん底という場合もあります。
これを妊娠9週の壁と呼んで、頑張って乗り越えようとしている妊婦さんもいます。
妊娠9週で流産する割合と原因
妊娠9週あたりまでに赤ちゃんはどのような状態になっているのでしょうか。また、その頃に流産してしまう割合はどれくらいなのか、その原因について解説します。
妊娠9週までに赤ちゃんの器官が作られる
赤ちゃんは、最初は小さな卵だったのが魚のような形になり、人間らしい体へと変化していきます。脳や全身の動きを司る中枢神経系や心臓、手足、消化器官といった大切な器官は妊娠4週から7週頃に発生・分化していきます。
妊娠8週頃には人間としての形がほぼ出来上がっています。この時期を「器官形成期」と呼び、とても重要な時期です。
妊娠9週に流産する原因は染色体異常が半数以上
人の場合、受精から着床、その後の器官形成期までに約70%以上が流産していると言われています。これは、薬や放射線、感染症、染色体の異常などが原因で器官形成の致命的な障害となり、発育が停止するためです。奇形や染色体の異常を持つ多くが子宮内で亡くなり、流産として自然淘汰されているのです。
受精から着床までの1週間で約30%が、その後心拍確認前までに30%程度流産が起きています。ここまでが化学流産と言われています。
妊娠が確認されてから、出血や腹痛などの症状がなく心拍が停止した状態を稽留流産(けいりゅうりゅうざん)と言い、胎嚢を確認した後妊娠12週未満の流産を早期流産と言います。これらの原因の半数以上が染色体異常だと考えられています。
流産という経験は本当に辛いもので、あの時もっと安静にしておけば、もっと早く病院に行っていればなどと後悔してしまう妊婦さんもいるでしょう。しかし、早期流産は妊婦さんの生活や行動が原因ではないので、必要以上に自分を責めないでください。
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妊娠9週で心拍確認できなくなったら?

妊娠9週で赤ちゃんの心拍が確認できなかった場合、1〜2週間後に再度診察となることが多いです。その時に心拍が確認できなければ、流産と診断されます。
流産後は待機療法と手術の2つ
稽留流産の場合、胎嚢が子宮内に残っているため、排出を待つか、手術で胎嚢を除去するかの2つの対応があります。どちらが良いかという優劣の差はないとされており、本人の体調や希望を考慮して方針が決定されます。それぞれの方針について見ていきましょう。
待機療法
自然に胎嚢が排出されるのを待ちます。体に負担がかからないのが特徴ですが、いつ排出されるか分からなかったり、きれいに全て排出しきらず出血が持続したりして生活に支障をきたす場合があります。
また、2週間程度待っても排出がない場合は、手術となることがあります。
手術
手術で器具を使って胎嚢を排出する方法です。確実な排出を望むことができ、仕事などで忙しい方は予定が組みやすいことがメリットです。
また、自然排出を望んでいても子宮筋腫や子宮内膜症があるなど、子宮の状態によっては手術の方が安全な場合もあります。
《まとめ》
「妊娠9週の壁」・「魔の9週」とは、もっとも流産率が高い妊娠7週〜9週を乗り越え、妊娠継続のための第一関門のことです。妊娠9週あたりまでの流産は、染色体異常が原因のほとんどで、妊婦さん本人の生活や行動が影響しているわけではありません。自分を責めたりせず、事態を受け入れられるようご自身のケアを考えていきましょう。
※写真提供:PIXTA
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1999年愛知医科大学卒業
その後大垣市民病院にて研修、勤務を経て安城更生病院へ赴任
2006年日本産婦人科学会産婦人科専門医取得
2008年やまだ産婦人科院長就任
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