妊娠中に風邪!胎児への影響とは
妊娠中のママは風邪をひいても、お腹の赤ちゃんに悪影響を及ぼす可能性はほぼありません。まずは安心してください。ただし高熱や脱水、激しい咳などの重い症状が出ると、赤ちゃんにも影響するリスクがあります。
妊娠週数ごとに、風邪が及ぼす影響と気を付けたいことを考えてみましょう。
妊娠初期(~妊娠15週)の風邪
妊娠初期は、赤ちゃんの器官がつくられる大切な時期です。この頃は特に、高熱と薬の服用に注意が必要です。妊娠時期によって内服できる薬が異なることもあるので、自己判断で薬を飲むのはやめましょう。
また妊娠初期の風邪では、体力を消耗し、脱水症状にも陥りやすいです。つわりがひどいと、さらに脱水症状に陥りやすいので注意しましょう。
ママが脱水症状になると、赤ちゃんに十分な血液を送ることができなくなり、赤ちゃんが循環不全を起こすこともあると言われています。
妊娠初期症状は風邪とも似ているので、見分けがつかない人もいるでしょう。妊娠の可能性がある場合は、まずは妊娠検査薬で確認することをおすすめします。
妊娠3週未満は、ほとんどのママが妊娠に気づかない期間です。この頃に内服してしまった薬については、赤ちゃんへの影響はありません。それ以降、妊娠に気づかずに内服した薬があれば、産科医に相談してみましょう。
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妊娠中期(妊娠16週~27週まで)の風邪
つわりがおさまり、体調が安定してくる時期です。基礎体温が37度を超えていたママも、この頃までには平熱に戻ることが多いようです。
ただし個人差があり、37度以上が続いても他に症状がなく元気であれば、心配する必要はありません。
この時期に風邪をひいてしまった場合も、注意事項は妊娠初期とほぼ同じです。赤ちゃんに重要な器官形成期は終わりましたが、薬を内服するときには必ずかかりつけ医に確認しましょう。ひどい咳が長期にわたって続くと、お腹が張り、切迫早産になってしまうこともあります。早めに対処しましょう。
妊娠後期(妊娠28週~)の風邪
赤ちゃんの体の大切な器官はできあがっている時期です。しかし頭痛薬などに含まれることのあるイブプロフェンやロキソプロフェンを多く使うと、胎児の動脈管閉鎖を引き起こし、心不全や胎児水腫になる恐れがあります。引き続き、薬の内服には注意が必要です。
またひどい咳が切迫早産につながる、高熱により赤ちゃんの心拍が早くなるなどの影響も考えられます。重症化する前にかかりつけの産科医に相談しましょう。
風邪以外の感染症にも注意
麻疹(はしか)や風疹、水痘(水ぼうそう)、腎盂腎炎など、風邪と似た症状が出る感染症は色々あります。
風疹や麻疹はお腹の赤ちゃんの成長や発達に多大な影響を与える可能性がありますし、それ以外でも流早産のリスクとなったり、妊娠中は重症化しやすい感染症もあります。体調に違和感があるときは、ためらわずにかかりつけ医に相談しましょう。
妊娠中に風邪をひいたときの対処法
妊娠中に風邪をひいてしまったら、どう対処すればいいでしょうか。
まずは休養
基本的に風邪は薬では治りません。症状を緩和する目的で薬が使われますので、軽い症状でママ自身がつらくないようであれば、内服の必要はありません。
まず栄養のあるものを食べ、しっかり休養をとりましょう。脱水症状予防のために、水分補給も大切です。食事が摂れていないと、塩分不足により水分が吸収されないことがあります。スポーツ飲料などの電解水などを利用しましょう。
体を温める食べ物や飲み物をとること、室内の適度な加湿をすることも効果的です。
薬はすべて医師に相談してから
38度以上の高熱が出るときや、咳がひどい、水分が摂れない、症状がひどく体がつらいときなど、薬で症状を抑えたいときもあります。
しかし、薬の内服が赤ちゃんに影響を与えることもあるので、妊娠中は自己判断での内服は避けましょう。症状が長く続いたり重くなったりする、薬を飲みたいと思う時には、かかりつけ医に相談しましょう。
薬の種類ごとの注意事項を簡単に解説します。
■点鼻薬や鼻スプレー
産婦人科で処方される点鼻薬は、限られた部分だけに作用します。しかし点鼻薬の中には、全身に作用するものもあります。
また妊娠中に使用可能な点鼻薬にも、血管を収縮する作用のある成分は含まれることがあり、わずかですが子宮を収縮させる作用があります。
■漢方薬
妊娠中にも比較的安全とされる漢方薬ですが、中には妊娠中に使用できない成分が含まれるものもあります。
■うがい薬
うがい薬には、ポビドンヨード(ヨウ素)が含まれることがあり、お腹の赤ちゃんへの甲状腺機能に影響を与える可能性がわずかにあります。
■のど飴
のど飴には、医薬品と医薬部外品、食品の3種類があります。医薬部外品と食品は通常の摂取量であれば、使用して問題ありません。
虫歯の原因になりやすい糖分や、カフェインが含まれることがあるので、摂取量や頻度には注意しましょう。医薬品には薬の成分が含まれているので、かかりつけ医や薬剤師に相談しましょう。
妊娠中に風邪をひいたときの受診の目安
特に妊娠初期は、風邪なのか妊娠初期症状なのかわからず、どんな時に受診したらいいか迷いますね。受診の目安をみてみましょう。
・体温が38度以上のとき
風邪以外の感染症の可能性もあるので、かかりつけの産科医に相談して、受診してください。
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・体温が37.5度以上のとき
熱以外にのどの痛みや関節痛、咳、頭痛などの症状があれば、受診するとよいでしょう。
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・体温が37度前後のとき
風邪症状があれば、安静にして体調回復に努めてください。体がつらい場合や、心配なこと、違和感があればかかりつけの産科医に相談しましょう。
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受診するときの注意
風邪症状がある場合、他の妊婦さんへ感染させないよう配慮が必要です。まずはかかりつけ医に電話で相談してみましょう。内科の受診をすすめられたら、母子手帳とお薬手帳を持参し、妊娠週数と経過をしっかり伝えましょう。
《ママ体験談》妊娠中に風邪をひいて辛かった!
妊娠中に風邪をひいてしまうと、不安も大きいですね。先輩ママたちのエピソードを紹介します。
「妊娠初期に風邪が長引いて辛かった」
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- 妊娠初期に風邪をひいてしまい、咳とのどの痛みがひどかった。薬を飲めないと思って、はちみつやのど飴をなめていたが、ずるずると咳が長引き、精神的につらかった。妊娠中の風邪って、こんなに長引くのかとぐったり。なんとか乗り越えて妊婦健診の時に伝えたら「つらかったら、受診してくれたら薬を出せたのに」と言われて拍子抜け。我慢せずにもっと早く受診すればよかった。
「安定期にひどい風邪」
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- マスクをしていると上の子に外され、風邪予防が難しかった2人目妊娠中。安定期に入る頃に風邪をひいてしまった。熱、鼻水、喉の痛みで食事もとれず。育児と仕事もあり、寝込むこともできなかった。内科で「妊娠中でもこの薬なら大丈夫」と、風邪薬を処方してもらった。
「風邪をひいたまま分娩!」
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- 予定日も近くなった頃、夫から風邪をうつされてしまい、治りきらないまま出産へ。出産前日はのどの痛みや咳で眠れず、体力を消耗。当日は鼻が詰まって口からしか呼吸ができず、のどがカラカラになっていた。陣痛の合間に水分補給をして鼻をかみ、本当に大変だった。
妊娠中は風邪予防が大切
妊娠中は自身にとって異物である赤ちゃんを拒絶しないよう、免疫反応が下がった状態になっています。つまり、通常よりも感染症にかかりやすく、重症化しやすい状態です。しっかり風邪の予防策をとりましょう。
1. 手洗い・うがい
感染症予防の基本です。外出後、子どもの世話をした後、病気の人の近くにいたとき、トイレの後、調理前や食事の前などには、流水と泡立てた石鹼で、時間をかけてしっかりと手洗いしましょう。
すぐに手を洗えないときは、アルコールジェルも活用できます。
2. こまめな掃除
ドアノブや手すり、いすやテーブルなど人がよく触る場所は、こまめに拭き掃除や消毒をしましょう。外から帰ってきた家族が触った場所などから、間接的に感染する可能性があります。
3. マスクの着用
多くの人が集まる場所、公共交通機関を利用するときなどは、マスクをしましょう。
4. 人混みを避ける
不特定多数が集まる場所には、できるだけ出向かないほうが安心です。特に密閉空間は避けましょう。
5. のどを乾燥させない
部屋の加湿や、こまめな水分補給も効果があります。
6. ストレスや疲労をためない
妊娠中は、普段以上にストレスや疲労がたまりやすいです。十分な休息とバランスのよい食事、自分なりのストレス解消法で、疲労やストレスを解消しておきましょう。
7. 家族からの感染を予防する
妊婦さんは免疫が落ちているので、家族は無症状でも、感染してしまうことがあります。日用品の共用はできるだけ避けましょう。またインフルエンザなどの予防接種は、しっかり受けてもらいましょう。
家族が風邪をひいてしまい看病する場合は、互いにマスクをし、接触後はこまめに手洗い、うがいをしましょう。部屋の換気、加湿も大切です。
《まとめ》
妊娠中の風邪はつらく、不安にもなります。予防と早めの休息で、重症化しないようにしましょう。風邪症状が妊娠に与える影響もあるので、ひどくなる前に医師に相談することも大切です。薬の内服は、必ず相談してからにしましょう。
※写真提供:PIXTA
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1999年愛知医科大学卒業
その後大垣市民病院にて研修、勤務を経て安城更生病院へ赴任
2006年日本産婦人科学会産婦人科専門医取得
2008年やまだ産婦人科院長就任
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