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2022.08.18
化学流産とは?時期と確率は?【医師監修】原因・症状と予防
妊娠検査薬では陽性を示しているのに、生理が来てしまった!という経験はありませんか。最近はあまり使われませんが、妊娠を待ち望む女性は「化学流産」という言葉を聞いたことがあるかもしれません。今回はこの化学流産について、理解を深めていきましょう。化学流産が起こる確率や症状、原因や予防について産科医師が解説します。
目次
「化学流産」とは?起こる時期と確率
「化学流産」とは、妊娠検査薬で陽性反応となったにも関わらず、子宮内に胎嚢が確認できる前に流産してしまうことです。妊娠検査薬での検査時は陽性を示したのに、生理のような出血がきてしまい、そこで化学流産だったと気づくケースがほとんどです。
出血量は通常の生理と同じくらい、もしくはそれよりも多い量。まれにレバー状のような、塊が排出されることがあります。
この化学流産は、胎嚢が確認できた後に起こる「臨床的流産」とは異なり、流産には含まれません。(つまり妊娠歴には含まれません。)妊娠検査薬を使用していなければ、妊娠していたことすら気づかず、「生理の量が少し多いな」くらいにしか感じないでしょう。このように化学流産は気づかれないことも多いため、はっきりとした確率はわからないのが現状です。
化学流産の症状
化学流産は、生理予定日前後の「妊娠超初期」に起こります。化学流産となった時の症状を紹介していきます。
化学流産の症状1. 生理予定日前後の出血や痛み
「妊娠超初期」とは医学用語ではありませんが、妊娠0週~3週頃までを指す場合があります。化学流産はその時期に、少し多めの出血や痛みを伴って起こります。そのため、妊娠していたことすら気づかないこともあります。
化学流産の症状2. 妊娠検査薬で「陽性」の後に「陰性」
受精すると受精卵から、hCG (ヒト絨毛性ゴナドトロピン)というホルモンが分泌されます。すると妊娠検査薬は、このホルモンに反応して陽性になります。しかし2~3日経過してから再検査してみると、このホルモンの分泌量が少なくて「陽性反応が薄くなる」、あるいは「陰性」になることがあるのです。この場合に、何らかの原因で化学流産してしまったと考えられます。
化学流産の症状3. 妊娠検査薬で「陽性」の後に出血
受精によるhCG(ヒト絨毛性ゴナドトロピン)の分泌で、一度は妊娠検査薬で陽性反応がでます。しかし、hCGの低下により妊娠を維持できずに、生理が来てしまいます。
化学流産の症状4. 妊娠に伴う症状がない
化学流産は妊娠超初期に起こるものです。そして化学流産の場合は、つわりを引き起こす原因にもなるhCGが低下していることから、乳房の張りや吐き気などの症状がないことが特徴です。
化学流産の症状5. 「陽性」が出ても低体温が続く
通常、基礎体温は「低温層」「高温層」の二相性。そして妊娠すると、妊娠を維持するために「高温層」が続きます。しかし化学流産をしてしまった場合は、陽性反応が出たとしても高温層が続かずに、「低温層」になってしまいます。
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化学流産はなぜ起こる?考えられる原因
化学流産は繰り返すものではなく、未然に防げるものでもありません。しかし妊娠を望む女性にとっては、化学流産も臨床的流産と同じくらいショッキングな出来事です。
以下に、化学流産が起こる原因について述べていきます。
■染色体異常
受精卵に何らかの染色体異常があり、妊娠を継続する力がなかったことが考えられます。早期流産のほとんどは、この染色体異常が考えられます。化学流産も染色体異常の可能性が高いです。
■着床異常
受精卵は通常、子宮壁にある内膜に着床し成長していきます。しかし卵管などに着床し「子宮外妊娠」となると、妊娠が継続できずに化学流産してしまうことがあります。
■ホルモンバランスの異常
妊娠が成立すると、受精卵からhCGが分泌され妊娠を継続させようと働きかけます。しかしこのホルモンがうまく分泌されないと、妊娠を維持できず早期流産となってしまいます。
■子宮形態の異常
双角子宮など、子宮の形態に異常がある場合です。着床や受精卵の成長が妨げられて、早期流産してしまう可能性が高くなります。
■感染症
クラミジアなどの感染症に罹患してしまった場合は、受精卵の着床を妨げてしまい早期流産の原因になります。
■母体の健康上の問題
血液中に血の塊ができやすいなど、何かしら母体に健康上の問題があると、化学流産を引き起こしてしまうことがあります。
化学流産は予防できる?なりやすい人の特徴
妊娠を待ち望んでいる女性にとって、流産は避けたいものです。しかし化学流産を含む流産は、予防しようと思っても予防できるものではありません。原因に染色体異常が関係していることが多くあり、子宮内で育つだけの力がないためです。
ましてや超早期の流産であるため、化学流産をしたという認識のない人も多くいます。35歳以上の高齢妊婦さんに起こりやすいという特徴もありますが、必ず化学流産するというわけでもありません。
いずれにしても、30代を過ぎると流産の可能性はだんだん高くなりますので、注意が必要です。
また何らかの異常で不妊治療を受けている人も、受精卵が十分に育つ環境ではないことが多く、化学流産を起こす可能性もあります。しかしこれは不妊治療に限ったことではなく、自然妊娠でも十分に起こることが考えられます。
妊娠検査薬の使い方&病院受診のタイミング
妊娠しているかを早く知りたいがために、予定より早い時期に何度も妊娠検査薬を使ってしまった人もいるかもしれません。
現在の妊娠検査薬は精度がよくなっていて、妊娠しているかどうかの判断が早くできます。しかしそれゆえに、知る必要のない化学流産という事実を知ってしまうことも。そうして悲しみに浸ってしまうこともあると、理解しておかなければいけません。
ここでは正しい妊娠検査薬の使い方や、病院受診のタイミングについて紹介します。
妊娠検査薬は2種類ある
妊娠検査薬には、「生理予定日の1週間後から使用できるもの」と、「生理予定日当日から検査可能な早期妊娠検査薬」の2種類があります。一般的な妊娠検査薬であれば、尿中のhCGの量が50IU/Lを超えると反応するようになっています。この量に到達するのは、生理予定日から1週間~1週間半後といわれています。
また早期妊娠検査薬は、反応するhCGの量が25IU/Lであり、生理予定日頃から検査可能です。こちらは第1類医薬品に分類され、薬剤師のいる薬局で、対面販売でないと購入できません。
容易な早期妊娠検査薬の使用は控える
妊娠したか否かを早く知りたい、という気持ちはよくわかります。しかし早めに妊娠を知ったからといって、病院に行くタイミングを間違えると、胎嚢すら見えずにさらに不安な日々を送ることになってしまいます。
また妊娠したからといって、それが正常な妊娠であるかどうかはわかりません。もしかしたら子宮外妊娠、胞状奇胎、さらには知らなくていいはずの化学流産になるかもしれないからです。
そう考えると、早期妊娠検査薬を安易に使用したり、検査薬を何度も試したりしない方がいいかもしれません。
病院はいつ受診する?
正常妊娠の診断には、胎嚢と心拍の確認が必要です。タイミングを見計らって病院に行くようにしましょう。胎嚢が確認できるのは妊娠4週~5週以降、つまり生理予定日から1~2週間後です。
それ以前に病院を受診しても、胎嚢が小さくて見えないことがあります。するとさらに不安を煽ってしまいますので、適した時期の受診をおすすめします。
《まとめ》
妊娠を希望する女性にとって、化学流産はとてもつらい出来事です。妊娠検査薬を早くに試してしまったがゆえに、化学流産を知る場合もあるでしょう。妊娠しているかどうか、そわそわしてしまう気持ちもわかりますが、できるだけゆったりと気持ちを構えて過ごしましょう。
※写真提供:PIXTA
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1999年愛知医科大学卒業
その後大垣市民病院にて研修、勤務を経て安城更生病院へ赴任
2006年日本産婦人科学会産婦人科専門医取得
2008年やまだ産婦人科院長就任
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