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2022.05.27
乳児湿疹の原因とは【小児科医】アトピーとの違い&赤ちゃんのスキンケア
新米ママの中には、赤ちゃんの湿疹に悩んでいる人も多いのではないでしょうか?今回は乳児湿疹の種類やその原因について、理解を深めていきましょう。赤ちゃんに必要なスキンケアの方法を、小児科医師が詳しく解説します。
目次
新生児期の赤ちゃんの湿疹
乳児湿疹は、1ヶ月健診を受診するまでの「新生児期の湿疹」と「それ以降の湿疹」で分けて考えるのがよいでしょう。まずは新生児期の赤ちゃんの湿疹について、詳しく見ていきます。
新生児期の赤ちゃんの湿疹「脂漏性湿疹」と「乾燥性湿疹」
1ヶ月健診前の新生児期の赤ちゃんの湿疹には、おでこなどに出る「脂漏性湿疹(しろうせいしっしん)」と、ほっぺなどに出る「乾燥性湿疹」の2種類があります。それぞれ対処法が異なってきます。
新生児期の赤ちゃんの湿疹は、生理的な現象であり、体質的に出てくることが多いです。ただしそのまま放っておくと、将来の皮膚の状況の悪化や、アトピー性皮膚炎につながる可能性があり注意が必要です。
1.「脂漏性湿疹」の特徴&ケア方法
新生児の脂漏性湿疹は、おでこと鼻根(びこん)部、いわゆる「Tゾーン」にかさぶたのように出る湿疹です。触ると、カスがボロボロと落ちるような状態になります。
脂漏性湿疹の場合は、皮脂を洗い流してあげることが大切です。沐浴の際に「顔は洗わない」「ガーゼで拭くだけ」だと、脂漏性湿疹は出やすくなります。石鹼でしっかり顔を洗いましょう。石鹸は固形よりも、皮膚への刺激が少ない「液体石鹸」がおすすめです。赤ちゃんの皮膚は弱酸性のため、アルカリ性である固形石鹸は、できるだけ避けた方がいいでしょう。
また赤ちゃんの皮膚のためには、「泡でやさしく洗う」のがよいです。そのため、液体石鹸のなかでも泡タイプのものを選びます。泡を皮膚に馴染ませて皮脂を浮かせ、最後にしっかりとシャワーのお湯で洗い流しましょう。37.5~38℃のお湯できれいに洗い流してあげれば、Tゾーンの脂漏性湿疹は徐々に改善していくでしょう。
2.「乾燥性湿疹」の特徴&ケア方法
乾燥性湿疹とは主に、赤ちゃんのほっぺや顎の下などに出る湿疹です。顔が赤くなるのは「紅斑(こうはん)」と呼ばれる状態。悪化すると皮膚がカサカサしたり、表面がひび割れ、ピカピカした状態になります。
乾燥性湿疹の赤ちゃんは、肌を一生懸命洗っているママに多い傾向にあります。赤ちゃんのほっぺにも汚れが出るため、洗い流すこと自体は悪くありません、しかし洗いすぎると皮膚の潤いまで流され、乾燥性湿疹の原因となってしまいます。また使用している洗浄剤が、強すぎる可能性もあります。
そして余分な皮脂や汚れを洗い流した後に、きちんと保湿をして水分を補ってあげることも重要です。特に皮膚トラブルが見られる赤ちゃんは、洗浄したら5分以内に保湿をしましょう。保湿剤は、頭・両手・両足・おなか・背中の7ヶ所に、それぞれ500円玉くらいの分量を使うのが目安です。
注意したいのは、オーガニックや無農薬などと謳った保湿剤です。なかには、小麦などのアレルギー成分が入っていることも。それを皮膚に塗布することで、アレルギーを発症してしまったというケースもあります。食べることと、皮膚に塗ることは別物です。
アレルギー成分や体に有害な物質を取り除いて、製品化されたものを選ぶようにしてください。おすすめは、セラミドという成分が入っている保湿剤です。なかでも保存料を使用していない、赤ちゃん用のものを選ぶと良いでしょう。
新生児以降の赤ちゃんの湿疹
1ヶ月健診前から上記のケアをきちんと行っているにも関わらず、慢性的に皮膚の不調が続く場合があります。「乳児湿疹」あるいは「アトピー性皮膚炎」の可能性が高いでしょう。ここでは両者の見分け方について、詳しく解説していきます。
「乳児湿疹」と「アトピー性皮膚炎」の違い・見分け方
「乳児湿疹」と「アトピー性皮膚炎」の違いは、皮膚の病変の長さです。皮膚の病変が1~2ヶ月にわたり慢性的に続く場合には、アトピー性皮膚炎の疑いが高いといえます。
またアトピー性皮膚炎の特徴には
・左右対称に出る
・年齢によって出る場所が決まっている
ことも挙げられます。
一方、アレルギーに関係しない乳児湿疹やじんましん、虫刺されなどの場合には、
・体の一部に限局的に出る
・再現性なく一時的に出る
ことが多いです。
アトピー性皮膚炎の症状が片方だけに出る、というケースは比較的稀です。基本的に左右対称に出ることが多く、肘の内側、くるぶしや膝の周り、そのほかには首に症状が出やすいです。年齢を重ねるにつれて出る部位も変化し、幼児期になると、両手の親指の手背などが荒れやすくなります。
赤ちゃんのアトピー性皮膚炎は、乾燥しやすい顔に出ることが多いです。逆に言えば、アトピー性皮膚炎の赤ちゃんは、Tゾーンが比較的きれいな場合があります。ほっぺや顎が赤い、汁が出ている、ガサガサになっている赤ちゃんは、アトピー性皮膚炎の可能性が高いでしょう。
1.「アトピー性皮膚炎」の赤ちゃんのスキンケア方法
基本的なケアは洗浄と保湿ですが、アトピー性皮膚炎の場合、特に保湿が大切になります。
皮膚には、紫外線や水分の蒸発、ウイルス、細菌から体を守るためのバリア機能があります。こうした皮膚のバリア機能低下によって、アトピー性皮膚炎が起こる場合、まずは皮膚を清潔にしてあげることが第一です。そのうえで、しっかりと保湿するようにしましょう。
赤ちゃんの皮膚は、大人に比べてかなり薄いのも特徴の一つ。そこで洗浄剤や保湿剤は、できる限り皮膚に優しいものを選ぶようにしてください。また、1日1回のケアでは不十分な場合もあります。そのような場合は、できるだけ1日に2~3回行うように心がけましょう。
病院では保湿剤として、ワセリンが処方されることがあります。確かにワセリンには、皮膚からの水分の蒸発量を減らす効果はあります。ただこれらを大量に顔などに塗ると、髪の毛がくっついて煩わしいですし、塗ったところがテカテカと光ってしまうため、嫌がるお子さんもいると思います。
こうした時には、病院で処方される保湿剤にこだわる必要はありません。むしろ市販の保湿剤の方が、塗り心地や使用感に優れていたり、塗った後の乾き方や、浸透の仕方などが工夫されたものもあります。皮膚のバリア機能を考えると、「セラミド」という成分が配合されているものを選ぶのがよいでしょう。
ただし注意してほしいのが、セラミドの含有量です。化粧品の場合、ごく少量であっても入っていれば記載ができ、比率までは書かれていません。セラミドと書いてあっても、実際にはほんの少ししか配合されていない場合も考えられます。
事前に詳しく調べたうえで、保存料が入っておらず、皮膚にやさしいもので、なおかつお財布にもやさしい保湿剤を選んでください。そして皮膚の調子が悪い時だけでなく、普段から保湿剤を塗る習慣をつけましょう。
特に皮膚が敏感なお子さんの場合は、歯磨きと同じようにスキンケアを毎日のルーティンにすると、アレルギー疾患の発症率が低くなるという研究結果もあります。
2.「乳児湿疹」の赤ちゃんのスキンケア方法
乳児湿疹の場合も、アトピー性皮膚炎のスキンケアと同じように、皮膚の洗浄と保湿が大切です。
市販の保湿剤には、ワセリン、ベビーローション、クリームタイプなど、さまざまな種類があり迷うかもしれません。毎日使い続けることを考えると、成分を細かく気にするよりも、子どもが塗って嫌がらないもの、心地よいものを選ぶのがおすすめです。子どもとの相性を見ながら、お気に入りのを探すのがよいでしょう。
季節に応じて、さまざまなタイプを使い分けることも重要です。保湿力が最も高いのは軟膏で、次いでクリーム、ローションという順番になります。そのため乾燥する冬場は、軟膏やクリームタイプなど、保湿力が高いものを選びます。逆に湿度が高く汗をかきやすい夏場には、サラサラしたローションを使うのが一般的です。
ワセリンの保湿作用は、皮膚からの水分の蒸散を抑えるものです。ラップをするような状態になるため、汗が蒸散しにくくなります。そのため夏に、ワセリンや軟膏を使うのはおすすめできません。
おすすめ情報
乳児湿疹の赤ちゃんの治療法&受診の目安
乳児湿疹で病院を受診する目安は、今までお話したスキンケアを自宅で毎日しているにも関わらず、症状が改善しない時です。こういった時には病院を受診し、ステロイドなどの薬を処方してもらいましょう。
処方された薬をきちんと塗ること
乳児湿疹で受診する際に、ぜひ知っておいて欲しいのが、処方された薬をきちんと塗ることです。アトピー性皮膚炎の場合、皮膚のバリア機能が低下し、慢性的な皮膚炎の状態に陥っている人には「プロアクティブ療法」が推奨されています。
プロアクティブ療法は、弱~中程度のステロイドを最小限の使用量で、毎日使います。これにより症状が悪化する回数を減らし、強い薬を使わないようにする治療法です。皮膚の状態が良くなってきたら、塗る頻度を毎日から1日おき、2日おきと間隔をあけ、定期的にステロイドを使う治療となります。
その一方で、「リアクティブ療法」という治療もあります。例えば、アトピー性皮膚炎が季節や環境によって悪化した時だけ、強いステロイドを使用します。この場合、症状が改善すると薬を塗らなくなるため、悪化する頻度が高まり、結果的に強いステロイドを使うことになりがちです。
ステロイドの使用量は、大人の人差し指の先から、第一関節まで薬を乗せた分(ワンフィンガーチップユニット)。これがその人の、両手分の面積を塗る量に相当します。「あまり塗らない方がいい」と考えて、少量しか塗らない人もいます。しかし1日2回、しっかりと正しい量を塗ることで、結果的に副作用も少なく抑えることができます。
保湿剤と併用する際には、まず保湿剤を塗り、道路を舗装するように皮膚を平らにします。その上からステロイドを塗る方が、馴染んで良く伸びるのでおすすめです。
塗る・塗らないを繰り返したり、勝手に量を減らしたりしていると、次に受診したときに「この子はこのランクの薬では効いていない」と判断され、より強いステロイドが処方される可能性があります。ステロイドには弱いものから強いものまでランクがあり、最初は弱い薬から、徐々に試していくことが多いからです。
きちんと塗って効果があれば、毎日塗っていたものを2日に1回、あるいは3日に1回と減らしていくこともできます。先生の指示のもと、段階的に頻度を減らしていく方が、離脱もしやすく皮膚にとってもいいです。
母乳と乳児湿疹の関係性
母乳と乳児湿疹の関係性については、さまざまな説があり、断定的なことは言えません。ただし少なくとも、赤ちゃんがよほど重度のアレルギーをもっていない限り、ママが食べたものが母乳を通じて赤ちゃんに移行し、アレルギー症状がでることはありません。一般的には、それほど神経質になる必要はないでしょう。
赤ちゃんの洗い方の注意点
乳児湿疹の原因がママにあるとすれば、むしろ洗い方の問題です。特に脂漏性湿疹の場合は、皮脂の分泌が盛んで、それをきちんと取り除いていないことが原因です。アレルギー体質は遺伝しますが、ママの体質が原因で脂漏性湿疹ができるということはありません。
赤ちゃんの時期は、性ホルモンの分泌が盛んで、赤ちゃんに乳汁や月経が出ることもあるほどです。特にTゾーンは皮脂が出やすいため、毎日洗うことをおすすめします。1~2日放っておくだけでも、湿疹が出ることもあります。
個人差はありますが、保湿さえすれば洗って悪いことはありませんので、ぜひ毎日洗ってあげてください。特にコロナ禍では、赤ちゃんにアルコール消毒を使うことはできません。その意味でも、清潔に保つことが大切です。
そして洗った後は、必ず保湿をしてください。歯を磨いたらうがいをするのと同じです。「おはよう・歯磨き・スキンケア」と言うように、朝のあいさつや歯磨きと同じく、スキンケアも習慣化してもらえればと思います。
また赤ちゃんの時期に、アトピー性皮膚炎と診断されても、がっかりしないでくださいね。
医師側には、アトピー性皮膚炎と診断することを敬遠する先生もいます。逆にお茶を濁さずに、しっかり診断してくれる先生は、アトピー性皮膚炎の治療に詳しい可能性もあります。お子さんと病気に、しっかり向き合ってくれる先生かもしれません。
毎日の正しいスキンケアと適切なプロアクティブ療法で、赤ちゃんのアトピー性皮膚炎はきっと改善すると思います。
※写真提供:PIXTA
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資格
医学博士
日本睡眠学会専門医
日本アレルギー学会指導医、専門医
日本小児科学会指導医、専門医
略歴
1991年 静岡県立沼津東高校卒業
1998年 山梨医科大学(現山梨大学)医学部医学科卒業 同大学小児科入局
以後、山梨大学医学部救急部、山梨県立中央病院新生児科などの勤務を経て
2009年 小児科学講座助教
2014年 小児科講座学部内講師
2017年 杏嶺会一宮西病院 小児科部長
2023年 尾張こどもの睡眠・呼吸・アレルギークリニック開院・院長
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