育児休業給付金とはどんな制度?
育児休業給付金とは、簡単に説明すると育児休業中に国からもらえるお金のことです。育児休業給付金は雇用保険から給付されています。雇用保険の保険者は日本政府ですから、国が育児のため収入が一定数減った労働者を、補助するためにできた制度と言えます。
ちなみに育児休業とは、平成3年に制定された、子どもを育てる労働者が法律に則って取得することができる休業のことです。平成7年からは、すべての事業所で義務化。労働者側が育児休業を申し出た場合、必ず取得させなくてはならないことになっています。
育児休業給付金をもらうための条件
育児休業給付金は、労働者であれば誰でも貰えるというわけではありません。支給には、これから紹介する5つの条件を満たす必要があります。この支給条件を正しく理解して申請し、きちんと育児休業給付金をもらい、子育てに専念できるようにしましょう。
条件1. 雇用保険に加入している
育児休業給付金の支給を受ける条件の1つ目は、雇用保険に加入し保険料を納めていることです。育児休業給付金は、雇用保険から労働者が受け取る給付金です。そのため雇用保険の加入が、育児休業給付金の支給条件になっています。
雇用保険は、「1週間の所定労働時間が20時間以上」、かつ「31日以上の雇用見込みがある」という2点に該当すれば、原則すべての人が加入対象となります。
条件2. 育児休業中の就業日数が1ヶ月で10日以下
育児休業中の就業日数が1ヶ月で10日以下というのは、文字通り1ヶ月で10日以上出勤しないということです。
たとえば4月は9日間出勤、5月は8日間というように、毎月10日以下の出勤でなくてはなりません。「4月に15日出勤したが、5月には3日しか出勤しなかったので平均して10日以下」という人では、条件を満たしませんので、育児休業給付金の申請ができません。
あくまで各月に10日以下の出勤日数、ということなので気を付けましょう。ちなみに「以下」なので、10日目の出勤までは条件に合致します。
条件3. 育児休業前2年間で1ヶ月に11日以上の勤務が12ヶ月以上
育児休業給付金を欲しいがために、会社に入ってすぐに育児休業を取得しお金だけ貰う、ということを防ぐためにこの条件があります。しかし入社してすぐでも、育児休業給付金を申請できる条件の人がいます。
その条件は、下記3点です。
●転職前後で合わせて過去2年間に、11日以上働いた月が12ヶ月以上になる
●転職の際、1日の休職期間もなく再就職し、かつ前職で雇用保険に加入していた
●前職を退職した際に、失業給付の申し込みを行っていない
この場合は、育児休業給付金の申請ができるので忘れずに行いましょう。
条件4. 育児休業中の給与が休業前1ヶ月の賃金の8割以下
具体的な計算公式は、「休業開始時賃金日額×支給日数×0.8」です。この金額よりも育児休業中に賃金が多く支払われている場合、支給額は0円です。休業開始時賃金日額は、原則として育児休業開始6ヶ月前の総支給額(税込み額面で賞与は除く)を、180で割った金額になります。
また8割に満たない場合でも、収入に応じて支給額が減額される場合があります。
条件5. 育児休業後の退職予定がない
育児休業給付金は、育児休業後の職場復帰を前提とした給付金として理解されています。そのため育児休業を取る前から退職をするつもりなのであれば、育児休業給付金の申請対象とはなりません。
しかし、受給資格確認後に退職する予定になった場合、退職日を含む支給単位期間の1つ前までは支給対象となります。「支給単位期間」とは、育児休業を開始した日から起算した1ヶ月ごとの期間をいいます。
2月15日で退職する場合、1月初めから1月末までが支給単位期間であれば、その期間は育児休業給付金の受給が認められます。
条件をすべて満たさないと育児休業給付金を受け取れない
ここまで紹介してきた条件をすべて満たさなければ、育児休業給付金を申請することができません。たとえ5つの条件のうち4つ満たしている人でも、育児休業給付金が申請できることはありません。
たとえば、育児休業中に勤め先の給与が0円だったとしても、副業などで休業前1ヶ月の賃金が8割以上になっている場合は、育児休業給付金が受け取れません。
第二子やパート勤務も育児休業給付金は受け取れるの?
育児休業給付金で意外と多い質問が、「パート社員でももらうことができるの?」ということ。答えは「YES」です。
前述したように、育児休業給付金をもらうためには、雇用保険に加入していることが条件になります。パート社員は雇用保険に加入できないと思っている人が多く、そのため育児休業給付金ももらえないだろうと思う人も一定数いるようです。
しかしパート社員でも、雇用保険に加入することは可能です。その他、育児休業給付金の条件もパート社員だから満たせないというものは無く、雇用保険に加入していれば育児休業給付金を受け取ることができます。
また2人目の育児休業中も、育児休業給付金を受けることができます。育児休業後にすぐ2人目の育児休業に入れば、1人目と同じ額の育児休業給付金をもらえる可能性があるでしょう。
しかし注意が必要なのは、育児休業から復帰後に11日以上働いた月がある場合、それが育児休業給付金を計算する対象となることです。それによって休業開始時賃金日額が下がった場合は、給付額が1人目より下がることもあります。
育児休業給付金の金額の計算方法
育児休業給付金の1支給単位期間ごとの給付額は、「休業開始時賃金日額×支給日数×67%」です。(育児休業開始から6ヶ月経過後は、67%から50%に変更されます)
たとえば平均して賃金月額15万円の場合、育児休業開始から6ヶ月の支給額は月額10万円程度で、6ヶ月経過後は7.5万円程度になります。
ちなみに支給額には上限があり、6ヶ月までは305,319円で、6ヶ月経過後は227,850円です
育児休業給付金の受給期間が延長される条件
育児休業給付金の受給期間は、養育している子が1歳となった日の2日前までです。しかし一定の条件を満たすことで、受給期間が延長されることがあります。延長期間は、養育される子が1歳6ヶ月になるまでと、2歳になるまでの2つの場合です。
この2つをそれぞれ見ていきましょう。
1歳6ヶ月まで延長の条件
以下の2つのいずれかに該当する理由で、養育する子が1歳に達する日以後の期間に育児休業を取得する場合には、その子が1歳6ヶ月に達する日の2日前までの期間が育児休業給付金の支給対象になります。
(1) 育児休業の対象となる子が1歳になる後の期間で、保育園に通えないことがしばらく続くとき。※あらかじめ1歳に達する日の翌日について、保育所等における保育が実施されるように、申込みを行う必要があります。
(2) パパあるいはママが、育児休業の対象となる子が1歳になる後の期間で、下記に該当したとき。
・死亡したとき
・怪我、病気、精神疾患で養育できなくなったとき
・離婚などで対象となる子と別居するとき
・6週間以内に出産予定(双子以上の場合は14週間)か、産後8週間を経過しないとき
2歳まで延長の条件
1歳6ヶ月の延長条件とほぼ一緒です。養育する子が1歳という条件だったのが、すべて1歳6ヶ月に変わります。簡単に説明すると、1歳6ヶ月になっても1歳の時と状況が改善できない場合に、延長が実施されます。
育児休業給付金の申請方法・必要書類
育児休業給付金の申請に使う必要書類は、下記6つです。
・雇用保険被保険者休業開始時賃金月額証明書
・育児休業給付受給資格確認票
・育児休業給付金支給申請書
・賃金台帳、労働者名簿、出勤簿またはタイムカード
・母子健康手帳の写し
・育児休業給付金を受け取る金融機関受取口座の通帳の写し
育児休業給付受給資格確認票、育児休業給付金支給申請書は勤務先が発行してくれますので、必要事項を記入して勤務先に提出します。母子健康手帳の写し、育児休業給付金を受け取る金融機関受取口座の通帳の写しは、自らで作成し勤務先に提出しましょう。その他は勤務先に任せて問題ありません。
受給延長の場合は、下記3つが必要書類となります。
・育児休業申出書
・育児休業給付金支給申請書
・保育園の入所不承諾の通知書など育児休業の延長が必要だと証明する書類
これらを勤務先に送るだけで申請は完了となります。
《まとめ》
育児休業給付金は金銭面において、子育て中の心強い味方となってくれます。正しく申請して最大限制度を活かし、安心して子育てをしていきましょう。
※写真提供:PIXTA
1952年に名称を婦人少年協会として当時の労働省婦人少年局(現・厚生労働省雇用均等・児童家庭局)の外郭団体として発足。
1980年に財団法人となり、1999年、「女性労働協会」と名称を変更。
2012年には一般財団法人として、働く女性の地位向上及び女性労働者の福祉の増進を図ることを目的とし、さまざまな事業を展開している。
>詳しく見る