妊娠中に積極的に摂りたい栄養素とは?
妊娠中の食事で積極的に摂りたい栄養素は、大きく分けると「葉酸、鉄分、たんぱく質、カルシウム、食物繊維」の5つに分類されます。ここでは、それぞれの栄養素の特徴や、具体的な食品についてお伝えします。
葉酸:海藻類、緑黄色野菜など
葉酸は、妊娠する1ヶ月以上前から妊娠3ヶ月までの間、特にしっかりと摂りたい栄養素です。妊娠前から十分な葉酸を摂取すると、赤ちゃんの二分脊椎や無能症といった、神経管閉鎖障害の発症リスクを低減できるとされています。
葉酸が多く含まれる食品には、次のようなものがあります。
□ 海藻類
□ 卵
□ 納豆
□ 緑黄色野菜
妊娠初期に、つわりの影響で食事が思うように摂れないときは、サプリメントを活用して葉酸を摂取するのもおすすめです。
ただし、妊娠中期以降に葉酸を過剰摂取すると、小児喘息のリスクが上がったという報告もあります。妊娠中期からはサプリの摂取はやめて、通常の食事から葉酸を摂取するのが望ましいでしょう。
鉄分:牛肉、かつお、小松菜など
鉄分は、妊娠期間中を通して意識して摂取したい栄養素です。妊娠中は身体の中の血液の量が増えたり、赤ちゃんや胎盤でも多くの鉄分が必要になるため、鉄欠乏による貧血になりやすい状態です。
次のような食品を取り入れて、普段より鉄分を摂取しましょう。
□ 赤身の肉
□ かつお
□ 小松菜
□ ほうれん草
□ あさり
妊娠初期では13mg/日、妊娠中期・後期では20mg/日が推奨量です。特定の食品に偏ることなく、さまざまな食材を主菜や副菜として取り入れて、鉄分の摂取量を増やしてみてください。
たんぱく質:鶏肉、卵、大豆製品など
たんぱく質は、筋肉や臓器をつくるのに欠かせない大切な栄養素で、赤ちゃんの身体をつくる主成分にもなっています。妊娠中は普段よりもたんぱく質を多く摂取するのが望ましく、妊娠中期には55g/日、妊娠後期には75g/日の摂取が推奨されます。
たんぱく質が多く含まれる食品は次の通りです。
□ 肉
□ 魚
□ 大豆製品
たんぱく質が多く含まれている食品は、主菜としてしっかりと補いましょう。手軽に摂取するには、いつもの食事に豆腐や卵料理をプラスするのがおすすめです。
カルシウム:牛乳、小魚、海藻類など
カルシウムも胎児の成長に欠かせない栄養素で、丈夫な骨や歯、身体をつくります。しかし現代人の食生活では、不足しがちな栄養素です。妊娠中に関わらず、日頃から意識して摂取しましょう。
カルシウムを多く含む食品は次の通りです。
□ 牛乳
□ ヨーグルト
□ 小魚
□ 高野豆腐
またカルシウムは、ビタミンDと一緒に摂取することで吸収されやすくなります。ビタミンDは、日光を浴びることで体内でも生成されるため、カルシウム摂取だけでなく屋外の活動も取り入れるといいでしょう。適度な運動は、妊娠中の身体づくりにも大切です。
ママと赤ちゃんのための栄養バランス
妊娠中のバランスの良い食事を知るには、厚生労働省が発表している「妊産婦のための食事バランスガイド」を活用するのがおすすめです。食事バランスガイドを見ると、「何を」「どれだけ」食べればいいかがわかります。
栄養バランスの大切さ
お腹の中の赤ちゃんは、成長に必要な栄養をママからもらって育ちます。妊娠中のママの栄養状態は、赤ちゃんの将来の生活習慣病などの発症リスクに関係するという研究もあります。赤ちゃんがすくすく育つためには、偏りのない食事が大切です。
また妊娠中のママは、赤ちゃんに栄養を分け与えなければならないため、栄養不足になったり栄養バランスが悪かったりすると、体調を崩してしまう可能性もあります。
ママ自身と赤ちゃんの健康のために、妊娠中は「主食」「副菜」「主菜」「牛乳・乳製品」「果物」を組み合わせて、バランスの良い食事を摂ることを意識しましょう。
【妊娠期別】食事バランスガイド
妊娠初期・中期・後期とお腹の赤ちゃんの成長にともなって、ママに必要なカロリー摂取量も少しずつ増えていきます。1日に必要な食事量や栄養バランスを意識し、妊娠期間を通して健康な身体を維持しましょう。
妊娠初期
妊娠前の食事に+50キロカロリーが必要です。50キロカロリーというと、りんご1/2個や茹で卵1個などがあります。また妊娠初期は葉酸を摂取した方がいいため、野菜や海藻類での補給を心がけましょう。
つわりで思うように食事ができないときは、食べられるものを食べたいときに食べれば大丈夫です。葉酸はサプリメントで補うのもおすすめです。
妊娠中期
妊娠中期になると、妊娠前の食事に+250キロカロリーが必要になります。栄養バランスガイドによると、主菜(小さめ)・副菜・果物をそれぞれ一皿ずつ追加した量が、一日あたりの目安とされます。
つわりが落ち着き安定しやすい時期なので、いろいろな種類の食品を摂り、食事バランスを意識した献立づくりをしてみましょう。
妊娠後期
妊娠後期の食事では、妊娠前の食事に+450キロカロリーが必要です。栄養バランスガイドによると、主食・主菜(小さめ)・副菜・果物のすべてを一皿ずつ追加した量が、一日あたりの目安となります。
妊娠後期は、たんぱく質も摂取したい時期です。体重が増加しやすくなるので食べ過ぎに注意し、塩分・糖分・脂肪分を控えた食事ができるといいですね。
塩分の摂取量にも気をつけよう
妊娠中に必要な栄養素を摂ろうと、あれこれ食べていると、いつの間にか塩分摂取の目安量を超えてしまうこともあります。2020年に厚生労働省から発表された「日本人の食事摂取基準」では、成人女性が1日に摂取する塩分量の目標は6.5g未満となっています。
母子ともに健やかに出産を迎えるために、塩分量にも気をつけると良いでしょう。単純に塩の摂取量だけでなく、調味料に含まれる塩分などにも気を配って、健康な食生活を送りましょう。
妊娠中におすすめ!おいしい減塩レシピ
『あっさり鶏だしにゅうめん』
レシピ提供:味の素株式会社
豆苗には葉酸が含まれます。妊娠初期は、無理のない範囲で食べやすく、作りやすいものを食べましょう。麺類は汁を全て飲むと塩分が高くなりがちですが、減塩の調味料を使うえば手軽に塩分を控えられます◎
●そうめん:3束
●鶏ささ身:3本
●豆苗:1袋
(A)水:2カップ
(A)「丸鶏がらスープ™」<塩分ひかえめ>:小さじ2
●「AJINOMOTO ごま油好きの純正ごま油」:小さじ2
●針しょうが:1かけ分
1. ささ身はスジを取り、2~3等分に切る。豆苗は長さを半分に切る。
2. 鍋に1. を入れて火にかけ、沸騰したら、1. のささ身を加えて3~4分煮る。ささ身に火が通ったら、取り出して粗熱を取り、手でほぐす。スープはとっておく。
3. 別の鍋に湯を沸かし、そうめんを表示時間通りにゆでる。ゆで上がり1分前になったら、1. の豆苗を加え、一緒にゆでる。流水にとって水気をきる。
4. 器に盛り、2. のささ身をのせ、上から2. のスープをかける。ごま油を回しかけ、針しょうがをのせる。
◆栄養情報(1人分)
・エネルギー 376kcal ・塩分 1.3g ・たんぱく質 23.7g ・野菜摂取量 55g ※野菜摂取量はきのこ類・いも類を除く |
『牛こまスタミナ丼』
レシピ提供:味の素株式会社
緑黄色野菜も補える丼ぶりです!レンチンで作れるのでとっても簡単。お肉に片栗粉をまぶすことで、調味料が絡んで減塩でも満足できますよ。麦ごはんにすると食物繊維が手軽に補えます。
●牛切り落とし肉:150g
(A)酒:大さじ1/2
(A)片栗粉:大さじ1/2
●にら:1束
●にんじん:1/5本(30g)
(B)砂糖:小さじ1
(B)しょうゆ:小さじ1
(B)「丸鶏がらスープ™」<塩分ひかえめ>:小さじ1
(B)おろしにんにく:小さじ1
(B)「AJINOMOTO ごま油好きの純正ごま油」:小さじ1
●押麦ご飯:2杯
●いり白ごま:適量
1. 牛肉はひと口大に切る。にらは3cm長さに切り、にんじんはせん切りにする。
2. 耐熱容器に1. の牛肉、(A)を入れてもみ込む。1. のにんじんを加えてふんわりとラップをかけ、電子レンジ(600W)で3分加熱する。
3. (B)、1. のにらを加えて混ぜ、ふんわりとラップをかけ、再び、電子レンジで2~3分加熱する。
4. 器に押麦ご飯を盛り、3. をのせ、ごまを散らす。
◆栄養情報(1人分)
・エネルギー 606kcal ・塩分 0.9g ・たんぱく質 13.2g ・野菜摂取量 66g ※野菜摂取量はきのこ類・いも類を除く |
『だしが効いてる親子丼』
レシピ提供:味の素株式会社
鶏肉と卵でしっかりとたんぱく質が摂れる一品。だしをきかせておいしく減塩、しいたけのうま味も活かした定番和風丼です。
●鶏もも肉:1/2枚(150g)
●卵:3個
●玉ねぎ:1/2個
●しいたけ:2枚(30g)
●水:1/2カップ
(A)「お塩控えめの・ほんだし®」:小さじ2
(A)みりん:小さじ2
(A)酒:小さじ2
(A)しょうゆ:小さじ1
●ご飯:2杯(茶碗)(280g)
●みつば:適量
1. 鶏肉は2cm角に切り、玉ねぎ、しいたけは薄切りにする。みつばはザク切りにする。卵は溶きほぐしておく。
2. 小さめのフライパンに分量の水を入れて火にかけ、沸騰したら1.の鶏肉を加える。1~2分したら1.の玉ねぎ・しいたけを加えてフタをして2~3分煮る。全体に火が通ってきたら、(A)を加えて味を調える。
3. 1.の溶き卵2/3量を加えてフタをして中火~強火で30秒煮る。残りの溶き卵1/3量を加えてフタをせずに中火~弱火で1分くらい煮て火を止める。
4. ご飯をよそい、3.をかけ、1.のみつばを散らす。
◆栄養情報(1人分)
・エネルギー 523kcal ・塩分 1.3g ・たんぱく質 27.6g ・野菜摂取量 51g ※野菜摂取量はきのこ類・いも類を除く |
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※写真提供:PIXTA
1999年愛知医科大学卒業
その後大垣市民病院にて研修、勤務を経て安城更生病院へ赴任
2006年日本産婦人科学会産婦人科専門医取得
2008年やまだ産婦人科院長就任