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2021.01.11
乳腺炎を予防するには?【助産師にきく】乳腺炎の症状&原因
産後のママの悩みのひとつ「乳腺炎」。おっぱいのトラブルだということは広く知られており、ケーキや脂っこいものを食べると乳腺炎になりやすい、などと話題になることもあるでしょう。実は、ママの食生活が原因で乳腺炎になるという、科学的根拠はないのです。乳腺炎とはどのような症状で、何が原因でおこるのか、正しく知っておきましょう。もし乳腺炎になってしまった時の治療についても合わせて、助産師が解説していきます。
目次
授乳中になりやすい乳腺炎!その症状とは
授乳中のママが時々かかる乳腺炎とは、おっぱいの中にある、母乳を作っている乳腺という組織が炎症を起こしている状態です。乳腺炎の症状としては、主に次の5つがあります。
1. 発熱(37.5度以上)、悪寒
2. 乳房にしこりができる
乳房の一部に
3. 痛みがある、あるいは押すと痛みを感じる
4. 赤くなる
5. 熱を持つ(乳房全体の場合も)
また、乳腺炎は主に2種類あります。
●乳汁がうまく出せず、乳腺内に溜まってしまうことで起こる「うっ滞(うったい)性乳腺炎」
●乳腺内に母乳が溜まっているところへ乳管から細菌が入り、感染してしまうことで炎症を起こす「急性化膿性乳腺炎」
乳頭を中心にして乳房を4分割すると、外側上の部分に起こる頻度が高いです。通常は、どちらか片側の乳房に起こります。高熱や乳房の激痛など、ママにとって辛い症状を伴うこともあります。ママ自身が乳腺炎が起きやすい状況を知っておくと、もし乳腺が詰まった時にも、悪化しないようセルフケアができます。また冷静に予防、対処できるコツを知ることで、受診のタイミングも分かります。
食べ物の制限はNG!乳腺炎の原因と予防法
乳腺炎の2大原因は、乳汁のうっ滞と感染です。まずは乳汁を溜めすぎないことが、1番の予防になります。では、乳腺炎の主な原因と予防のためのケアについて、具体的に見ていきましょう。
【乳腺炎の原因&予防】1. 母乳量が多い
作られる母乳量が、赤ちゃんの飲みたい量よりも多すぎてしまうママもいます。赤ちゃんに飲んでもらった後も、おっぱいが張ってつらい時には、張りが残る原因について考えていきましょう。
・母乳が赤ちゃんの飲みたい量より多い
・抱き方が良くない、赤ちゃんがうまく吸い取れない
・乳腺に詰まりがある
・赤ちゃんがあまり飲みたくない気分だった
など様々な原因があります。
搾乳をこまめにしてしまうと、より多くの母乳が作られ、また余って張る原因になってしまいます。ママが「圧抜き」と言って、おっぱいを両手で包み込むように圧迫して、少し母乳を出してみましょう。その後、張りが治まれば、自身で対処できたということでしょう。
もし張りが残る、不快感や痛みがあって、1日経っても改善しないようでしたら、助産師に相談しましょう。
また、授乳中のママの食事に関しては、特定の食材や調理法が、乳腺炎の直接的な原因になるという科学的根拠はありません。
さまざまな食材からバランス良く栄養をとることが大切です。また食事の内容によっておっぱいの質は変化しないことが分かっています。極端な食事制限でママの心身への負担にならないように気をつけましょう。
【乳腺炎の原因&予防】2. 授乳姿勢が適切でない
赤ちゃんが効果的におっぱいを吸えていないと、乳房の一部、または全体に乳汁が残る原因になります。適切な姿勢で授乳することで効果的に母乳が赤ちゃんに届けられ、詰まりにくくなります。横抱き、縦抱き、フットボール抱きなど色々ありますが、どの授乳姿勢でも大切なポイントをご紹介します。
・赤ちゃんの耳、肩、腰の位置が一直線でねじれていない
・赤ちゃんの体がぴったりとママの体に引き寄せられている
・赤ちゃんの全身が支えられている
・赤ちゃんの鼻が埋まらず、乳房に下あごがくっついている。
・赤ちゃんは大きなお口で乳輪までくわえている
さらに、時々抱き方を変えつつ授乳すると、乳汁がうっ滞しにくく、詰まりの改善につながります。
【乳腺炎の原因&予防】3. 授乳回数の変化
引越しや冠婚葬祭のタイミング、ママや赤ちゃんの病気などで、おっぱいの授乳回数が急激に減ってしまうこともあるでしょう。これが乳汁うっ滞の原因となります。できる限り、授乳回数が極端に減らないようにしましょう。どうしても減ってしまう時は、搾乳をして母乳の溜まりすぎを防ぐことが大切です。
【乳腺炎の原因&予防】4. ストレスと疲労
ママがストレスを感じるとホルモンの働きにより、母乳を外に出す働きは悪くなり、乳汁がうっ滞しやすくなります。また、ストレスで炎症が起こることもあります。子育ては大変なこともありますが、ママが幸せで元気であることが、乳腺炎予防にも改善にも大切。ストレスや疲労が溜まらないように、ご家族と一緒に家事や赤ちゃんの育児をしていきましょう。
【乳腺炎の原因&予防】5. 乳頭の傷
乳頭に傷があると、痛みで飲ませにくく、乳汁を外に出すホルモンの分泌を弱めてしまいます。もう一度、授乳姿勢や吸わせ方を見直し痛みが軽減すれば、上手に深く飲めている証拠。傷も改善しやすく、うっ滞の予防、改善につながります。痛みがひどい時には、痛みのある方のおっぱいは一時的に直接飲ませることをお休みして、搾乳して飲ませても大丈夫です。
また、できるだけ傷つかないように注意して授乳すること、傷ついたらひどくならないうちに早めに対処すること、細菌が繁殖しやすい母乳パットなどはこまめに変えることが大切です。
おすすめ情報
乳腺炎は早めに処置を!治療やケアを受けよう
おっぱいの詰まりや乳腺炎の症状が出てしまった場合は、授乳姿勢(抱き方、おっぱいの含ませ方)を見直して、頻繁に授乳することで良くなることもあります。産婦人科や助産院に相談して、助産師によるアドバイスやケアを受けましょう。
また、医師の診断で必要な時は消炎鎮痛剤などが処方され、細菌の感染も疑われる時には抗菌剤を処方されます。改善せずに急激に悪化してしまった場合には稀に、たまった膿を切開して取り除くという治療が必要になります。
《まとめ》
乳腺炎は、ママ自身が原因や対処法を知り、適切な授乳方法を心がけることで落ち着いて対処することができます。母乳育児で悩む人は多く、とても繊細で難しいもののようにみえるかもしれませんが、実はとてもたくましく赤ちゃんに最適なようにできています。ただ、どんなに気を付けてもたまにバランスを崩すことはありますので、有効な予防や早期対処の工夫を参考にしてください。
※写真提供:PIXTA
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監修者
1955年に日本助産師会東京都支部として、助産師相互の協力と助産専門職の水準の維持向上並びに利用者に対する質の保証を図り、母子保健事業を通じ、女性と子ども及び家族の健康・福祉の改善・向上に貢献することを目的として活動を開始。
2010年一般社団法人格を取得。
2014年公益法人となり、地域に根差した公共性の高い事業に取り組んでいる。
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