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2024.06.14

【助産師監修】妊婦は昆布を食べても大丈夫?上限量はどのくらい?

昆布は栄養素が豊富な食材です。「妊娠中も積極的に摂るのがよさそう!」と思うかもしれません。しかし逆に、「ヨウ素が多く含まれる海藻類は避けたほうがいいのでは?」と言う人もいます。実際にはどちらが正解なのでしょうか。妊婦さんは昆布を食べてもよいのか、それとも控えたほうがよいのか、詳しく解説していきます。

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妊婦は昆布を食べても大丈夫!

妊婦の昆布

 

妊婦さんは昆布を食べても大丈夫です。妊娠中は、昆布に含まれる「ヨウ素」を摂取する必要があります。しかしヨウ素は、摂り過ぎに注意が必要な栄養素です。

日本人はもともと、ヨウ素が豊富な海産物を多く食べる習慣があります。どちらかというとヨウ素不足よりも、サプリメントなどでのヨウ素の過剰摂取が心配されます。

 

ここではヨウ素が不足した場合、過剰摂取した場合、それぞれどのような影響があるのかを考えていきましょう。

 

ヨウ素の役割

ヨウ素とは海藻類や魚介類に多く含まれるミネラルの一つで、胎盤を通じて、ママから赤ちゃんに届けられます。体内のヨウ素のほとんどは甲状腺にあります。

ヨウ素は甲状腺ホルモンの材料であり、ママからもらったヨウ素を使って、赤ちゃんは甲状腺ホルモンをつくります。甲状腺ホルモンは、体温や心拍数の調節など、体の基本的な機能に関わっています。

また、脳や骨などの発育にも深く関わります。

 

ヨウ素が不足すると

赤ちゃんの発育に深く関わる甲状腺ホルモンの材料が、ヨウ素であることは解説しました。妊娠中の長期間でヨウ素が不足すると、流産や死産、胎児の先天性異常、先天性甲状腺機能低下症などを招く恐れがあります。

 

2018年にユニセフ(国連児童基金)と栄養向上のためのグローバル同盟(Global Alliance for Improved Nutrition:GAIN)が発表した報告によれば、毎年1,900万人近くが、胎児期から幼年期におけるヨウ素の不足により、生涯にわたるダメージを脳に受けているそうです。

これは、毎年世界で生まれる子どもの約14%にあたります。ヨウ素不足により、神経的・精神的障害が出る危険性があると指摘し、警鐘を鳴らしています。

また世界保健機関(WHO)も、ヨウ素の欠乏が子どもの認知能力の低下や妊娠中の胎児死亡、流産を招く原因になると指摘しています。

 

そのため世界では、塩にヨウ素を添加することにより、ヨウ素欠乏症を減らそうという取り組みが大規模になされています。ただし日本人の場合、通常の食生活でヨウ素が不足することはあまりありません。

 

ヨウ素を摂り過ぎると

ヨウ素は海水に多く含まれます。昔から海藻や魚介類など、海に由来する食品を多く摂る習慣のある日本人は、日常的に十分な量のヨウ素を摂取していると考えられています。

そのため日本人の妊婦の場合、ヨウ素の欠乏が心配されることは少なく、どちらかというと過剰摂取が懸念されます。

 

ヨウ素を過剰摂取すると、赤ちゃんやママの甲状腺機能の低下がみられることがあります。一般的には、ヨウ素の過剰摂取をやめれば甲状腺機能は元に戻ります。しかし甲状腺機能が低下した状態が続くと、赤ちゃんの体の成長や精神発達の遅れなどの原因になってしまいます。

 

余ったヨウ素の多くは尿として排泄されるので、通常の食事でのヨウ素の過剰摂取はあまり心配はいりません。しかし、ヨウ素が非常に多く含まれる昆布や、ヨウ素を含むサプリメントの摂取には気を付けたほうがよさそうです。

 

 

妊婦が一日に昆布を食べられる量は?

これまで説明したように、妊娠中に摂取するヨウ素の量は多すぎても少なすぎても、赤ちゃんに悪影響を与える可能性があります。ヨウ素を多く含む食品である昆布の食べ方が気になりますね。

では妊婦さんは、どれくらい昆布を食べるのがよいのでしょうか。ヨウ素の摂取量の目安から解説していきます。

 

ヨウ素の摂取量の目安

厚生労働省の「日本人の食事摂取基準」(2020年版)によれば、成人女性におけるヨウ素の推定平均必要量は130μg/日です。

妊婦さんの場合は、さらに110μg/日を付加することをすすめられています。つまり妊婦さんは、ヨウ素を240μg/日(0.24mg/日)摂取するとよいでしょう。(1mg=1000μg)

 

そしてし、ヨウ素の摂取は上限量も定められています。上限量とは、その性別年齢のほとんどすべての人々が健康障害を起こすことのない、栄養素摂取の最大の量のことです。

この量を超えたからといって、必ずしも健康に害があるというわけではありませんが、その範囲内であれば、安心して摂取してよいと言えるでしょう。

妊婦さんと授乳中ママのヨウ素の摂取の上限量は、成人女性の上限量3000μg/日(3mg/日)よりも少ない2000μg/日(2mg/日)に設定されています。

 

日本人のヨウ素摂取量は平均1~3mg/日と推定されており、普段から推定必要量の10倍以上を摂取している人も多いようです。ただし海藻類を食べない日本人の場合、ヨウ素摂取量は平均で73μg/日という報告もあり、まったく海藻を食べないママは、ヨウ素不足も考えられます。

普段だしを使わない洋食が多く、海藻類や魚介類の摂取量が極端に少ない場合は、少し意識してヨウ素を摂ることが必要かもしれません。

 

昆布を食べる量の目安

妊娠中に必要なヨウ素を摂取するには、どのくらい昆布を食べる必要があるのでしょうか。なんと、わずか0.1gほどです。ちなみに他の食品だと、1日の推定必要量を摂取するため、

・乾燥カットわかめ2.4g

・焼き海苔11.5g

・ところてん100g

が必要です。これらを比べてみると、昆布がいかにヨウ素を多く含んでいる食品かわかりますね。

では、妊婦さんのヨウ素の摂取上限量2mgとは、どのくらいの昆布の量になるのでしょうか。

 

【妊娠中のヨウ素の摂取上限量2mg】

・煮干し昆布や刻み昆布 1g

・昆布の佃煮 18g

・昆布だし(水出し)37g ※大さじ2程度

・昆布だし(煮出し)18g ※大さじ1程度

 

少ない量でも、上限を超えてしまいますね。

昆布だしを使った合わせ調味料や、昆布エキスを使用した加工食品にもヨウ素が含まれます。昆布エキスはめんつゆやインスタントラーメン、ドレッシングなど、普段口にする様々な食品に使われており、日本人が過剰に摂取しがちというのは納得できます。

 

ちなみに、通常の1食に使用される量に含まれるヨウ素はどのくらいでしょうか。

 

【一般的な食事に含まれるヨウ素の量】

・刻み昆布 8g ※ヨウ素は18.4mg

・昆布だし(水出し)150g ※ヨウ素は7.95mg

・昆布だし(煮出し)150g ※ヨウ素は16.5mg

 

これらをみても、やはり簡単に摂取量の上限を超えてしまいます。ヨウ素の摂取量が多少増えても、健康な人は排泄により調節できますが、長期間にわたり毎日摂り過ぎることには注意が必要です。

 

 

妊婦が昆布を食べるときのポイント

昆布を食べるとき

 

前述したように、昆布はヨウ素が非常に豊富な食材です。意識せずに普段から摂取していることも多いため、妊娠中には少し意識したほうがいいかもしれません。昆布を扱うときに気を付けるポイントを解説します。

 

1. 食べ方を工夫する

昆布をそのまま食べると、あっという間に摂取量の上限を超えてしまいます。とろろ昆布やおぼろ昆布などの、削った昆布も同様です。

そのまま昆布を食べることは避けて、だしに使う程度にとどめることをおすすめします。だしで使う場合も、かつおだしのブレンドなど工夫すると過剰摂取を避けられます。

 

2. 他の食品で置き換える

毎回昆布だしを使うのではなく、いりこだしや、かつおだし、しいたけだしに置き換えると安心です。いりこやかつおにもヨウ素は含まれますが、昆布に比べるとごく少量なので、安心して食べることができます。

 

3. 「和風」と名の付く調味料や料理に注意

ドレッシングなどの調味料や料理名に「和風」と名前がついている場合には、うまみ成分として昆布エキスが使われていることが多いです。成分表示を確認してみましょう。

 

4. ヨウ素を排出する食品と組み合わせる

大豆にはヨウ素の吸収を阻害し、排出させる働きがあると言われています。ヨウ素を多く含む食品を食べるときには、一緒に大豆製品を食べるとよいかもしれません。

 

 

《一覧》ヨウ素を多く含む物

昆布以外では、どのようなものにヨウ素が多く含まれているのでしょうか。

 

食品(海藻・魚介・卵・肉)

ヨウ素を含む食品は多くありますが、昆布以外の食品に含まれるヨウ素は少量なので、心配し過ぎる必要はありません。むしろ栄養バランスを崩さないように、食べ過ぎには注意しつつ、色々な食品を食べるように心がけましょう。

 

参考までに、ヨウ素を多く含む食品には以下のようなものがあります。それぞれ一般的な1食あたりの量で、含まれるヨウ素を説明します。(1mg=1000μg)

 

海藻類

・海苔1g(1/2枚):ヨウ素は60μg

・水戻しわかめ10g:ヨウ素は190μg

・ところてん100g:ヨウ素は240μg

他にめかぶ、もずく、ひじき、寒天などが海藻類として挙げられます。

 

魚介類

・まだら100g(大1切れ):ヨウ素は350μg

・ししゃも30g(1尾):ヨウ素は22μg

・生かつお100g:ヨウ素は25μg

・たらこ40g(1腹):ヨウ素は52μg

・牡蠣50g(大1個):ヨウ素は33.5μg

・アサリ50g(中5個):ヨウ素は27.5μg

他にすけとうだら、あわび、あんこう、いわし、あじなどがあります。

 

卵・肉など

・鶏卵50g(中1個):ヨウ素は8.5μg

他にうずらの卵、レバー、ホルモンなどもあります。ヨ―ド卵はヨウ素が強化されているので避けるようにし、通常の鶏卵を選びましょう。

 

サプリメント

食材だけでなく、サプリメントにもヨウ素が含まれていることは多いです。「ヨウ化カリウム」「ヨウ化ナトリウム」と表示があると、ヨウ素が含まれます。マルチビタミン・ミネラルのサプリメントには注意が必要です。

 

ヨード系うがい薬

イソジンなどのヨード系うがい薬にも、ヨウ素が含まれます。毎日使用するとヨウ素が粘膜から吸収され、過剰摂取になることがあるので要注意です。

 

 

妊娠中の昆布に関するよくある質問

妊娠中の昆布まつわる質問にお答えします。

 

Q. 昆布を食べ過ぎたらどうすればいい?

ヨウ素を摂り過ぎてしまったからと言って、必ずしも胎児に悪影響が出るわけではありません。健康な人であれば、余剰分は体内に蓄積されずに、尿として排出されます。特に日本人は、伝統的にヨウ素を多く含む食品を食べていたため、過剰摂取による影響が出にくい体質と言えるようです。昆布を食べ過ぎてしまったと思っても、心配し過ぎず、気づいた時点から摂取量を減らしましょう。どうしても不安な場合は、かかりつけの産科医に相談してみてください。

 

Q. おしゃぶり昆布など昆布菓子は食べていい?

おしゃぶり昆布は、乾燥昆布に味付けをしたものです。乾燥昆布1gには、妊婦さんの1日の摂取上限である2mgのヨウ素が含まれます。おしゃぶり昆布や酢昆布などの菓子は、食べる量に十分気を付けたほうがよいでしょう。毎日ではなく食べる間隔を十分にあけることで、ヨウ素が排出される期間をとりましょう。

 

《まとめ》

 

ヨウ素は欠乏しても過剰になっても、ママや赤ちゃんの健康に影響が出る可能性があります。ヨウ素が大量に含まれる昆布は控えめにし、それ以外の食品をバランスよく食べ、赤ちゃんに必要な栄養素がしっかりと摂れるよう心がけましょう。

 

※写真提供:PIXTA

 

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ママのお悩みの声

妊娠中は昆布だしを使わないようにする?

妊婦が気を付ける食べ物で意外なものは?

         

1955年に日本助産師会東京都支部として、助産師相互の協力と助産専門職の水準の維持向上並びに利用者に対する質の保証を図り、母子保健事業を通じ、女性と子ども及び家族の健康・福祉の改善・向上に貢献することを目的として活動を開始。

2010年一般社団法人格を取得。

2014年公益法人となり、地域に根差した公共性の高い事業に取り組んでいる。

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