【胎盤とは】役割と位置について
「胎盤」とは、赤ちゃんが健康に育つためになくてはならない存在です。その構造は非常に繊細で、とても重要なもの。ここでは、胎盤の役割や位置について詳しく解説していきます。
胎盤の役割とは?
胎盤がなぜ赤ちゃんの成長に重要なのか、その役割を解説します。
胎盤の役割(1) 生命維持に必要な物質交換所
胎盤には、大人でいう肺や心臓の役割があります。つまり赤ちゃんが生きていく上で必要な酸素や栄養素を、臍帯を通じて送っているのです。そして赤ちゃんの身体から出た老廃物や二酸化炭素を、ママの血液に戻しています。胎盤はその交換所となる場所といえます。
胎盤の役割(2) 赤ちゃんの食事
胎盤はママの血液にあるアミノ酸や脂肪など、様々な栄養素を受け取って、赤ちゃんに送ります。赤ちゃんが健康的に成長していくために、非常に重要です。
胎盤の役割(3) 妊娠の継続
胎盤からは、妊娠を継続させるための様々なホルモンが分泌されます。hCG(ヒト絨毛性ゴナドトロピン)やhPL(ヒト胎盤性ラクトゲン)、女性ホルモンがこれに当たります。
胎盤の役割(4) 赤ちゃんの排泄
胎内から排出される赤ちゃんの不要な老廃物を、胎盤で受け取り、ママに送り返します。
胎盤の役割(5) 赤ちゃんを守る
胎内の赤ちゃんが外部からの細菌などに侵されないように、フィルターを介して守る役割もあります。ただしタバコに含まれるニコチンやタール、お酒に含まれるアルコール、薬の一部は分子が非常に小さく、フィルターをすり抜け、赤ちゃんに直接害を及ぼします。これが妊娠中にタバコ、お酒、薬がNGと言われる理由です。
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胎盤の位置はどこ?
胎盤の位置は、胎盤ができる過程によって異なります。
受精卵が着床すると、hCG(ヒト絨毛性ゴナドトロピン)によって着床した部位に、絨毛ができます。この絨毛が元となり、妊娠7週頃から胎盤が次第に作られ、妊娠16週頃に完成します。
つまり胎盤の位置には、受精卵がどこに着床するかが非常に大切。正常な胎盤の付着部位は、子宮底部です。それは卵管膨大部で受精し、そのまま子宮内部に入ってすぐの場所だからです。
【胎盤とは】どのように作られる?いつ完成?
先述したように胎盤は、受精したときから作られていきます。着床した部位に絨毛ができ、それがさらに厚みを増し、妊娠16週頃には100gほどで完成します。妊娠初期は、この胎盤が作られている最中ということです。
それまではもちろん、胎盤の役割も完璧ではありません。赤ちゃんは胎盤が完成するまでは、卵黄嚢という小さな「お弁当箱」から栄養をもらって育ちます。
フィルター機能もまだ完成していません。有害物質が血液中に入ると、直接赤ちゃんに影響してしまうので、妊娠初期は非常に敏感な時期なのです。
妊娠中期に入り胎盤が完成すると、栄養素を直接もらえるようになります。すると赤ちゃんは急激に成長。ママも心身ともに安定して、流産のリスクも減っていきます。少し安心できるかもしれません。
臨月になると胎盤は約500gになり、厚さは2~3㎝、直径約20~30㎝まで大きくなります。完成時には100gだった胎盤が、5倍の大きさになるとは驚きですね。
主な胎盤のトラブル
胎盤が正常に成長することは、赤ちゃんにとって重要です。しかしまれに、成長過程でトラブルを起こすことがあります。胎盤のトラブルは以下の通りです。
【主な胎盤のトラブル】
◆前置胎盤
◆低値胎盤
◆常位胎盤早期剥離
◆癒着胎盤
◆胎盤機能不全
それぞれ詳しく見ていきましょう。
1. 前置胎盤
胎盤のトラブルで一番多いのが、「前置胎盤」です。聞いたことのあるママもいるでしょう。
これは通常だと子宮底部にある胎盤が、子宮下部にできて内子宮口をふさいでしまうことを言います。胎盤の成長過程で、位置が上がってくることもあるため、下部にある場合は「前置胎盤疑い」にとどまります。その後も妊娠24週~31週において、胎盤の位置が変化せず、胎盤と内子宮口が2㎝以上重なってしまうと確定診断に至ります。
前置胎盤は痛みを伴いません。しかし子宮が収縮し、内子宮口付近の胎盤辺縁がはがれると大出血を起こしてしまいます。命に関わる可能性があるので注意しましょう。
また前置胎盤は、子宮口と胎盤の位置が重なっているため、基本的には帝王切開となります。
2. 低置胎盤
「低置胎盤」は前置胎盤と異なり、内子宮口が塞がれていないのが特徴。内子宮口と胎盤辺縁までの位置が2㎝以内にあるため、リスクは前置胎盤と変わりません。胎盤の位置によっては、経腟分娩ができる可能性もありますが、基本的には帝王切開です。
3. 常位胎盤早期剥離
「常位胎盤早期剥離」は、出産が始まる前に胎盤がはがれてしまう病気を指します。命綱である胎盤が先にはがれるため、胎児死亡の可能性がかなり高くなります。ママは激痛とともに、大量出血を引き起こします。
4. 癒着胎盤
「癒着胎盤」とは非常にまれで、2,000~4,000分娩に1例の確率で引き起こされます。胎盤が子宮筋層に癒着して、はがれなくなる病気です。子宮摘出になる可能性が高くなります。
5. 胎盤機能不全
妊娠42週を超えると、胎盤の機能が低下して「胎盤機能不全」に陥ることがあります。赤ちゃんに栄養素と酸素が送れず、胎児機能不全となって危険な状態になるケースもあります。
「胎盤を食べる」人がいるってホント?
無事に出産して、赤ちゃんを守る役割を果たした胎盤を食べることを、胎盤食といいます。有名人によるテレビでの発言がきっかけで、胎盤食は話題になりました。馬や豚の胎盤がサプリメント(プラセンタ)となっているのは、知っている人もいるかもしれません。
胎盤を食べるメリット
胎盤食のメリットとして、プラセンタによる美肌効果や母乳の分泌促進、産後鬱の予防など様々な効果がいわれています。しかし実際、胎盤は赤ちゃんに滋養を送り続けた結果、出産後に栄養素はほとんど残されておらず、それらの効果は科学的根拠がありません。明確にはメリットとして示されていないのが現状です。
胎盤を食べるデメリット
胎盤には細菌や母体血が付着しており、食中毒などの感染症を引き起こす原因にもなっています。アメリカでは敗血症の例もあり、決して生で食べてはいけないとされています。加熱が不十分な場合、HIVウイルスやジカウイルスなどが死滅しない可能性も示唆されています。
胎盤の食べ方
胎盤を食べる事自体、あまり必要とはされていませんが、もし食べるとすれば加熱調理する必要があります。日本では加熱するケースが多いですが、アメリカでは胎盤を乾燥させてサプリメントにする業者もあるようです。
《まとめ》
胎盤とは赤ちゃんにとって、なくてはならない存在です。胎盤の仕組みや役割を考えると、いかに重要かがわかるでしょう。そして胎盤は赤ちゃんと共に成長し、出産すればその役割を終えます。しかし中にはトラブルが引き起こされ、まれに命に関わることもあるため注意が必要です。
※写真提供:PIXTA
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1999年愛知医科大学卒業
その後大垣市民病院にて研修、勤務を経て安城更生病院へ赴任
2006年日本産婦人科学会産婦人科専門医取得
2008年やまだ産婦人科院長就任
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