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2021.07.30
妊娠中のストレスは胎児に影響する?【産科医師がストレス解消法を紹介】
妊娠中は理由もわからず必要以上にイライラしたり、不安になったり涙もろくなり、ストレスを感じやすくなります。妊婦さんがストレスを感じやすいその原因と、ストレスが与える胎児への影響について解説します。また、ストレス解消法もいくつか紹介します。
目次
妊娠中にストレスを感じてしまう理由
妊娠したことは嬉しいことではあるけれど、なぜかいつもイライラしたり、不安になったり、ちょっとしたことで泣いてしまったり、感情のコントロールがうまくいかずストレスを感じやすくなります。本人としてはそういう自分にもうんざりしてしまうでしょうが、妊娠中のストレスには理由があります。
妊娠によるホルモンバランスの変化
妊娠中にストレスを感じてしまう最大の理由は、ホルモンバランスの変化です。
主に、女性ホルモンのエストロゲンとプロゲステロンの2種類が大きく変化します。妊娠前はエストロゲンとプロゲステロンが周期的に分泌され、月経周期となりますが、妊娠するとその分泌量が大きく変化します。
妊娠週数が進むにつれてエストロゲンとプロゲステロンの分泌量は増加し、エストロゲンは妊娠前の約100倍、プロゲステロンは妊娠前の15倍程度になります。特にプロゲステロンは、気分の浮き沈みを増長させるためストレスを感じやすくなるのです。
妊婦さん自身の心や体をコントロールできない
妊娠すると、体の水分量が増えむくみを感じて重だるくなったり、いつも眠かったり、頭が働かなかったり、いつものように身軽に動けなくなります。妊娠前はあまり気にしなかったことでも、ホルモンの影響で感情が大きく揺れるため心が傷ついたり、イライラしたり落ち込んだりしやすくなります。
妊娠前は無意識に体と心のバランスを上手にとって生活していたのが、妊娠によって自分自身をコントロールできなくなってしまい、それにストレスを感じてしまうのです。
妊娠中の家事・仕事・体重管理によるストレス
妊娠中に分泌が増加するプロゲステロンは、思考力や判断力を低下させます。そうすると、うまく予定を組み立てられなかったり、やることが多いとパニックになったり、思考が停止したりすることがあり得ます。
そのため妊娠前は難なくできていたことが、今ではできない自分に対して落ち込んだりイライラしたりすることで、ストレスを感じやすくなります。
妊娠中のストレスは胎児に影響する?
妊娠中のストレスが強いと、お腹の赤ちゃんに影響がないか心配になりますね。
胎児に血流が十分にいかなくなる
人はストレスを感じると、無意識のなかで体に力が入ってしまい、筋肉が硬直します。筋肉が硬くなることで、全身の血液の流れが悪くなります。妊婦さんの血液の流れが悪くなるということは、子宮に向かう血液の流れも悪くなるので、赤ちゃんへ酸素や栄養が十分に届かなくなる恐れがあります。
またストレスは自律神経系の働きを乱しますが、自律神経系の乱れは血管の収縮を招くため、さらに血流が悪化してしまいます。
ストレスで早産・流産の可能性が高くなる
前述したように、妊婦さんが常にストレスを感じていると血流が悪化し栄養不足となり、胎児の発育不全や早産の確率が高くなると言われています。
また妊娠12週〜妊娠22週に起こる後期流産の原因の一つに、母体の過度のストレスがあります。ストレスは早産・流産の確率を高める可能性があるということが言えます。
子宮のスペースが狭くなり収縮しやすくなる
妊娠中にストレスを感じるとお腹にも力が入ります。特に下腹部に力が入り、子宮の収縮も促されます。子宮が硬くなることで、赤ちゃんが成長するスペースが狭くなってしまい、十分な成長ができないまま出産することになりかねません。
生まれた赤ちゃんが情緒不安定になりやすい
妊娠中の慢性的なストレスは、コルチゾールという副腎皮質ホルモンを多く分泌させます。このホルモンは胎盤を通って赤ちゃんに届き、神経系の発達に影響を与えると言われています。
その結果、生まれた赤ちゃんの情緒不安定や鬱、注意欠陥障害(ADHD)を引き起こすという研究結果もあります。ただし、あまり心配しすぎないことも重要です。
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妊娠中におすすめのストレス解消法
妊娠中にストレスを全く感じないようにすることは難しいですが、赤ちゃんに少しでも影響がないよう、ストレス解消法を紹介します。
妊娠中のストレス解消1. 規則正しい生活
不規則な生活はホルモン分泌や神経系の乱れを招きやすいため、規則正しい生活を心がけましょう。特に妊娠中の睡眠・休息は大切で、夜間は8〜11時間くらい睡眠時間を確保できるとよいです。
夜間、眠りやすくするためには次のような方法がよいとされています。
◆就寝1時間以上前からスマホなどのブルーライトを浴びないようにすること
◆入浴は38〜40度くらいのぬるま湯にゆっくり浸かり、あがってから1〜2時間以内に布団に入ること
◆可能であれば午前中に一回、午後に一回、30分程度横になり、赤ちゃんへの血流を促すこと
上の子がいる妊婦さんは動きすぎていることが多いので、一緒にお昼寝をするなどして、意識的に休息の時間を作りましょう。
妊娠中のストレス解消2. ウォーキングなどの運動
適度な運動は筋肉を温め、全身の血流を促します。妊娠中に適した運動は、ウォーキング、ヨガ、マタニティビクス、マタニティスイミングなどです。できれば運動中は何も考えず呼吸に集中すると、脳は瞑想状態になりリラックスできます。
妊娠中のストレス解消3. 人と話す
もやもや、イライラといった感情は、言葉にするだけでも気持ちの整理がつきます。妊娠中もお友達や家族など、誰かとお話するだけでもストレス解消につながります。
しかし中には、うつ病や不安障害に該当する場合もあります。以下の項目が当てはまると感じた場合には、かかりつけの産院で医師や助産師に相談してください。
◆過去1か月の間に、しばしば以下のような状態で悩まされたことがある
・気分が落ち込んだり、元気がなくなる、あるいは絶望的になる
・物事をすることに興味、あるいは楽しみをほとんどなくしている
◆過去1か月の間に、ほとんど毎日以下の状態である
・緊張感、不安感または神経過敏を感じる
・心配することを止められない、または心配をコントロールできない
またかかりつけの産院以外でも、地域の助産師に妊娠中の不安や悩みを相談することもできます。現在では、妊娠から産後まで同じ助産師がケアやサポートをする「my助産師制度」というものがありますので、ぜひお住まいの地域で活用してみてください。
《まとめ》
妊娠中はホルモンバランスの変化によって、ストレスを感じやすくなります。母体の過度のストレスにより血流が悪化することで、胎児へ栄養や酸素が供給されず、成長発達に影響する恐れがあります。自分に合ったストレス解消法を上手に活用しながら、妊婦さんも赤ちゃんも健やかに過ごせるとよいですね。
※写真提供:PIXTA
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平成7年 岐阜大学医学部卒業
平成12年 岐阜大学大学院医学研究科 修了 学位修得
平成12年 スウェーデン・カロリンスカ医科大学留学 博士研究員(有給)
平成17年 岐阜大学医学部附属病院助手(併任講師)
平成19年 いとうレディースケアクリニック 産婦人科 医師
平成26年 医療法人葵鐘会 産婦人科/不妊センター 医師
平成30年 もりレディースクラブクリニック 院長
令和2年4月 いずみレディスクリニック 理事長・院長
令和2年7月 あいレディースクリニック 理事長・院長
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