産後のセックスレスはホルモンが原因?

妊娠、出産、産後で女性のホルモンが大きく変化します。この変化が、女性のセックスに対する意欲を減退させる原因といわれています。
■産後はエストロゲンの分泌が少なくなる
女性の性欲を左右するのはエストロゲンという女性ホルモンです。妊娠していない時は排卵前と生理前に多く分泌され、性欲が増強するといわれています。このエストロゲンは妊娠中、乳腺を発達させるために多く分泌されています。
一方で産後の授乳時には、プロラクチンという母乳を生成するホルモンが分泌され、これはエストロゲンの分泌を減らします。結果的に授乳中は特に性欲が減退するのです。
また、エストロゲンは膣に潤いを与え、外陰部をふくよかにします。ですから、授乳中は膣が渇いて、痩せた状態になり、男性本位の性交は痛みを伴うことがしばしばあります。
■プロラクチンの分泌で攻撃的になる
母乳を作り出す働きのあるホルモンであるプロラクチンには、他人への敵意を増強させる作用があるといわれています。野生動物のように、赤ちゃんを敵から守るという母親の本能が全開になるのです。
「産後のガルガル期」とも呼ばれていますね。これが原因でパパに対しても攻撃的になってしまうことがあり、セックスをする意欲は減退します。
産後の女性の体は、生殖本能を司る女性ホルモンが急激に減少した状態です。反対に、赤ちゃんを守り育てるためのホルモンが多く分泌されており、それが性欲を減退させる原因の一つになります。
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産後ママはセックスより休息を優先しがち
24時間態勢の休まることのない育児で、ママの身体的疲労は慢性的です。おむつ替えや授乳など、1日のうち約15時間は育児のために費やされます。
ママの食事や入浴、家事の時間もありますから、睡眠・休息に当てられる時間は圧倒的に少なく、常に寝不足なのです。
人間の3大欲求の優先順位は、睡眠欲→食欲→性欲です。睡眠と食事は生きていく上で欠かせないものですから、なくても生きていける性欲が後回しになってしまうのは、産後のママにはよくあることと言えます。
産後クライシス
産後クライシスとは、出産や子育てからくる心身の変化や疲労によって、産後の夫婦仲が悪化する現象です。
ある調査では、妊娠期から0歳時期にかけて妻から夫への愛情は大きく減り、そのまま減り続ける傾向にあるという結果があります。また他の調査では、産後半年以内に愛情の冷え込みを感じる女性が約6割もいるという結果もあります。
子供の母親というフィルターでしか自分を見てもらえない、女性として愛してもらえていないという思いが原因の一つとなっているようです。
言わなくても察して欲しいというママの思いと、何をしても不機嫌そうにしていて居心地が悪い、できることはやっているのに認めてくれない、言ってくれないとわからないというパパの思いが平行線を辿り、セックスレスに拍車をかけるのでしょう。
産後ママのためのセックスレス解消法
以上の原因から見えてくる、セックスレス解消法をご紹介します。
セックスの痛みには潤滑ゼリー
膣の潤い不足による性交時の痛みでスキンシップ不足に陥ってしまう場合は、「潤滑ゼリー」を使用してみるのも良いでしょう。使用すればスムーズで痛みの少ない性行為が可能に。あまり馴染みの無い商品かもしれませんが、パパとの愛を深めるきっかけにもなります。
まずはママが心と体の休息をとる
心と体が疲れていては、セックスを楽しむこともできません。ママ以外でもできる家事や育児を、パパにしてもらい、心と体に余裕を持ちましょう。
それを当たり前と思わず、感謝の気持ちをタイミングよく言葉とスキンシップで伝えるのも忘れずに。
家事代行やベビーシッターを雇ったり、赤ちゃんをパパに預けて1~2時間の短い間だけでも、カフェや美容室に行くなど自分の時間を持つのもおすすめです。1人の女性として輝ける時間は自分も満足しますし、元気なママの姿はパパにも魅力的に見えますよね。
意識してコミュニケーションをとる
産後、育児と家事の疲労に加え、生活時間が合わず夫婦の会話が少なくなります。会話の内容が日々の連絡や赤ちゃんのことだけで終わってしまうと、2人の愛情を確認できずに心のすれ違いが生まれます。
まずは、パパが居ない間に起きた出来事、困ったこと、嬉しかったこと、自分の感情を言葉で伝えましょう。そして、今日はどんな一日だったのか、パパに聞いてみましょう。
セックスという行為に囚われるのではなく、お互いに思いやりを持ち愛情をわかりやすく表現するところから始めていきましょう。
スキンシップを大切にする
セックスをする時は、ドーパミンという興奮作用のあるホルモンが分泌されて快楽を得ることができます。それと同時にオキシトシンというホルモンの分泌されており、これによって愛されていると実感でき、幸福感を味わうことができるのです。
手を握る、愛撫する、抱きしめる、キスをするといったスキンシップは、オキシトシンの分泌を促します。このホルモンは母性ホルモンの一つですが、男性にも備わっています。
長期にわたって夫婦の愛情関係を継続させるためには、このオキシトシンが鍵となります。オキシトシンの効果を得られるためには、男性は女性よりも2~3倍のスキンシップが必要と言われています。
育児で忙しい日々の中でも、たくさんスキンシップをとり、夫婦の新しい絆を積み重ねていくことこそが、セックスレスを解消する第一歩と言えます。
《まとめ》
赤ちゃんのことで頭がいっぱいになるのは、新米ママであれば当たり前のことです。でも、その赤ちゃんはパパとのかけがえのない宝物。パパにもママの状況や体調を理解してもらいながら、できることから取り組んでいきましょう。
※写真提供:PIXTA
平成5年東京慈恵会医科大学卒業。
医局は慶應義塾大学医学部婦人科学教室にて研鑽を積む。
平成14年慶應義塾大学大学院医学研究科を満期単位取得し、臨床に専念。
神奈川県の大和市立病院を経てワキタ産婦人科を継承
【主な資格】
医学博士
日本産科婦人科学会認定 産婦人科専門医
母体保護法指定医
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