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2021.03.01
妊婦の新型コロナウイルス感染について【最新】日本感染症学会所属医師
もし妊娠中に新型コロナウイルスに感染してしまったら、妊娠・出産にどんな影響があるの?重症化してしまう?感染予防策はどうすればいい?
感染症の流行が続くなか、妊婦さんは不安な日々を過ごされていると思います。呼吸器内科医師(日本感染症学会所属)が新型コロナウイルス感染症についてお話します。
新型コロナウイルスとは
はじめにウイルスのことを復習しましょう。様々な病気を起こす原因となる「バイキン」には細菌、ウイルス、カビなどがあります。細菌は単細胞の体の生物です。自分で体を持ち増えることができます。
ウイルスは細菌の50分の1ぐらいの大きさで細胞を持ちませんので人の体に入り込んで増えていきます。抗生物質は細胞に働くので、体のないウイルスには全く効果がありません。風邪の原因はウイルスが大部分ですので、風邪に抗生物質は効かないのです。
コロナウイルスは普通の風邪の原因としても知られています。しかし今回の「新型コロナウイルス」は今までのコロナウイルスと異なり人間が今まで一度も出会ったことがないウイルスです。
そのためにどの人も「新型コロナウイルス」に全く抵抗力がないのです。今回多くの人が重症になって亡くなるのは初めて出会うタイプのウイルスだからです。
妊婦が感染したら重症になるか?
妊娠している時には、体の中に赤ちゃんがいます。赤ちゃんはお母さんにとって異物ですので妊娠している間はお母さんの免疫機能は赤ちゃんに対して強く働かないように抑えられています。
したがってこの時期には他の感染症にやや弱い傾向があります。
厚生労働省のリーフレットでは、妊婦さんは一般論として肺炎になると重症になりやすいというのはそのような理由によるものです。
新型コロナウイルス感染に関しては妊婦さんの数が少なく、はっきりしたことが言えないのが現状です。
海外では妊婦さんと妊娠していない人との経過や重症度はあまりあまり変わらなかったという報告もあります。赤ちゃんの先天性の障害や流産のリスクも変わらないと言われています。
ただはっきりしたことは言えないので感染を予防するのにこしたことはありません。
※参考:厚生労働省「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)対策 ~妊婦の方々へ~」
感染した人と濃厚接触したり感染を疑う症状が出たら
厚労省から出ているリーフレットに従って、症状が軽くても帰国者接触者相談センターに相談をしましょう。
また、妊婦さんに関する相談窓口が都道府県に設けられており、不安なことがあったら相談することができます。
※参考:厚生労働省「都道府県等における妊婦の方々への新型コロナウイルスに関する相談窓口」
感染が疑われた時のレントゲンやCT検査
胸部の場合妊娠のどの時期であってもためらう必要はありません。
例えば胸部のレントゲン一枚は飛行機に3時間乗っている間に浴びる自然の放射線量と変わりません。これらの検査で胎児に影響を与える可能性は極めて低いとされています。
感染症を正しく診断して治療に取り掛かるために必要な検査であり、害よりも利益の方がはるかに大きいです。
※参考:国立成育医療研究センター「妊婦さんの新型コロナウイルス感染症について - 母性内科と妊娠と薬情報センターより -」
感染予防策
一般の方の対策と同様に密閉、密集、密接を避けることです。マスクをしていれば安心ということはありません。
どのマスクでもコロナウイルスの吸い込みを防ぐ効果は低いようです。多くの人がつけているウレタンマスクやタレントがしているマウスシールドは効果がかなり低いので注意してください。
またマスクをしっかりとしていても万一表側にウイルスがくっついていたら、顎マスクや鼻マスクで顔の表面にウイルスがついてしまいます。苦しくても鼻の上から顎の下までしっかりとおおいましょう。
外す時には表側を触らないようにして耳の後ろを持ってそっとはずしすぐに捨ててください。感染がひどい時期には使い捨てマスクが安全です。帰宅後はうがい手洗いを十分にしましょう。(アルコールで15秒、水洗いで30〜60秒)
食事の時にはマスクをしていないため、おしゃべりをすると飛沫を浴びることになります。同居家族以外や症状がある人との食事は出来るだけ避けましょう。
▼マスクやフェイスシールドの効果
※参考:スーパーコンピュータ「富岳」によるシミュレーション結果(豊橋技術科学大学による実験値を含む)
おすすめ情報
ワクチン接種
2月からワクチン接種が始まりました。ファイザー社のワクチンは不活化ワクチンですので妊婦さんでも接種することは可能です。
ただ今回のワクチンは短い期間で作られたためまだ安全性の検証が十分ではありません。妊婦さんに対する予防接種については海外でも国によって対応が異なります。
日本産婦人科感染症学会および日本産科婦人科学会では、
1. 妊娠12週まではワクチン接種を避ける
2. 感染リスクが高い医療従事者、重症化リスクの可能性がある肥満や糖尿病など基礎疾患を合併している方は、ワクチン接種を考慮する。
3. 妊婦のパートナーは、家庭での感染を防ぐために、ワクチン接種を考慮する。
4. 妊娠を希望される女性は、可能であれが妊娠する前に接種を受けるようにする。(生ワクチンではないので、接種後⻑期の避妊は必要ない。) などの意見を出しています。
※参考:⽇本産婦⼈科感染症学会「COVID-19 ワクチン接種を考慮する妊婦さんならびに妊娠を希望する⽅へ 」
まだまだ不安なことが多いですができることをしっかり行って対応をしていきましょう。
※写真提供:PIXTA
![](image/upload/thumb1_9739d5fdca35444deba10ed0b6bf377e.jpg)
信州大学医学部 卒業
1980年4月~1984年3月 東京大学医学系大学院
1984年4月 国立国際医療センター呼吸器内科レジデント
1986年10月 聖マリアンナ医科大学東横病院 医長
1992年4月~1993年3月 ドイツヴュルツブルグ大学留学
1993年4月 聖マリアンナ医科大学東横病院
2001年4月 横浜市西部病院勤務
現在 横浜市西部病院呼吸器内科部長、横浜市西部病院健康管理部部長
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