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2021.08.28
育児短時間(時短)勤務の給与はどれくらい?【計算方法と具体例】
「短時間(時短)勤務する?しない?」これは育児休業から復帰するママにとって、大きな悩みの一つではないでしょうか。またその悩みの影には、「短時間勤務をしたら、減ってしまったお給料で生活していけるかな」といった不安も隠れているでしょう。今回は、短時間勤務を取得した際の給与について解説します。
目次
育児短時間勤務とは
会社の制度としては知っていても、内容までは知らない方が多い「育児短時間勤務」について詳しく解説していきます。
育児短時間勤務の概要
育児短時間勤務とは、育児・介護休業法の「短時間勤務制度」を指します。少子化問題への対策として、2009年に企業に導入が義務付けられました。制度の主なポイントは、以下の4点です。
●対象者は3歳未満の子を養育する労働者
●1日の労働時間を6時間とする(職場によっては5時間45分)
●育児・介護休業法の他の制度の手続きも参考にしながら適切に定める
●不利益取扱いの禁止
短時間勤務制度は、6時間の短時間勤務が原則となります。これに加え、日ごとに勤務時間を変える、労働時間を変えずに勤務日数を減らすといったパターンもあります。
また、短時間勤務の取得を希望する場合「1ヶ月前までに申し出ること」といった規定がある場合もあります。復帰予定日の1ヶ月前を目途に、職場に申請するのが望ましいでしょう。
■育児短時間勤務の対象外となるケースに注意
以下のケースでは、短時間勤務制度適用の対象外となるので、注意しましょう。
・入社して1年未満の労働者
・1週間の労働日数が、2日以下の労働者
・1日の所定労働時間が、6時間以下の労働者
・日雇い労働者
・労使協定により、適用除外とされている労働者
・業務の性質上、時短での対応が困難な場合
労働契約や労使協定を見直し、ご自身が短時間勤務適用の対象かどうか確認する必要があります。
育児短時間勤務中の給与の計算方法と具体例
それでは次に具体的な例を用いて、短時間勤務中の給与額をどう計算するか見ていきましょう。
基本給は働いている時間分のみ
短時間勤務をする場合、多くの企業で働いていない分の給与は支払われないのが一般的です。これは「ノーワーク・ノーペイの原則」という給与計算の基本原則が理由です。
例えば、8時間勤務で基本給が20万円のAさんの場合。職場復帰後に6時間の短時間勤務となれば、労働時間が25%減るため、基本給も25%減の16万円となります。
残業手当もなくなることでさらに減額に
産前に残業をしていたり、固定残業代が支払われていたりするケースでは、残業手当がなくなるために手取りがさらに減ることになります。この他、職能や資格などの手当についても、短時間労働者に付与されるかどうかは会社の規定次第です。
■残業時間のカウントは、8時間を超えてから
残業とは労働基準法において、「1日8時間・1週間で40時間」を超えて働いた時間を指します。短時間取得者にとっては、6時間を超えた部分が残業として割増賃金がつくように感じますね。
しかし6時間を超え8時間までの間は「法定内残業」と呼ばれ、給与は基本給で計算されます。割増賃金がつくのは8時間を超えて働いた分(法定外残業)となる点に注意しましょう。
(図:「短時間給与具体例」残業)
■もし残業をしたくない場合は、法的に免除される
会社が短時間勤務の社員に残業をさせることは、違法ではありません。短時間労働者側は「残業の免除」を会社に申し出ることで、残業を拒否することができます。職場復帰の際には、短時間勤務の取得の有無に加えて、残業するか否かについても検討しておくといいですね。
育児短時間勤務者は賞与(ボーナス)も減る可能性が高い
賞与がある会社では、短時間勤務を取得している場合、給与と同様に賞与も減額される可能性が高いです。また短時間勤務を希望した結果、産前と異なる配属先になることもあるでしょう。そういった場合に評価は、短縮した時間分だけでない要素も入ってくるかもしれません。
しかし制度のポイントでもお伝えした通り、「短時間勤務の制度を取得した」ことのみによる「不利益取扱い」は法律で禁止されています。復帰後の評価や賞与の金額に疑問がある場合は就業規則等を確認し、上司に相談してみましょう。
また賞与の金額は、査定の対象期間にどのような働き方をしていたかを基準に算出されます。支給日の働き方が基準ではない点も、認識しておきましょう。
社会保険料は減額される?育児短時間勤務の具体例
例えばBさんが、産前は基本給22万円のフルタイム勤務(残業は月20時間前後)で働いていたとしましょう。Bさんが6時間の時短勤務で職場復帰した場合は、図の右列のようになります。Bさんの場合、額面年収の合計は約35%減少することとなります。
(図:「時短給与具体例」年収差)
給与手取りが増える!社会保険料の負担を軽くする手続き
就労時間が減っているとは言え、給与が減額となる要素が多く、金銭的に苦しい短時間勤務。ですが社会保険料に関しては、手続きをすることで負担を軽減することが可能です。制度を活用することで、少しでも手取りを増やしましょう。
■「育児休業等終了時報酬月額変更届」を提出する
産前産後休業期間や育児休業中は、社会保険料は全額免除となります。一方、職場復帰をすると短時間勤務で所得が減っているにも関わらず、社会保険料は出産前の給与を基準に計算されます。
この負担を若干軽くするのが「育児休業等終了時報酬月額変更届」の提出です。こちらを提出することで、短時間勤務で復帰後の3ヶ月間の給与を基準に、社会保険が計算・改定されます。4ヶ月目以降は、短時間勤務の給与に応じた社会保険料額になるという仕組みです。
総務部や人事部に書類がない場合は、日本年金機構のサイトからもダウンロードができますので、積極的に活用しましょう。
■「厚生年金保険養育期間標準報酬月額特例申出書」についてもチェック
社会保険料が減額となると、将来の年金額に不安を覚える方もいるでしょう。そこで、厚生年金に関する特例「養育期間の従前標準報酬月額のみなし措置」についてもご紹介します。
この制度は、「子どもが3歳になるまでの間、短時間勤務等で社会保険料の負担を減らした場合でも、将来受け取る厚生年金は産前のフルタイムだった給与を基に計算された金額となる」という仕組みです。将来の厚生年金額は軽減前の基準で算出されるため、二つの制度は併用することがおすすめです。
こちらの届けも総務部や人事部に相談するか、前述したサイトから書類をダウンロードして提出しましょう。提出の際には、戸籍謄(抄)本と住民票の原本が必要となる点にもご注意下さい。
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育児短時間勤務を利用するときの注意点
次に、育児短時間勤務を利用するときの注意点をお伝えします。
まずは就業規則の確認
短時間勤務の規定については就業規則に定められており、企業によっては独自のルールを設けています。ご自身のワークライフバランスを保って短時間勤務ができそうか、事前に就業規則を確認しましょう。
わからないことは相談しよう
就業規則には、記載しなければいけない事項が労働基準法で定められています。絶対的必要記載事項として、始業・就業時刻や休憩時間、賃金に関することなどは必ず規定されています。
まず、会社の就業規則を確認してみましょう。わからない部分は、上司や人事部、総務部等の該当部署に確認・相談しましょう。また復帰後、実際に受け取った給与や賞与の内容に疑問がある場合も、問い合わせをしてください。
キャリアはどうなる?同僚は迷惑?短時間勤務の悩みを解決
子育て中は子どもの体調不良による突発休みの可能性が高く、残業や出張に制約があるなどの事情から、業務内容が変わることもあります。また勤務時間の関係で、残れない短時間社員の仕事をフルタイム社員がカバーする場面もあるでしょう。これらを踏まえると、短時間勤務期間中はフルタイム社員と相対して、低く評価されていると感じる場面は少なくありません。
■成果を意識した仕事で、自分自身をマネジメント
出産を機に、働き方や暮らし方の考えが変わる人は少なくありません。子育てが一段落したら、産前のようにフルタイムで仕事をバリバリこなすことにやりがいを感じる方もいますし、逆に仕事だけを重視しないようになった方もいます。
キャリア志向であれば、例え一時的な短時間勤務の間も「成果」を意識した仕事をすることが大切です。営業であればノルマの達成率、事務であれば作業完成度といったように、それぞれの仕事には指標があります。
今後どう働きたいかを明確にすると、時間当たりの生産性は上がり、評価につながるでしょう。時間に制約があることを逆手に取り、集中力を高めて効率よく成果を出せるように努めましょう。
■自社の評価制度の確認を
評価の仕組みは企業によって異なるので、上司や人事部に確認しましょう。「短時間勤務でもノルマを何%達成したら、評価はどうなるか?」など具体的に聞くのが大切です。基準を明確にすることで、モチベーションの向上にもつながります。
■同僚への配慮を忘れずに
短時間勤務期間中、あなたの仕事のフォローをするのは上司や同僚です。コミュニケーションを意識的に取り、良好な人間関係を築きましょう。時に上司や同僚が短時間社員に遠慮してしまうケースもありえます。与えられた仕事を踏まえ、「増やせる仕事」や「お願いしたい仕事」を素直に伝えると、業務が円滑に進むでしょう。
《まとめ》
短時間勤務は、子育てと仕事を両立したいママを応援してくれる、心強い制度です。もし仮に、産前の給与が2~4割減っても生活が成り立つか、短時間勤務制度を取得することは、あなたの望む働き方や生活スタイルに合っているか。これらを踏まえた上で、取得を検討しましょう。
また取得をすると決めた場合は、就業規則や社内制度、公的支援等の情報収集がカギとなります。積極的に行動を起こし、短時間勤務制度をうまく取り入れ、理想のワークライフバランスを実現しましょう。
監修者
1952年に名称を婦人少年協会として当時の労働省婦人少年局(現・厚生労働省雇用均等・児童家庭局)の外郭団体として発足。
1980年に財団法人となり、1999年、「女性労働協会」と名称を変更。
2012年には一般財団法人として、働く女性の地位向上及び女性労働者の福祉の増進を図ることを目的とし、さまざまな事業を展開している。
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