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2021.07.26
【マタハラとは?】該当する事例やマタハラの対処法を専門家が解説
働く女性が妊娠や出産をきっかけに、解雇や降格などの不利益な扱いを受けたり、職場で嫌がらせを受けたりする「マタニティ・ハラスメント(マタハラ)」。女性の社会進出がうたわれる一方で、マタハラに悩む女性は後を絶ちません。ここでは、法律で禁止されている解雇などの不利益取扱いと、職場におけるマタハラの具体的な事例をご紹介するとともに、実際にマタハラ等を受けた場合の対処法についてご紹介します。
目次
マタハラとは
マタハラとは、「マタニティ・ハラスメント」の略で、妊娠や出産、育児を理由として、上司や同僚の職場環境を害する行為による嫌がらせ(ハラスメント)を言います。女性に限らず、育児に関わる男性も対象になることがあります(男性の場合は「パタハラ(パタニティ・ハラスメント)」と呼びます。)
また、事業主が妊娠・出産・育休を理由とした解雇や雇い止め、降格などを行うことは違法であり、男女雇用機会均等法や育児・介護休業法で「不利益取扱い」として禁止されています。
マタハラや不利益取扱いの原因には、
・職場の妊娠出産への理解・協力不足
・会社の評価制度や人員増員などの制度設計の不足
・日本という社会に家庭を優先すべきであるという価値観が根強い
ことなどが挙げられます。
職場でのマタハラや不利益取扱いに該当する事例
男女雇用機会均等法や育児・介護休業法で禁止されている、妊娠・出産、産前産後休業や育児休業の取得などを理由にした「不利益取扱い」には、解雇や雇い止めのほか、降格や減給などいくつか明示がされています。
不利益扱いを示唆したり、妊娠等の状態や、産前産後休業や育児休業等の制度の利用等と嫌がらせ等となる行為の間に因果関係があるものが「ハラスメント」に該当します。妊娠から職場復帰まで、「マタハラ」や「不利益取扱い」がどのようなタイミングで起こりうるのか、具体的な事例をご紹介します。
妊娠報告後に起こりやすいマタハラや不利益取扱いの具体例
マタハラや不利益取扱いが始まるのは、妊娠報告を行った直後というケースが圧倒的に多いです。この段階では、どのようなことが起きやすいのでしょうか。
■解雇・雇い止めの示唆
- 上司に妊娠を報告したら、1週間後に「勤務態度が悪いので辞めてもらいたい」と言われた。
- 産休育休の取得について上司に相談をしたところ、「休み中に新しい人を雇うので辞めてもらいたい」と言われた。
- 毎年1年契約で更新されていたが、妊娠を報告したら「次の契約更新はないと思え」と言われた。
■降格や減給、不利益な評価を行う
- 妊娠は自己都合と言われ、これまでの実績は無視され、新しい事業年度や上・下半期が始まるタイミングでリーダー職を降格させられた。
■就業環境を害する嫌がらせ行為(状態への嫌がらせ)
- 「妊娠は病気ではないのだから、ちゃんと働け」や「産休育休中は、何もしなくても給料をもらえるからいいよね」などの上司や同僚から心ない言葉を言われた。
- 妊娠を報告してから、クライアントとの打合せメンバーから外された。
産休・育休中に起こりやすいマタハラや不利益取扱いの具体例
出産や育児の期間、会社にいないにも関わらず、マタハラや不利益取扱いに遭うことも少なくありません。どんなことが起こるのでしょうか。
■解雇・雇い止めの示唆
- 復職の相談をしたところ、シングルマザーなので仕事と子育ての両立は難しいだろうと言われ、それとなく退職を勧められた。
- 育休中に2人目を妊娠したところ、1年を超えて復帰の見込みがない場合は契約を更新できないと告げられた。
■不利益な配置の変更
- 育休明け1週間前に、保育園の送り迎えに2時間かかる勤務地への異動を命じられた。
復職後に起こりやすいマタハラや不利益取扱いの具体例
いざ子育てと仕事の両立と張り切って職場復帰をしたとしても、周囲がそうさせてくれないことも多いのが現状です。復職後に遭いやすいマタハラや不利益取扱いはどんなことでしょうか。
■状態に対する嫌がらせ行為
- 子育て中の人はいつ休むか分からないという理由で、重要な仕事を任せてもらえず、雑用ばかりさせられている。
■降格や減給、不利益な評価を行う
- 子どもが小さいから残業できないという理由で一方的に評価を下げられ、ボーナスを大幅に減額されていた。
■就業環境を害する嫌がらせ行為(制度等の利用への嫌がらせ、利用への阻害)
- 同僚や上司から「短時間勤務で早く帰れるから羨ましい。こっちはその分残業だよ」と嫌みを言われた。
- 同僚や上司から「短時間勤務をするような者に大した仕事はさせられない」と言われ、利用できない。
その他
その他の例です。
- 上司から、人手不足なのでまだ妊娠しないで欲しいと言われている。
おすすめ情報
職場でマタハラかも?不利益取扱いを受けたかも?と思ったときの対処法
一人で悩まずに、しかるべき相談先に相談、助けを求めることが大切です。相談する際には、事実関係を整理しやすいように、以下のことをノートやレコーダーなどで記録しておくとよいでしょう。
・マタハラや不利益取扱いをされた日時、場所、相手、内容
・どのような影響があったか(体調や精神的な影響なども含める)
・ご自身がどのような制度を利用したいのかなどの希望を明確にする
これらを記録した上で、以下のような相談窓口に問い合わせてください。
社内の人事部・相談窓口に相談・報告する
「男女雇用機会均等法」が改正され、平成29年1月から、企業は「マタニティ・ハラスメント防止のために必要な措置」(マタハラ防止措置)をとることが義務付けられました。
具体的には、マタハラを行った者について厳正に対処することなどを就業規則等で規定し、それらを周知することや、相談窓口を設置することになっています。
相談窓口として人事部などの社内の部署が相談を受け付け、マタハラについて事実確認し、被害者への配慮、行為者への処分等の措置を行い、再発防止のための措置を行います。社内の相談窓口を確認し、まずは相談・報告すると良いでしょう。
総合的な相談窓口に相談する
社内に相談することをためらう方は、外部の相談窓口に相談するとよいでしょう。
総合労働相談コーナーでは、職場のトラブルに関する相談や、解決のための情報提供をワンストップで行っています。労働問題に関するあらゆる分野について、専門の相談員が面談あるいは電話で受け付けています。予約不要・無料ですので、気軽に相談できます。
マタハラの相談を扱う専門相談窓口に相談する
社内では解決の糸口が見つからない場合等、厚生労働省のマタハラの専門相談窓口に相談する方法もあります。
都道府県労働局雇用環境・均等部(室)では男女雇用機会均等法・育児介護休業法等に基づく相談を無料で受け付けています。会社の所在地がある都道府県の窓口に相談します。
弁護士等の専門家に相談する
きちんと正当な立場を主張したいという強い気持ちを持った際は、弁護士へ相談すると良いでしょう。弁護士事務所の敷居が高い場合は、法テラスに連絡をとってみましょう。
お問い合わせの内容に合わせて、解決に役立つ法制度や地方公共団体、弁護士会、司法書士会、消費者団体などの関係機関の相談窓口を、法テラス・コールセンターや全国の法テラス地方事務所にて、無料で案内しています。
厚生労働省が運営しているポータルサイトを利用する
上記の窓口以外にも利用できる相談窓口があります。厚生労働省が作成した「あかるい職場応援団」のサイトにまとまっていますので、参考にしてください。
【職場のいじめ・嫌がらせ問題の予防・解決に向けたポータルサイト「あかるい職場応援団」】
《まとめ》
マタハラや不利益取扱いとは何か、具体的な事例やその対処法についてご紹介しました。マタハラや不利益取扱いは法律で禁止された行為であり、一人で悩む問題ではありません。妊娠・出産を理由に会社から不当な扱いを受けたり、同僚や上司の発言に違和感を感じた際や、紹介したような事例が起こった場合には、一人で悩んだりあきらめたりせず、相談窓口に相談しましょう。
監修者
1952年に名称を婦人少年協会として当時の労働省婦人少年局(現・厚生労働省雇用均等・児童家庭局)の外郭団体として発足。
1980年に財団法人となり、1999年、「女性労働協会」と名称を変更。
2012年には一般財団法人として、働く女性の地位向上及び女性労働者の福祉の増進を図ることを目的とし、さまざまな事業を展開している。
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