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2023.01.13

妊娠中のビタミンA過剰摂取はなぜ危険?【医師】摂取量の上限とは

妊娠したら赤ちゃんと自身の体のために、必要な栄養素をしっかり摂取したいですね。ただし妊娠中は避けた方がいい食べ物や、摂りすぎが危険な栄養素もあります。ここでは中でも過剰摂取に注意が必要な「ビタミンA」について、正しい知識を身につけましょう。また妊娠中に注意する食べ物をいくつか解説します。

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【妊娠中のビタミンA】過剰摂取はなぜ危険?

妊娠中のビタミンA

 

まずビタミンAとは、どのような作用のある栄養素か知っていますか?

 

ビタミンAとは

ビタミンAとは脂溶性ビタミンの一種で、レチノール、レチナール、レチノイン酸の総称です。ビタミンAには皮膚や粘膜の機能、そして眼の機能を正常に保つ働きがあります。また、抗発癌作用があるとも言われている栄養素です。

 

ビタミンAは、体の感染防御機能の維持のためにとても重要。体の中に菌が侵入してきた時に戦う、白血球やリンパ球などの発生や分化に欠かせません。不足すると皮膚や粘膜が乾燥しやすくなり、暗いところで視野狭窄しやすい夜盲症の原因にもなります。また妊娠中にビタミンAが不足すると、赤ちゃんに奇形が生じると言われています。

そのため妊婦さんにとって、ビタミンAの摂取はとても重要です。

 

妊娠中にビタミンAを摂り過ぎると?

ビタミンAの必要性は前述のとおり。しかし重要だからとビタミンAを摂取し過ぎてしまうと、ママの身体と赤ちゃんに悪影響を及ぼすことがあります。

 

ビタミンA過剰摂取「ママへの影響」

ビタミンAの摂り過ぎは、妊娠中のママの体にどのような影響があるでしょうか。

 

《妊婦さんへの影響》

・肩こり

・頭痛

・吐き気や嘔吐

・脱毛

・筋力の低下

・光覚障害(光を感じてその強さを認識することができなくなる)

 

特に、頭痛の症状が強く出やすいと言われています。

 

ビタミンA過剰摂取「赤ちゃんへの影響」

ビタミンAを過剰摂取すると、赤ちゃんの奇形が起こりやすいと言われています。具体的には、以下の形態的異常が挙げられます。

 

《赤ちゃんへの影響》

・口蓋裂(こうがいれつ)

・顔面頭部の異常

 

逆にビタミンAが不足すると?

ビタミンAが不足すると、乳幼児では角膜乾燥から失明になる危険性があり、成人では夜盲症になるとされています。細胞分裂にも影響があり、成長阻害や皮膚の乾燥・肥厚・角質化、免疫機能の低下、粘膜や皮膚が乾燥すると感染症にかかりやすくなります。

しかし、ビタミンAとは肝臓に貯蔵されています。ビタミンAの摂取量が減っても、すぐに欠乏症の症状が現れるわけではありません。

 

ビタミンAは普段の食生活で十分

昔の食生活では植物性食品が中心だったため、ビタミンAは不足しがちでした。しかし食生活が欧米化し、現在では動物性食品を多く摂取しています。そのため普段の食生活でビタミンAが不足することは、ほとんどないでしょう。

ビタミンAは脂溶性ビタミンで、体に貯蔵されます。サプリメントでの過剰摂取には注意しなくてはなりません。サプリメントを取り入れる場合は、かかりつけの産科医に相談することをおすすめします。

 

 

【妊娠中のビタミンA】摂取量はどれくらいまで?

では妊娠中における、ビタミンAの適切な摂取量を紹介します。

 

ビタミンAの摂取量《成人女性》

成人は4ヶ月の間、食事からしかビタミンAを摂取しなくても、ビタミンA欠乏症になることはないとされています。20μgRAE/日を下回らなければ、欠乏症状が出ることはありません。肝臓に貯蔵されているビタミンAの量は、減ることがないからです。

ビタミンAは胎盤を通して、ママの体から赤ちゃんへと移行されます。適度なビタミンAの摂取は、赤ちゃんの成長・発育に重要です。成人女性に必要なビタミンAは、600~700μgRAE/日と言われています。

 

ビタミンAの摂取量《妊娠初期・中期》

ビタミンAは体内で合成できません。赤ちゃんの成長と発育には必要な栄養素なので、適切な量を摂取する必要があります。妊娠初期は、赤ちゃんの器官が作られるとても大切な時期。妊娠初期~中期には、成人女性への推奨量を摂取できていれば、追加する必要はないでしょう。

 

ビタミンAの摂取量《妊娠後期》

妊娠後期には、 80μgRAE/日を付加することが推奨されています。ママの体中に蓄えられたビタミンAが赤ちゃんに移行し、最後の3ヶ月でほとんどの量が蓄積されると考えられています。そのため妊娠後期は、妊娠中期までより少し多めに摂取するといいでしょう。

 

どれくらいが過剰摂取になるの?

プロビタミンAであるβ-カロテンの場合は、腎臓機能が低下した人が大量摂取して起こる代謝性アシドーシスを除き、過剰症は報告されていません。通常の食事で摂取する量では、危険性は低いと考えられています。

ただし、サプリメントの過剰摂取では健康被害が報告されています。必要量以上を摂りすぎないよう、注意が必要です。

 

 

妊婦は知っておこう!ビタミンAが多い食品

ビタミンAを多く含む食品には、どのようなものがあるでしょうか。ビタミンAは動物性食品に多く含まれますが、植物性食品でも含まれているものがあります。以下の食品には、ビタミンA以外の重要な栄養素も多いため、妊娠中は適度に取り入れましょう。相当食べ過ぎない限り、過剰摂取とはならないので心配いりません。

 

ビタミンAを多く含む動物性食品(レバー、うなぎ、バター他)

ビタミンAの多い食品1

動物性食品でビタミンAを特に多く含むのは、以下のような食品です。

 

・レバー

・肝油

・うなぎ

 

他には、以下の食品にも含まれています。

・バター

・チーズ

・卵黄

・ミルク

・魚

 

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ビタミンAを多く含む植物性食品(ほうれん草、にんじん他)

ビタミンAの多い食品2

ビタミンAは、緑黄色野菜に多く含まれており、具体的には以下の食品が挙げられます。

・ほうれん草

・小松菜

・にんじん

・みかん など

 

 

ビタミンA以外にも!妊娠中に気をつける食べ物

ビタミンA以外にも、妊娠中は気をつけたい成分や食べ物が多くあります。ここからは具体的にいくつか紹介します。

 

1. 生もの

生ハムやレアステーキ、ユッケなどの生肉には、トキソプラズマという害虫がいる可能性があります。妊娠中にトキソプラズマに感染した場合、胎盤を通して赤ちゃんへと移行し、赤ちゃんが先天性トキソプラズマ症にかかってしまうこともあります。

先天性トキソプラズマ感染症には、視力障害や脳内石灰化、水頭症、精神運動機能障害などの発症リスクがあります。

 

また生肉だけでなく、刺身やお寿司などの生魚にも注意しましょう。妊娠中は抵抗力が低下し、感染症にかかりやすくなっています。生の魚介類で食中毒を起こすこともあります。生ものは出産後の楽しみにして、妊娠中は十分加熱したものを摂取してください。

 

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2. 水銀の多い魚

魚は良質なタンパク質やEPAなど、必要な栄養素が多い食材ですが、水銀が多い魚介類には注意が必要です。普段の食事で摂取している水銀量は、健康に影響を与えない量で、過剰になったら体の外へ排出できています。しかし妊娠中に水銀量が多い魚を大量に摂取すると、赤ちゃんへ影響があると言われています。

キンメダイ、マグロ、メカジキなどは、週に1回80gまでであれば問題ありません。またツナ缶やサケ、サンマ、カツオ、タイ、ブリなどは特に制限なく、適量を摂取するのはいいでしょう。

 

3. ナチュラルチーズ

加熱されていないカマンベールチーズや、ブルーチーズなどのナチュラルチーズには、リステリア菌が含まれていることがあります。妊娠中はリステリア菌での感染を起こしやすく、感染すると流産や早産のリスクが高まるとされています。白カビや青カビ系のチーズは避け、クリームチーズやプロセスチーズにしましょう。

 

4. アルコール

妊娠中のアルコール摂取は、胎盤を通して赤ちゃんへ移行します。「胎児性アルコール症候群」となり、赤ちゃんの奇形や成長発達の遅延へ、影響が出る危険性があります。また流産のリスクが上がるので、妊娠がわかったらアルコールの摂取はやめましょう。

 

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《まとめ》

 

妊娠中は気をつけなければならない食品があり、初めての妊婦さんはわからないことも多いでしょう。ビタミンAに関しては、通常の食事で過剰摂取となる事はほぼありません。赤ちゃんの成長とママの健康のためにも、必要な栄養を適切に摂取できるように心がけましょう。

 

※写真提供:PIXTA

 

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1999年愛知医科大学卒業
その後大垣市民病院にて研修、勤務を経て安城更生病院へ赴任
2006年日本産婦人科学会産婦人科専門医取得
2008年やまだ産婦人科院長就任

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