PICK UP!
2022.10.24
妊娠初期の性行為(セックス)は大丈夫?【医師】リスクとNG行為
妊娠中の性行為(セックス)については、誰しも気になるものの、なかなか聞きづらいのが本音でしょう。「性行為で赤ちゃんに影響があったらどうしよう」と考えるかもしれません。ここでは妊娠中、特に妊娠初期の性行為について、理解を深めていきましょう。リスクとNG行為や注意点など、産科医が解説していきます。
目次
妊娠初期の性行為(セックス)はOK?赤ちゃんへの影響は?
妊娠初期の性行為を解説する前に、まずは妊娠初期の身体と心の変化を学んでいきましょう。
妊娠初期の身体の変化(基礎体温・つわり)
妊娠すると、女性の身体は目まぐるしく変化します。妊娠初期とは妊娠2ヶ月~4ヶ月を指し、妊娠による急速な身体の変化についていけず、つわりも出てきます。非常に敏感な時期と言えるでしょう。
妊娠2ヶ月はちょうど、妊娠検査薬で妊娠が判明する頃でしょう。産婦人科で正常な妊娠が確定するまでは、非常に不安な日々を過ごすかもしれません。妊娠を維持するためのホルモンが分泌し始めているため、基礎体温は高温期を維持します。
身体のだるさや、熱っぽさを感じる妊婦さんもいるでしょう。次第につわり症状が出てきて、中にはひどい吐き気をもよおし、嘔吐することもあります。
妊娠3ヶ月頃から、つわりはピークになります。食事内容が偏り、食べられるものが限られてきます。中には重症妊娠悪阻で入院する場合もあります。
妊娠4ヶ月頃からは、次第につわりが落ち着いてきます。胎盤の完成までにはもう少し時間がかかりますが、体調が安定する、いわゆる「安定期」に入っていきます。
関連ページ
✔妊娠初期によくある症状まとめ【医師・助産師監修】妊娠超初期の特徴
✔妊娠安定期とはいつから?何週目?【医師】赤ちゃんの状態&過ごし方
妊娠初期の心の変化
妊娠がわかったばかりの頃は胎動がなく、赤ちゃんが無事に育っているのか、妊婦さん自身が確かめるすべはありません。そんな時期につわりが始まると、心も不安定になりがちです。
これからどのように生活が変化し、自分の身体がどうなっていくのか不安になるでしょう。パートナーが近づくことにさえ拒否反応を起こし、性行為どころではなくなってしまう妊婦さんもいます。
妊娠すると、性行為の時に感じ方が変化する人がいます。妊娠中の性行為が気持ちよく感じる人がいる一方で、痛みが強くて精神的・身体的に大きな負担となるケースもあります。
性行為はお互いの愛情を確かめるもの、そしてひとつのコミュニケーションです。「したくない」「つらい」と感じるようであれば、我慢せずに伝えましょう。
妊娠初期の性行為(セックス)は大丈夫?胎児への影響
妊婦さんの身体と心の変化、そして赤ちゃんのことを考えて、産婦人科医療では「妊娠中の性行為は避ける方がよい」としています。
妊娠初期の流産の理由は染色体異常、遺伝子異常など、胎児側の理由がほとんどです。しかし性行為は少なからず子宮に刺激を与え、時に子宮収縮や出血を引き起こします。感染症を起こす場合もあり、流産や早産の原因になる可能性もあるため、注意しましょう。
また妊娠初期は、心も身体も不安定です。本格的につわりがひどくなると、思うように動けなくなってしまいます。
性行為をする気になれないのは仕方ないこと。母性本能として、無意識に赤ちゃんを守ろうという気持ちも働きます。無理にすると、精神的な負担も大きくなってしまうので、自分の気持ちを正直に話しましょう。ただ突っぱねるのではなく、「妊娠すると赤ちゃんを守ろうとして、どうしてもそのような気持ちになれない」と話すと、パートナーは理解してくれるでしょう。
妊娠中に性行為(セックス)を控えるべきケース
妊娠中の性行為は避けた方がいいとは言いますが、断じて禁止ではありません。しかし妊娠の経過に異常がある場合は、性行為を控える必要があります。以下にそのケースを紹介します。
・過去に流産や早産したことがある
・現在出血や子宮収縮・腹痛など切迫流産、切迫早産の兆候があり、安静を指示されている
・羊水が漏れている(破水)
・胎盤が子宮口付近にある(前置胎盤)
・子宮頸管無力症(子宮頸部の力が弱くなって早期に子宮口が開いてしまう)の診断を受けている、または診断を受けて手術をした後である
・多胎(双子、三つ子など)妊娠中である
これらの場合は、妊娠中の性行為は控えてください。流産や早産の原因となり、赤ちゃんに影響があることを忘れないようにしましょう。
関連ページ
✔妊娠初期は流産しやすい?【助産師監修】原因や注意すべき行動
おすすめ情報
妊娠初期の性行為(セックス)注意点&出血への対処
もし妊娠中に性行為をする場合、何に気を付けるべきでしょうか。また出血などの異常があった時、どうすればいいのでしょうか。
妊娠初期の性行為で注意すべきポイント
妊娠初期の性行為中、注意すべきポイントを紹介します。
■コンドームを必ず使用する
妊娠中の性行為では、必ずコンドームを使用しましょう。
妊娠中は抵抗力が落ち、細菌感染を引き起こすことがあります。また精液には子宮収縮を起こす物質が含まれているので、膣内射精が子宮収縮の原因にもなります。
コンドームを使用せずに性行為をすると、流産・早産につながることがあるので、赤ちゃんを守るために必ず対策しましょう。
■身体を清潔に保つ
感染予防のために、性行為の前後は必ずシャワーを浴びましょう。清潔ではない状態で膣内に指や性器を挿入するのは、自浄作用が低下している妊婦さんにはおすすめできません。
■体位に注意する
基本的には、妊婦さんがつらくない体位で行いましょう。おすすめの体位は、座位、横向き、後ろ向きです。お腹が苦しくなりにくく、より性行為が楽しめるかもしれません。
■お腹の張り・出血があれば中止する
前述したように、性行為は少なからず子宮に刺激を与えてしまいます。もし途中でお腹の張りや出血があれば、必ず中止してください。
妊娠初期の性行為で出血したら
性行為中、もしくはその後に出血があったら、以下の状況が考えられます。
■膣・外子宮口に傷がついた
妊娠中は血管が拡張し、出血しやすい状態です。少しの刺激でも傷ついてしまうので、注意が必要です。
■切迫流産
性行為自体が直接、流産を引き起こすことはありませんが、出血や子宮収縮、下腹部痛が現れたら注意が必要です。赤ちゃんの成長が緩やかだったり、もともと切迫兆候があると、性行為が流産の引き金となることがあります。
■どのように対処すればいい?
性行為はすぐに中止してください。少量ですぐに治まれば、様子をみてもかまいません。しかし出血が多くなる、止まる気配がない、下腹部痛・子宮収縮がある場合は、すぐにかかりつけの産科を受診しましょう。
関連ページ
✔妊娠初期の生理みたいな出血は大丈夫?【助産師】着床出血・流産の可能性
妊娠初期の性行為(セックス)でよくある質問
妊娠初期の性行為に関して、よくある質問をまとめました。
Q. 深く挿入してもいいの?
- 深く挿入したからといって、赤ちゃんにあたることはありません。しかし深い挿入は刺激が強く、子宮収縮や出血を引き起こす可能性があります。妊娠中の性行為は、優しく行うのが基本です。
Q. 妊娠中のオーラルセックスは可能?
- 女性が男性にするオーラルセックスは、基本的に問題ありません。しかし男性が女性にする、クンニリングスは行わないようにしましょう。アメリカでは、空気塞栓(血管に空気が入り込み血栓ができる)を起こした例が報告されています。
Q. 妊娠中のオーガズムは流産や早産の原因になる?
- オーガズムや乳頭刺激は、子宮収縮を引き起こすオキシトシンの分泌を促します。しかし妊娠経過が順調であれば、オーガズムによる子宮収縮が陣痛につながるものではありません。乳頭刺激に関しては、早産の原因となるので、控えておいた方がよいでしょう。
Q. 産後のセックスレス予防に妊娠中の性行為は必要?
- 妊娠中は、自分の気持ちに正直になりましょう。確かに性行為はコミュニケーションのひとつですが、妊娠初期は非常に不安定な時期です。あなたのことを大切に思ってくれるパートナーなら、わかってくれるでしょう。
《まとめ》
妊娠初期は心も身体も不安定なため、性行為はあまりおすすめできません。もし妊娠中にする時は、感染予防のためにしっかりとコンドームを使用してください。また子宮収縮や出血があった場合は、すぐに中止しましょう。気持ちが乗らない時は無理せずに、正直にパートナーに伝えましょう。
※写真提供:PIXTA
関連ページ
✔妊娠中のセックスはどこまでOK?【医師が解説】おすすめ体位とは
✔《アンケート調査》妊娠中の夫婦生活!セックスはアリ?スキンシップはどうしてる?
1999年愛知医科大学卒業
その後大垣市民病院にて研修、勤務を経て安城更生病院へ赴任
2006年日本産婦人科学会産婦人科専門医取得
2008年やまだ産婦人科院長就任
イベント・セミナー
妊娠・出産について学べるイベントやセミナーを紹介
-
オンライン(録画配信) 無料