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2022.10.17
高位破水とは【助産師】原因や放置するリスク・尿漏れとの見分け方
破水のなかでも「高位破水」は少量しか羊水が出ず、尿漏れやおりものと間違えてしまうことがあります。しかしもし破水を放置すれば、ママや赤ちゃんに悪影響を及ぼすもの。ここでは高位破水について、理解を深めていきましょう。高位破水に気づかずにそのまま放置するリスクや、高位破水した時の対処法について、助産師が解説します。
目次
「高位破水」とは?特徴と原因
破水とは赤ちゃんを包む卵膜が破れ、中の羊水が流れ出てしまうことを言います。破水する部位によって、「低位破水」(完全破水)と「高位破水」に分類されます。
【高位破水の特徴】少量で尿漏れと間違えやすい
高位破水の場合、羊水が大量に流出することはありません。量は少量で「ちょろちょろ」と尿漏れのような感覚で出ます。そのため尿漏れやおりものと間違えやすいのが特徴。ごく少量だと破水した事実に気づかないまま、放置してしまうケースもあります。
破水した直後は胎児に問題はなく、速やかな受診で対応が可能です。しかし放置してしまうと、感染症を引き起こす可能性があります。
【高位破水の原因】感染症のほか様々
赤ちゃんを包む膜は羊膜、絨毛膜、脱落膜からなり、卵膜と呼ばれます。この卵膜は、赤ちゃんを外部の細菌から守る役割を果たすもの。卵膜と羊水があることで、赤ちゃんはママのお腹の中で安全に過ごすことができます。しかし感染症などにより卵膜に炎症が起きると、その力が弱まり、何かのきっかけで破水を引き起こしてしまいます。
破水の原因は様々で、カンジダ・クラミジアなどの感染症、重い物を持った時の腹圧、喫煙・受動喫煙、高齢妊娠、多胎児などが挙げられます。
「高位破水」に気づかなかったら!放置するリスク
もしも破水に気づかずにそのまま放置してしまうと、赤ちゃんやママにどのような影響があるのでしょうか。
破水のリスク1. 子宮内感染
卵膜が破れると、最も考えられるリスクが細菌感染です。大腸菌やカンジダ菌が破れた膜から入り込み、子宮内感染を引き起こします。子宮内感染を起こすと、発熱や下腹部痛、膿性の分泌物などがでます。赤ちゃんにも感染し、場合によっては胎児機能不全に陥ることがあります。
破水のリスク2. 胎位異常
羊水があることで、赤ちゃんは自分で胎位を変えられます。妊娠後期になると、ある程度の位置は決まるものの、妊娠中期ごろはまだ赤ちゃんが自由にお腹の中を移動できます。
しかし破水によって羊水が減ると、骨盤位・足位・臀位などの胎位異常となることも。子宮内容量の減少で、正常の位置に戻れなくなってしまいます。
破水のリスク3. 流産・早産
高位破水するのは、妊娠後期だけではありません。妊娠初期や中期にも高位破水は起こるのです。もし破水を放置してそのまま動き回っていると、流産や早産につながる可能性があり、非常に危険です。
破水のリスク4. 常位胎盤早期剥離
赤ちゃんが産まれる前に胎盤が剥がれてしまうことを、「常位胎盤早期剥離」と言います。胎盤が剥がれると、赤ちゃんに栄養や酸素が届かなくなります。最悪の場合は死産、また母体も危険な状態にさらされてしまいます。大量の出血、鋭い腹痛などがあれば注意が必要です。
破水のリスク5. 羊水過少
高位破水によって羊水の量が減少すると、羊水過少となります。胎児が子宮内で動けずに、臍帯(へその緒)が圧迫されたり、臍帯が身体に絡まることもあります。非常に危険な状態に陥ります。
最悪の場合は胎児機能不全を引き起こし、仮死状態となって障害をもって生まれたり、死産となる可能性もあります。
おすすめ情報
【高位破水の見分け方】尿漏れ・破水の違い
高位破水は、尿漏れとの見分けが非常に難しいのが特徴です。しかし放置すると多くのリスクを抱えることになり、注意が必要です。「もし破水じゃなかったら恥ずかしい」と思わず、すぐにかかりつけの産科医を受診してください。赤ちゃんとママの命を守る行動をとりましょう。
高位破水の見分け方を紹介しますので、ぜひ参考にしてください。
高位破水の見分け方「羊水の色」
羊水の色は無色透明、出血が混じって入れば薄ピンクなど様々です。基本的にはいずれも透明感があります。しかしすでに破水して子宮内感染を起こしていると、羊水混濁といって赤ちゃんの胎便が羊水内に混ざって羊水が濁り、緑色や黄色に変化することがあります。
高位破水の見分け方「羊水の量」
完全破水の場合、「バシャッ」「ドバドバ」と羊水がたくさん出るため、基本的には破水したとわかります。高位破水では少量で、「ちょろちょろ出る感じ」「じわじわとしみ出す感じ」と表現されることもあります。
破れた膜が再生することはありません。一度破れると、少量ずつでもじわじわと羊水が流出してくるのも特徴です。1回だけで止まったり、自分の力で止められる場合は、尿漏れやおりものの可能性が高いです。
高位破水の見分け方「羊水の匂い」
羊水の匂いは基本的に無臭、もしくは甘酸っぱい匂い、塩分を含んだような独特な匂いです。尿のようなアンモニア臭はありません。
高位破水の見分け方「タイミング」
高位破水は動くたびにじわりじわりと出てきます。重い物を持ったときなど、お腹に力が入ると量が増えることがあります。
「高位破水」の予防&対処法
高位破水はどのように予防すればいいのでしょうか。もし高位破水が起きた時の対処法も、紹介していきます。
高位破水を予防する方法
高位破水は、日常生活での注意によって予防できます。
■妊娠中の性行為
安定期に入れば、無理のない範囲で性行為が可能です。妊娠中の性行為では特に、感染予防とお腹の圧迫の回避が大切です。感染症予防のためにはコンドームを使用し、お腹を圧迫する体位や激しい行為は避けましょう。行為中にお腹の張りがある場合は、すぐに中止してください。行為後も、お腹の張りや出血などの体の変化に注意を向けましょう。
■できるだけ腹圧をかけない
重いものを持ったり、上の子を抱っこすると腹圧をかけることにつながり、破水を招く原因になります。重いものは持たないようにし、上の子の抱っこは座ってするなど、腹圧をかけないようにしましょう。
■喫煙・受動喫煙に注意
タバコに含まれる有害物質は、前期破水を起こす確率を高めることがわかっています。妊婦さん自身がタバコを吸っていたらすぐにやめ、家族が吸っている場合も分煙・禁煙など協力してもらいましょう。
■性感染症に注意
カンジダなどの常在菌は、妊娠することで表面上に出て症状があらわれることがあります。またクラミジアは、出産時にも赤ちゃんに感染する可能性があるため、早期に治療しましょう。
高位破水の対処法
もし高位破水が起こったら、どう対処すればいいのでしょうか。正期産とそれ以前の時期に分けて、紹介していきます。
■正期産の場合
正期産の場合は、もう出産の準備に入ります。陣痛が来ていなければ、24時間以内に来る可能性が高いので、心の準備をしておきましょう。破水したら入浴はせず、すぐにかかりつけの産科医に連絡し受診しましょう。破水後は感染予防のために薬が投与され、分娩の準備をしていくことになります。
■正期産前の場合
正期産前に破水した場合は、赤ちゃんの生存と子宮収縮の程度を確認し、感染予防のために入院管理が必要になります。妊娠22週未満であれば妊娠継続が可能かどうか、非常に重い診断が下されるケースもあります。
すぐに病院へ連絡し、指示に従いましょう。家族に連絡して病院で合流するなど、できる限り早く病院へ行けるように手配しましょう。家族や信頼できる人が一緒に行けるときは、付き添ってもらいましょう。
《まとめ》
高位破水は尿漏れやおりものと勘違いしやすく、受診の判断を遅らせてしまう可能性があります。気づかずに放っておくと、取り返しのつかないことになる場合もあります。破水したかもと思ったらすぐにかかりつけ医に連絡し、指示を仰ぐようにしましょう。日常生活で高位破水しないように、注意を払うことも大切です。
※写真提供:PIXTA
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監修者
1955年に助産師独自の職能団体として社団法人として創立。
全国都道府県助産師会の会員にて組織されている。
2012年10月1日から公益法人制度改革により公益法人認定法に基づいて公益性を認定され、公益社団法人として新たにスタート。
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