エコー検査で「ダウン症」が疑われるのはいつ?妊娠7週目でわかる?

まずダウン症の赤ちゃんとはどのくらいの確率で生まれるか、その兆候はエコー検査でわかるものなのか解説します。
ダウン症の赤ちゃんが産まれる確率
ダウン症の赤ちゃんが産まれるかどうかは、卵子の劣化が影響するといわれています。女性の一生のうちにつくられる卵子は、胎児期からすでに形成されています。つまり、卵子も女性とともに年齢を重ねるというわけです。
年齢を重ねた卵子は、減数分裂がうまくいかずに分裂異常が起こります。減数分裂に失敗すると、染色体の数が増えたり減ったりして、染色体異常を起こします。
受精しても染色体異常があると、流産してしまうことがほとんど。ですがそのまま成長することで、染色体異常のダウン症が発生するのです。ダウン症の発生率は、およそ1,000人に1人(0.1%)です。
ママの年齢別に、ダウン症の赤ちゃんが産まれる確率を示します。
ママの年齢 |
ダウン症発症の確率(出生1,000対) |
20歳 |
1667分の1 |
25歳 |
1250分の1 |
30歳 |
952分の1 |
35歳 |
385分の1 |
40歳 |
106分の1 |
45歳 |
30分の1 |
47歳 |
18分の1 |
49歳 |
11分の1 |
※引用元:厚生労働省「女性の年齢と子どもの染色体異常の頻度」
この表より、ママが年齢を重ねればその分、ダウン症発症の確率が高くなることがわかります。そして45歳を過ぎると、その確率は劇的に上昇します。
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妊娠7週目のエコー検査でダウン症は判断できない
妊娠7週目のエコー検査では、ダウン症の赤ちゃんかどうか判断することはできません。ダウン症の疑いがある所見が現れるのは、早くても妊娠11週以降です。赤ちゃんのCRL(頭殿長・頭からお尻までの長さ)が45mmを超えることで、正確な観察ができるようになります。
エコー検査ではあくまでも、ダウン症の兆候や所見が疑われるのみです。確定診断に関しては、さらに詳しい検査が必要になります。
エコー写真で疑われる「ダウン症」の特徴6つ

妊娠11週以降のエコー検査で疑われる、ダウン症の特徴について紹介します。
以下のような所見が疑われたら、ダウン症のみならず、何かしらの染色体異常が考えられます。慎重に対応していく必要があります。
ダウン症の特徴1. 首の後ろのむくみ(Nuchal Translucency:NT)
染色体異常の兆候のひとつとして、首の後ろにある皮下組織に見られるむくみ(NT)の肥厚があります。
NTの測定は、妊娠11週以降13週6日までに行われ、一番幅が広いところを計測していきます。妊娠11週におけるNTの平均は0.1cm、妊娠14週における平均は0.15cmとなります。ダウン症をはじめとした染色体異常の場合、週数が進むほどこのNTの値が大きくなることがあります。
ただしNTの測定は、医師の熟練度や赤ちゃんの体勢などによって変わってきます。正確な測定は難しく、疑いというレベルにとどまります。
またNT肥厚があっても、必ずしも染色体異常があるわけではありません。検査で指摘された場合も無駄に慌てず、産科医の指示に従ってください。
ダウン症の特徴2. 手足が平均より短い
ダウン症をはじめたとした染色体異常では、手足が平均よりも短いことがしばしばあります。特にFLと呼ばれている大腿骨長が短いと、赤ちゃんの発育が遅い可能性があり、染色体異常や骨の病気を疑います。手足の長さが短い・奇形があると、ダウン症を含めた染色体異常を疑う十分な材料になり得ます。
ダウン症の特徴3. 頭が大きい
頭が平均よりもかなり大きい場合も、注意が必要です。頭の大きさは通常、BPD(頭の骨の横幅)とFOD(頭の骨の縦幅)で計測されます。
これらの値が妊娠初期から後期にかけて、異常に大きくなるようであればダウン症が疑われます。また、BPDよりもFODの方が短くなる傾向も指摘されています。
※エコー検査中に医師や技師から、頭の大きさが平均より多少大きめと言われただけで、過剰にダウン症を心配する妊婦さんがいます。正常の形状でやや大きいことはよくあり、全く心配ありません。
ダウン症の特徴4. 先天性心疾患の有無
ダウン症の場合、心疾患を抱えていることが多く、その数は半数にも及びます。そのため心臓の異常があると、ダウン症を疑う所見となります。
心臓の音やリズム、形に異常がないかどうか確認していきます。先天性心疾患は、ダウン症の有無に関わらず、赤ちゃんの命に直接関係するもの。胎児心臓エコー検査といわれる、詳細な検査が行われることもあります。
ダウン症の特徴5. 特徴的な顔貌
ダウン症の赤ちゃんは、顔貌が特徴的です。
顔は広く扁平で、吊り上がった目、低い鼻が特徴です。エコーでもその所見は特徴的なので、特に鼻の骨形成を観察していきます。鼻の骨が見られない、鼻の骨が薄い、鼻の骨の成長に遅れがあるなどがよく見られる所見です。CRLが45~84mmまで成長した段階で、鼻の骨が見られないという状況では、ダウン症の可能性が高くなります。
この他、耳介が小さい、口唇口蓋裂がみられることも、ダウン症を疑う判断材料になります。
ダウン症の特徴6. 臓器の障害
ダウン症の場合、臓器に様々な障害を残すことが多いです。先述した心疾患に加えて、以下のような障害が起こることがあります。
・肺の形成不全である肺低形成
・胸に水が溜まっている胎児胸水症
・食道がつながっていない病気である食道閉鎖
・十二指腸がつながっていない十二指腸閉鎖
・臍帯付着部分から臍帯内へ、脱出してヘルニアを生じる臍帯ヘルニア
赤ちゃんがダウン症?不安なら出生前診断を

エコー検査では「ダウン症を疑う所見の有無」を確認するだけで、正確な確定診断にはなりません。もしもダウン症の疑いがあり、確定診断を望む場合、どのような手順を踏むのでしょうか。
ダウン症の非確定診断・確定診断
染色体異常の検査には、スクリーニング検査である「非確定診断」と、疾患の有無を確実に判断できる「確定診断」があります。
非確定診断の精度は高いものの、あくまでも疾患の可能性が高いというスクリーニングの目的で行われます。母体血清マーカー検査・コンバインド検査・母体血胎児染色体検査(NIPT)があります。母体や胎児に負担が少なく、流産するリスクも低い検査です。
確定診断とは、確実に染色体異常の有無がわかるもので、羊水検査と絨毛検査があります。胎児や母体への負担があり、流産の可能性も少なからずあります。
出生前診断とは
これらの非確定診断・確定診断によって、胎児に先天的な異常もしくは染色体異常があるかどうかを調べることを、「出生前診断」といいます。胎児の健康状態を把握することで、出産の準備や治療など、将来の予測が立てられるようになります。
ダウン症を疑う所見が見つかったら!医師の告知について
日本産科婦人科学会のガイドラインでは、「妊婦健診の際に偶然、NT肥厚やその他のダウン症を疑う所見がエコーで確認された場合、その対応は施設ごとに対応や方針を立てる必要がある」となっています。
妊婦健診中に胎児の異常を指摘された場合、妊婦さんのショックは計り知れないでしょう。エコー検査は、広義の意味での出生前検査であることを、妊婦さんも施行する側も理解しておく必要があります。
注目を集めているNIPT(新型出生前診断)
もしエコー検査で疑わしい所見があったら、かかりつけの産科医からNIPT(新型出生前診断)を勧められることがあります。この時点ではあくまでも「疑い」の段階であり、かかりつけの産科医から「ダウン症です」とはっきりとは言えません。
より正確な検査を行うためにも、NIPTは有用です。NIPTはママの血液から胎児の染色体異常を調べる検査で、侵襲や流産の危険性がなく、非常に注目を集めています。
主にわかる染色体異常としては、「21トリソミー(ダウン症)」「18トリソミー」「13トリソミー」があります。胎児へのリスクなく、妊娠10週目から検査が可能で、検査の精度は99.9%にものぼります。検査結果は陽性または陰性で示され、検査から1週間程度で結果がわかるようになっています。
しかしNIPTはあくまでもスクリーニングで、非確定診断となります。確定診断としては、羊水検査をする必要があります。
■NIPTにおける遺伝カウンセリング
「かかりつけの産科医に勧められたから」「高齢だから」と、出生前診断を考える人もいるでしょう。しかし安易に受けると、その後もし想定していなかった場面に遭遇したとき、難しい判断を迫られ、さらなる悩みや苦しみにつながりかねません。
NIPTは非確定診断といえども、非常に高い精度で染色体異常の有無を判断します。エコーで異常を指摘されたら、その後の検査を受けるか非常に迷うかもしれません。
臨床遺伝専門医もしくは遺伝カウンセラーによる、遺伝カウンセリングがあります。これは正しい情報を理解し、その後の選択で後悔しないために非常に有益です。遺伝的疾患の知識を含め、様々な情報を提供してもらうことができます。そして今後どのような検査・治療を選択すべきか、もしくは選択しないのか、相談に乗ってもらいましょう。
もしダウン症と診断されたら
ダウン症という診断を受けた時、「産む」「産まない」という選択を迫られることになります。
日本では母体保護法により、出生前診断を受けての人工妊娠中絶が認められています。出生前診断が、中絶の判断材料になっているのは事実です。
出生前診断を実施している医療施設であっても、染色体異常があるとわかった後のサポート体制やカウンセリングなどが、十分でないケースもあります。妊婦さんやその家族に対するケアが、しっかりなされていない時もあります。
出生前診断は、胎児の染色体異常の有無を調べるだけではありません。妊婦さんと家族の「知る権利」を尊重して、その後の家族の在り方を考えるための検査です。出生前診断の普及と共に、遺伝カウンセリングや、染色体異常が見つかった際のサポート体制の充実を図ることが大切。妊婦さんと家族が正しい情報のもとで選択できるよう、支援してくれる産科医と出会えるといいですね。
《まとめ》
ダウン症の特徴がエコー検査で見られるのは、妊娠11週からです。エコー検査はあくまでも非確定診断です。NIPTなどのより正確な検査を希望する場合は、遺伝カウンセリングを受けるといいでしょう。そして検査結果の判明後のことまで想定し、正しい知識をもって受けるようにしましょう。
※写真提供:PIXTA
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1999年愛知医科大学卒業
その後大垣市民病院にて研修、勤務を経て安城更生病院へ赴任
2006年日本産婦人科学会産婦人科専門医取得
2008年やまだ産婦人科院長就任
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