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2021.09.17

【産科医監修】産後の肥立ちとは?いつまで?悪いときの症状と対処法

「産後の肥立ち」という言葉は、女性の産褥期を表す昔ながらの表現です。「産後の肥立ちが悪い」ということは産後、心身ともに回復できていないことを指しています。10ヶ月の妊娠期間を経て、出産という大イベントを終えた女性は、まずこの産褥期に身体を休める必要があります。今回は「産後の肥立ちが悪い」ときの症状や、肥立ちをよくするためにどんなことが必要なのか、産科医が解説します。 

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【産後の肥立ち】産褥期とは?いつまで?

産後の肥立ち

 

産後の肥立ちとは、妊娠・出産の影響から心身共に回復する期間として、およそ産後100日を指します。医学的には「産褥期」のことで、妊娠・出産によって起こった身体の変化を妊娠前の正常な状態に戻ろうとする時期のことをいいます。これは出産直後から産後6~8週間を指します。現在は産後1ヶ月健診のかかりつけの産科医の診察で、特に問題がなければ通常の生活に戻っていいとされています。

 

出産を終えたママは、分娩中の体力消費や会陰切開の痛みなど、思った以上に身体に負担がかかっています。特に帝王切開の場合は、普通分娩よりもダメージが大きく出血も多くなりやすいことから、この産後の肥立ちの時期にいかに身体を休めることができるか、ということが重要になってきます。

いかに早く、妊娠や分娩の時にかかった身体への負担を回復させるかが、今後の育児を行う上でカギとなってくるのです。

 

 

【産後の肥立ち】産後1ヶ月の体調の変化

妊娠・出産という大きな仕事を終えた後は、すぐに新生児のお世話や授乳が始まります。つまり身体を休める暇もないまま、慣れない育児を試行錯誤しながら行わなければいけませんので、とても疲れやすい状態です。

産褥期、特に産後1ヶ月は、急速に身体が元の状態に戻ろうとしますので、心身ともに変化が起こりやすい時期です。この産後1ヶ月で起こりやすい体調の変化は、以下の通りです。

 

・悪露(おろ)がでる

・後陣痛

・会陰切開、帝王切開の傷口が痛む

・骨盤が不安定になり、ぐらぐらする

・おっぱいが張る

・発熱(乳腺炎、産褥熱、傷口からの感染など)

・肩こり、腰痛、腱鞘炎などのトラブル

・むくみやすい

・マタニティブルー(産後うつ)になりやすい

 

初産婦なのか経産婦なのか、帝王切開か普通分娩か、分娩時の状態やママを取り巻く周囲の環境によっても、産後1ヶ月で起きやすい体調の変化は変わってきます。慣れない育児の中、自分の身体の変化についていくのはとても大変です。育児の合間にはとにかくしっかり身体を休めるようにしましょう。

 

 

産後の肥立ちが悪いときの症状と注意点

産後1ヶ月は、身体が元の状態に戻る時期であり、またホルモンバランスの急激な変化から心身ともに体調を崩しやすくなります。「産後の肥立ちが悪い」と表現しますが、そのトラブル例を具体的に紹介していきます。

 

産後の肥立ちが悪い1. 子宮復古不全

妊娠中大きくなった子宮は、産後4~6週間かけて妊娠前の元の状態に戻ろうとします。この状態を子宮復古と言います。子宮収縮が悪い場合、なかなか子宮が元の状態に戻ろうとせず「子宮復古不全」に陥ることがあります。

悪露は、出産直後は赤色をしていますが、その後に赤褐色、黄色、白色と変化し、次第に量も減っていきます。しかし、子宮復古不全になると赤色の悪露がだらだら続いたり、悪露の量が増えたりして貧血になってしまうことがあります。細菌感染を起こしてしまうと下腹部痛が出現したり、発熱する場合(産褥熱)もあり注意が必要です。

 

直接授乳は子宮収縮を促し、子宮復古を促進してくれるので積極的に授乳するといいでしょう。産後の1ヶ月健診で、かかりつけの産科医により子宮復古の状態を確認されます。もしもそれ以前に赤色悪露がだらだら続いていたり、下腹部痛があったりすれば、早めにかかりつけの産科医に相談するようにしましょう。

 

産後の肥立ちが悪い2. 膀胱炎

産後は授乳などでトイレに行くタイミングを逃したり、我慢したりすることがあります。また尿道口と膣口はすぐそばにあるので、悪露により細菌感染を起こすこともあり、膀胱炎や尿路感染を発症しやすくなります。

症状としては排尿痛や頻尿、尿が濁る、微熱が続くなどが挙げられます。もし排泄に関する異常を感じたら、かかりつけの産科医に相談するようにしてください。授乳中でも内服できる抗生剤がありますので、しっかり早めに治しましょう。

排尿痛があるからといって尿を我慢するのはよくありません。1日に2リットルは水分を摂り、しっかり細菌を排出しましょう。

 

産後の肥立ちが悪い3. 乳腺炎

出産後は授乳が始まりますが、特に初産婦さんは授乳が確立するのに時間がかかってしまうことがあります。赤ちゃんが上手におっぱいを吸ってくれない場合、そのまま放置してしまうとうっ滞性の乳腺炎を引き起こす可能性があります。また浅吸いによって乳頭亀裂ができた場合に、そこから細菌感染を起こして、細菌性乳腺炎を引き起こすこともあります。いずれも片方の乳房のしこりや腫れ、発赤、熱っぽさ、痛みなどがあります。

 

細菌性乳腺炎の方が、熱が高く出るのが特徴です。うっ滞性の乳腺炎の場合は赤ちゃんがしっかり吸ってくれるのが一番ですが、細菌性の場合は抗生剤がよく効きます。もしこのような症状が起こったら、産婦人科の母乳外来、もしくは助産院などに相談するとよいでしょう。

 

産後の肥立ちが悪い4. マタニティブルー(産後うつ)

産後は慣れない赤ちゃんのお世話に追われ、十分に休息をとれずにいると、疲労がたまってしまいがち。気分が鬱っぽくなり、特別な理由もないのに涙が出たり、無気力になったりします。

これらはマタニティブルーと言われ、産後の一過性の気分の変調です。疲労やストレスが蓄積するとこのマタニティブルーが長引いたり、産後うつを発症したりします。

 

周りの人に手伝ってもらったり、1ヶ月健診を過ぎて体調が良ければ、少しお出かけしてみたりして育児の合間に気分転換をしましょう。ベビーマッサージやベビーヨガなどは、産後のママと赤ちゃんが楽しくコミュニケーションが取れるためおすすめです。

 

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【産後うつ】原因&対策を医師が解説!放置しないで早めに治療を

 

 

産後の肥立ちをよくする3つの事

産後の肥立ちを良くする

 

前述したように、産褥期にいかに身体を休めるかが、産後の肥立ちをよくするポイントとなります。「産後の肥立ちがいい」というのは、心身ともに不調が見られないことを指します。

子宮の戻りもよく、産後に乳腺炎や膀胱炎などのトラブルが見られず、育児を積極的に行えているようなら産後の回復はよいといえるでしょう。産後の肥立ちをよくするためにしたいこと3つをご紹介します。

 

産後1ヶ月は身体をしっかり休める

上の子がいたり、里帰りをしないママは難しいかもしれませんが、手伝ってくれる人がいるならば産後1ヶ月は身体をしっかり休めましょう。適度に動くことはもちろん大切ですが、まずは赤ちゃんのお世話に慣れることと自分の体力の回復に努めることが重要です。

「産後の肥立ちをよくする」には、身体をしっかり休めることが一番です。身体を休め、疲労を回復させていくことで、育児にも前向きに取り組めるようになります。赤ちゃんと一緒にお昼寝するのもおすすめです。パパや家族にも理解してもらい、協力してもらいましょう。

 

産後はバランスのいい食事を心がける

産後のママは赤ちゃんの育児に追われ、なかなか食事をしっかりとることは難しいかもしれません。食品宅配サービスやデリバリー、作り置きなどをうまく利用して食事をとり、体力をつけましょう。

バランスのいい食事を心がけることは、ママの栄養にもつながりますし、母乳を作るためにも不可欠です。早く体重を戻そうとして、食事を抜くようなことは決してしないでください。

 

育児や家事を手伝ってくれる人やサポートを活用

育児に慣れてきた産後2~3ヶ月は、「もう大丈夫!」と自分で動きすぎたりする頃です。逆に疲れが出てくる時期でもあります。「一人でできる」と思わずに、余力を残して周りに甘えることが大切です。

 

周りに育児のサポートをしてくれる人はいますか?育児は一人でするものではありませんので、しっかりパパと協力して育児を楽しみましょう。実母や義母など、身内にも上手に甘えましょう。もし周囲にサポートをしてくれる人がいない場合は、行政や病院の産後ケア事業やファミリーサポートを活用しましょう。

妊娠期間中に、自分の住む地域にどんな事業があるのか調べておくといいですね。育児サポートに不安がある場合は、あらかじめかかりつけの産科医院に相談しておくと、退院後すぐからでもサービスを受けられます。

 

 

《まとめ》

 

産後の肥立ちとは、妊娠・出産による心身の疲労を回復させる期間のことで、およそ産後100日を指します。産後の肥立ちが悪くなると心身共に不調が現れ、日常生活や育児に支障が出てしまいます。産後の肥立ちをよくするためにはまずしっかりと休息をとり、周囲のサポートを得ながら楽しく育児が出来るようにしましょう。

 

※写真提供:PIXTA

 

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1999年愛知医科大学卒業
その後大垣市民病院にて研修、勤務を経て安城更生病院へ赴任
2006年日本産婦人科学会産婦人科専門医取得
2008年やまだ産婦人科院長就任

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