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2021.08.30
妊娠初期の「お腹の張り」原因&症状とは?注意すべきお腹の張り方
妊娠するとママの子宮は少しずつ大きくなり、血流が増えて、やがて赤ちゃんを迎える準備を始めます。そこで生じる身体的な変化により、お腹の張りを感じる妊婦さんは多いもの。ほとんどは妊娠によって起こる身体の生理現象ですが、中には痛みを伴う張り方や出血など、病的なものもあります。ここでは妊娠初期にお腹が張りやすい理由や、注意すべきお腹の張りの特徴・症状について、産科医が解説していきます。
目次
妊娠初期の「お腹の張り」原因とは?
妊娠したママの子宮は、赤ちゃんを育てる環境を整えようとします。子宮は筋肉でできており、基本的には緩んでいる状態。しかし何らかの理由で、筋肉が緊張し収縮してしまうことがあります。これを「お腹の張り」といい、医学的には「子宮収縮」と呼ばれます。(ゆくゆくはこの子宮収縮が陣痛となり、赤ちゃんを産む大事なチカラになります。)
妊娠することで身体の中でめまぐるしい変化が起こり、その変化を「お腹の張り」として感じる妊婦さんもいます。ここでは、妊娠初期にお腹の張りを感じやすい理由を紹介します。
お腹の張りの原因1. 子宮が大きくなる
妊娠初期はまだお腹が出ていないため、子宮はそれほど大きくないように見えますが、身体の中ではどんどん大きくなっています。妊娠していない時の子宮は、Lサイズの鶏卵ほどの大きさ。それが妊娠3ヶ月には大人の握りこぶしくらいになり、妊娠4ヶ月ではアンデスメロンの大きさくらいになります。
また子宮を支える筋肉が大きくなって伸びたり、子宮への血流が増加していきます。妊娠初期にこれらの変化が起きることで、お腹全体に違和感を覚えて「お腹が張っているような」感じがするのです。
お腹の張りの原因2. 靭帯が引き延ばされる
妊娠することで、子宮を支える靭帯が引き延ばされます。すると脚の付け根から引っ張られるような、鋭い突発的な痛みを感じることがあります。両側で痛みを感じたり、しばらく続いたりすることも。その痛みが妊娠初期に、「お腹の張り」という感覚を引き起こさせる可能性があります。
お腹の張りの原因3. 妊娠により皮膚が引き延ばされる
子宮が大きくなるにつれて、表面の皮膚も引き延ばされ、突っ張ったように感じます。妊娠初期に皮膚が伸びているような、ピリピリした痛みを感じることがあり、それを「お腹の張り」と表現する妊婦さんもいます。
お腹の張りの原因4. 便秘がちになる
妊娠することで、ホルモンのバランスが普段とは変わっていきます。特に、黄体ホルモンである「プロゲステロン」は腸の動きを弱くし、妊娠初期は便秘がちになってしまいます。
つわりなどで水分が摂れなかったり、食事が偏ることも、便秘を助長させる原因。便秘やガスがたまることで、「お腹の張り」を感じる妊婦さんがいるようです。つわりが治まったら積極的に水分や食物繊維を摂り、便秘解消に努めましょう。かかりつけ医に相談して、妊娠中でも内服できる便秘薬を処方してもらうのもいいでしょう。
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お腹の張りの原因6. 冷え性によるもの
冷え性の妊婦さんは、「お腹の張り」を感じることが多いです。身体が冷えると血管が収縮し、身体の血流が悪くなります。前述したように子宮は筋肉でできており、さらに子宮には多くの血管が通っています。血流が悪くなって、子宮収縮を引き起こすのです。
さらに冷え症は便秘につながることもあり、悪循環になります。特に夏場は、エアコンの風で冷えが引き起こされる可能性があり、冬より注意が必要です。
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お腹の張りの原因6. 疲労やストレスによるもの
仕事などによるストレスや疲労により、「お腹の張り」を感じる場合も。無理な労働による疲労や過度のストレスは、切迫流産や早産などの原因となります。母性健康管理指導事項連絡カードを主治医に書いてもらうなどして、通勤緩和や勤務時間の短縮などの措置を講じ、決して無理をしないようにしましょう。
妊娠初期の「お腹の張り方」はどんな感じ?症状とは
妊娠初期に感じるお腹の張りは、生理的なものから、病的なものまで様々です。生理的なお腹の張りと病的なお腹の張り、それぞれ感じ方や症状を紹介します。
妊娠初期の【生理的な】お腹の張り方
妊娠初期の生理的なお腹の張りは、妊婦さんによって感じ方が変わります。妊娠していない時の子宮は鶏卵大くらいですが、妊娠2ヶ月~3ヶ月で大人のこぶしよりも大きくなってきます。
子宮に送られる血流も多くなり、さらには子宮を支える靭帯が引き延ばされて、赤ちゃんを育てる環境の準備が整ってきます。それらの変化を、違和感やお腹の張りとして感じてしまうのです。
軽い生理痛のような鈍痛を感じたり、引っ張られたり、突っ張ったりしたような感覚や、下腹部のチクチク感、ピリピリ感など、人によって感じるお腹の張り方はそれぞれです。妊娠初期にも関わらずお腹全体がポーンと出て、幼児体型のようになって「お腹の張り」と感じる妊婦さんもいるようです。
妊娠初期の【病的な】お腹の張り方
妊娠初期の異常なお腹の張り方は、明らかに生理的なお腹の張りとは違います。子宮のあたりがぎゅっと硬くなり、痛みや出血を伴うことが多いです。お腹が張って痛いと感じるようであれば、すぐに横になり、ゆっくりと身体を休めましょう。
横になってもお腹の張りが治まらないときは、かかりつけの産科医を受診しましょう。また出血がある場合は、必ず受診してください。
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妊娠初期で注意すべき!お腹の張り方
先述したように、妊娠初期のお腹の張りには病的なものもあります。
生理的なお腹の張り方と違うのは、「腹痛」と「出血」です。出血や痛みを伴うときは、速やかにかかりつけの産科医を受診しましょう。妊娠初期にこれらの症状がある場合は、切迫流産や子宮系疾患を視野に入れ、治療をしなければいけません。
妊娠初期【切迫流産】によるお腹の張り
切迫流産とは医学的に、「妊娠22週未満までの流産しうる状態」を指します。妊娠12週未満に起きる流産を「初期流産」、妊娠12週以降妊娠22週未満を「後期流産」と定義しています。この流産の初期症状に、痛みを伴うお腹の張りや出血が挙げられます。
出血は、子宮内の赤ちゃんを包む袋の外側に溜まるものがほとんど。それがちょろちょろ子宮外へ排泄されています。これがドバっと出ると、赤ちゃんの袋ごと出てきてしまい、流産となることがあります。
溜まった出血は排泄されなくても、3ヶ月ほどすると、自然に吸収されてなくなることがほとんどです。出血があっても赤ちゃんが元気であれば、過剰に心配する必要はありません。ただし必ず、かかりつけの医師に確認してもらうことが大事です。
しかしながら妊娠初期で赤ちゃんの心拍が確認されず、成長がみられなければ、流産となる可能性は高いでしょう。病的なお腹の張りであれば、痛みを伴うことが多いです。子宮のあたりがポッコリと浮き出て明らかに硬い、横になっても治まらない、痛みや出血を伴う場合は、すぐに病院を受診しましょう。
切迫流産の治療法は、基本的には安静にするほかありません。症状によって安静の程度が違いますので、かかりつけの産科医の指示に従ってください。
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妊娠初期【子宮系疾患】によるお腹の張り
「子宮筋腫」や「子宮内膜症」などの子宮系疾患を合併している場合も、お腹の張りを伴うことがあります。これらの子宮系疾患の症状があっても、妊娠を継続することは可能です。
子宮筋腫は大きさや個数によって変わりますが、妊娠により筋腫の位置が移動したり、感染を起こして痛みを伴うことがあります。出血がなければ特に心配いりませんが、生理痛のような痛みが続くときは、切迫流産と見分けることが必要です。早めに受診する方がいいでしょう。
《まとめ》
妊娠初期のお腹の張りは、妊娠による生理的なものがほとんどです。しかし出血や痛みを伴うときは、切迫流産などの病的なものである可能性も否定できません。その場合は自己判断をせず、かかりつけの産科医を受診しましょう。
※写真提供:PIXTA
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1999年愛知医科大学卒業
その後大垣市民病院にて研修、勤務を経て安城更生病院へ赴任
2006年日本産婦人科学会産婦人科専門医取得
2008年やまだ産婦人科院長就任
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